第一話 魔法少女の条件
このTS魔法少女系は何度か登校したパターンですが、
自分が好きなんで……。
「あ、あの……俺、学校に遅刻しちゃうから」と、魔法少女から逃げる思いついた口実を口にする。
しかし、「そうか」と俺を抱えたまま屋根の上に飛び乗ると、学校まで一直線に屋根から屋根へと翔ぶように駆ける。
「舌を噛むから、喋るな」と言われるが、こんなに高く速く移動しているから、怖くて目も開けられず喋る余裕もない。
魔法少女は、「着いたわよ」と言って、俺を下ろした。
「何故君が……?」
戸惑うおじさんの声、その声を俺は知っている。
いつも朝礼で聞いているからって、つまり、ここは、校長室じゃねーか!!
「私は、希望と勇気を守る正義の使者、マジカル♡キュアドル!!」
決して広いとは言えない校長室で、クルクルと派手なターンを披露し、キュアドルポーズで決める魔法少女。
「いや、それは……知っている。私は、何故君がここにいるのかということを聞いている。それに、その子は……うちの生徒かな?」
「はい。この子は、魔法少女になる資質があります。是非、ここにサインをお願いします」
魔法少女の説明によると、マジカル♡キュアドルになるためには、親と学校の許可が必用らしい。
ちなみに本人の意思は関係ない。
騒ぎを聞きつけた教頭は不敵な笑みを浮かべて「校長、ここはサインすべきですよ。我が校から魔法少女が出たとなれば、日々の教育の成果が認められ、我々の評価もうなぎのぼりですぞ」
おい、聞こえているけど?
校長は少し悩んだ後、契約書にサインした。
契約書にサインをもらった魔法少女は、ご機嫌で「放課後に迎えに来るからな」と言って窓から出ていった。
♂ ⇒ ♀
魔法少女なんかに選ばれたとクラスメイトにどーやって説明すればいいか悩む。
下手に言えば調子に乗ってると言われるだけだし、言わなくてもいずれ近いうちにバレる。
一時間目の授業は始まっていて、後ろのドアからこっそりと入ったのだが、「おい! 魔法少女が来たぞ!!」と伸晃が声を上げた。
ざわつく教室。
先生も魔法少女の話に興味があるらしく、クラスメイトが騒いでいても放置状態だ。
「な、何で知ってるの?」
どうやら俺が魔法少女にお姫様抱っこをされて登校したところを誰かに見られていたらしい。
「ち、違うから。うちの親が魔法少女なんて許すはずがないから……」
「なんだよ……」と期待に満ちていたクラスメイトは、ため息混じりで俺から興味を失った。
♂ ⇒ ♀
魔法少女の一件は頭が痛いが、俺が女の子になって過去に飛ばされた原因も判明していない。
しかし、まずは現状の調査が必用だと思う。
女の子に産まれて今までの記憶がまるで無いため、魔法少女の存在なんて知るはずがない。
だって俺が男だった世界に魔法少女なんていないから。
しかし、今は授業中だ。
今出来ることと言えば、こっそりとスマホで魔法少女を検索ことぐらいだ。
なになに? 正式名称は、マジカル♡キュアドル。
世界各国で活躍する謎の魔法少女であり、日本では国で重要人物として国賓級の扱いを受けている。
主な活動は思春期の少年少女たちの希望と勇気を守ること。
その活動はライブや握手会などのエンターテイメントであり、犯罪者を取り締まることではない。
俺をお姫様抱っこしたのは、清純派のブルームーンという名の魔法少女らしい。
しかし、魔法少女になれる条件は、検索しても出てこなかった。