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マジカル♡キュアドル!!  作者: きっと小春
第ニ章 長阜県のビーストロード編
18/23

第七話 ブラックサキュバスだって!

「杏て、すごい人気があるね」

 転入してから一ヶ月が過ぎた。

 杏のまわりには、恋に恋する乙女たちが群がっている。

「はい。愛と勇気を司るマジカル♡キュアドルですから。ですが、恋は必ず成就するわけではありません」

「そうなの?」

「相手がいての恋ですから。相手にも好みや事情があったりします。それを捻じ曲げて付き合うように仕向けるのは洗脳です」

 誘惑と解放を司るブラックサキュバスにとって痛い言葉だ。

「じゃー、杏は何してるの?」

「愛とは何かを教えたり、告白できるように自分のアピールポイントを磨かせたり、勇気を出すように背中を押したりですね」

「ふーん……」

「取り敢えず、恥ずかしいので手を離してもらえませんか?」

「えー。女の子と触れ合っていたいの」

「可愛く言っても駄目です。それに私は……」

「杏が好きなんでしょ?」

「ちょ!? そ、それを何故!?」

「こう見えてもマジカル♡キュアドルでブラックサキュバスだよ。そのくらいわかるよ。それに愛ちゃんのこと襲う気になれば、とっくにブラックサキュバスの誘惑で落としてるから。私は女の子と触れ合えるなら誰でもいいの」

「んー。複雑な気持ですね……」


 ♂ ⇒ ♀


 男子とは距離を置き、女子からは冷たい目で見られる私。

 でも、隣の飯島 紗耶香さんとは仲良しだ。

「今度の土曜日県大会の予選なの」

 紗耶香さんは陸上部なのだ。

「俺も……だけど補欠なんだよな」

 後ろの席の長岡 大介が話に混じってくる。

 大介はあからさまに第二次性徴を迎えていない。

 だからなのか、性や恋に興味がまったくなく、そのため私のことを性的ないやらしい目で見ない。

 そんな大介だから、普通に話せる。

 でも私と話せる唯一無二の存在である大介は、男子たちから嫉妬されることが多い。

「中学生って大変なんだね」

「そうだよ、中学生になったら何の部活に入るつもりなの?」

「えー、なるべく目立たないよに、文化部かな?」

「そうかー。意外とユニフォームって露出度が高いからね」

「そんなの気にするなよ。逆にどうどうと水泳部でいいんじゃね?」

「大介、エッチ」

「エロ大介」

「な、何だよ……」


 ♂ ⇒ ♀


 と、全く役たたずのブラックサキュバスだけど、橘さんの作戦にちゃんと参加している。

「あの鬱陶しい先生いなければいいね」

「アイツ、駄目」

「二人共、そんなこと言わないの」

 愛ちゃんにたしなめられながら、職員室に入る。

「出席簿、閲覧したい」

「どうぞ、でも一応私の目の前で見てね」

 若い女の先生は、ピンキーレインボーの大ファンで、杏の言う事なら何でも聞いてくれた。

 各学年の出席簿を三人で手分けして調べる。

「やっぱり、この原田 翔って生徒があやしいですね。丁度、一週間休んでます」

「でも彼、今年殆ど学校来ていない」

 橘さんの提案で、学校を覆うようにマジカル♡バリアを一日中展開することになった。

 それもビーストロードから見つかりやすいように堂々と。

 つまりマジカル♡バリアで発見されまいと学校に来ない生徒がビーストロードの可能性が高い。

「明日からはマジカル♡バリアを展開させない予定なので、そのとき原田 翔が登校していたら……」

「間違いないですよね」


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