第六話 Hello world
「単独ライブの打ち合わせ、行ってくる」
「行ってきます」
「えっ!? 待って!! 愛ちゃんも行くの?」
「はい。杏の契約者なので……」
「わ、私の警護は?」
ジオンのフードコートでお茶会をしていたマジカル♡キュアドル&マジカル☆ウィッチの六人。
勿論、野次馬たちがフロアを埋め尽くす。
しかし、杏のマジカル♡バリアで一定範囲内には近づけない。
「うーん。花と可憐が二人で警備しているところにビーストロードが現れたら不味いわね。だったら私はいつでも契約者が呼び出せるから、私と花が警備に当たるとして。可憐、ちゃんと守ってね」
「は、はい。任せてください」
どうやら私の警護は、一時的に愛ちゃんから可憐さんに変わるらしい。
つんつんと愛ちゃんが私の腿を突っつき、小声で話しかけてきた。
(可憐さんには気をつけてくださいね)
(どうして?)
(可憐さんは、男子が苦手で、その分女子にグイグイと迫ってくるんです)
(えー……)
(だから決して弱気なところを見せないでくださいね)
(う、うん……)
集まってくれた野次馬達をないがしろには出来ない。
杏と二人で、ジオンの責任者に許可を取り、即席の握手会を開く。
三時間後、やっと開放された私は、可憐さんに守られながら長阜女子大の寮に帰った。
♂ ⇒ ♀
うっ、可憐さんが体をピッタリとくっつけて来る。
『嫌なの?』
3m以内なので、考えてることは筒抜けだ。
「い、嫌じゃないですけど……恥ずかしいかな」
『そう? 私は気にしないわ』
余計なことを考えないように、杏から借りた卒業ライブのDVDを観ることにした。
何度観てもグイグイとライブに引き込まれるし、毎回違った発見が有る。
『キスしたい、キスしたい、キスしたい、キスしたい、キスしたい、キスしたい、キスしたい、キスしたい、キスしたい、キスしたい、キスしたい、キスしたい、キスしたい、キスしたい、キスしたい、キスしたい、キスしたい、キスしたい、キスしたい、キスしたい、キスしたい、キスしたい』
「えぇぇぇぇ!?」
『お願い。ちょっとだけ。契約のキスが忘れられなくて……』
「だ、駄目ですよ。もう、それって性的な関係じゃないですか!!」
『ごめんね』
可憐さんに押し倒された唇を奪われた。
感情的には駄目だと思っても、体は快感に酔いしれる。
そんな脳内の葛藤が筒抜けだから、可憐さんは行動がより大胆になる。
可憐さんの前で着替えるのが恥ずかしかったから制服のままだったけど、可憐さんは右手で私が逃げないようにしっかりと押さえながら、左手で制服を脱がしていく。
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《おっと、どうもっす。【なろう規制守るくん】です。ノクターンじゃあるまいし書ける訳がない。この先に起こった出来事は見事に隠蔽化させてもらうぜ!!》
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元DT男子だったのに、百合をマジ体験してしまいました。
「か、体が感じるのは当たり前です。心は本当に……」
涙目で訴える。
「別に嫌じゃなかった?」
駄目だ……。
心が読まれているから適当な言い訳なんて通用しない。
「この事を橘先輩には、言わないほうが良いよ。何か橘先輩に可愛がられてるけど、橘先輩に知られてた半殺しに合うと思うよ」
「お、脅しですか?」
「うーん、脅しっていうか真実」
「無理です」
「言う気? マジで死ぬよ?」
「ち、違います! 橘さんが私の記憶を探ったら、防ぎようが無いってことです」
「あっ……」
「じゃ、どうせ殺されるなら……」
♂ ⇒ ♀
だって元男だもん、男なんて気持ち悪いし、好きになれるはずがない。
百合に目覚めそうな私。
そう……それは必然である。
だから何度か自分から可憐さんを誘いそうになったけど、気力で耐えた。
でも、その葛藤は可憐さんに筒抜けで、「仕方ないな、私から誘ったことにしてあげるよ」と、結局……杏が帰ってくるまでの一週間、毎日のように触れ合ってしまいました。
可憐さんと入れ替わるように寮に来た愛ちゃんに泣きつく。
「愛ちゃん!!」
「ど、どーしたの!? ま、まさか……」
「行っちゃいけない世界に目覚めちゃった……」
「え……」
「ちなみに愛ちゃんのベッド、可憐さんがクンカクンカしてた……」
「嫌!! 恥ずかしい……」
実は私もクンカクンカしてしまって、生・愛ちゃんの香りを嗅ぎたくて、抱きついています……。
「と、取り敢えず、は、離してください」
「うん……」
ぐっ、愛ちゃん可愛い、杏も可愛い。
可憐さん、花さん、橘さん、お姉様過ぎる!!
あぁ、もう……私、駄目かも。




