第四話 今出来ること
橘さんは、中学生のマジカル☆ウィッチを呼び出していた。
「可憐と花には、ビーストロードを倒してもわうわ」
「えぇぇぇぇ!?」
「む、む、む……無理っすよ。橘先輩!!」
「あのね……私も後ニ、三年で魔法少女も卒業。その前に……私が見守って上げられるうちに経験させたいの」
「で、でも……」
「うん? 何? あなた達は、私がいなくなった後、自分たちでどうにか出来るの?」
「そ、それこそ、無理ですよ!!」
「で、でも……私達、契約してないんですよ……」
「馬鹿、花! それは先輩も一緒でしょ……」
「私は……契約してるわよ?」
「だ、誰とですか!?」
「孤高の先輩が……」
ドヤ顔の橘さんに引っ張られ、驚き顔の二人の目の前に立たされた。
「「ブ、ブラックサキュバス!?」」
「ふふーん。どう? 滅茶苦茶可愛いでしょ?」
二人は、私を覗き込むように、ゴクリと生唾を飲んだ。
「ほら、三人共。何しているの? 早く契約しなさい」
「「「えっ?」」」
「本当なら、誰にも触れさせてくないけど、三人共私の大事な……だから許すわ」
「でも、三人と契約したらブラックサキュバスでも、魔力がもたないんじゃ?」
「ふふ。大丈夫。歴代のマジカル♡キュアドルの中でも、ぶっちぎりの魔力を持っているから」
「花さん……い、いきますよ」
私は経験者で、花さんはファーストキス。
花さんは、目をしっかりと閉じて……少し震えていた。
花さんの手を握り、そっと唇を重ねた。
ぎゅっと花さんは手を握り返してくる。
花さんの唇をこじ開けるように、舌をねじ込む。
契約とは、キスでお互いの魔力を交換すること。
花さんの記憶や思考が、一気に脳内に流れ込んでくる。
そして、花さんが小5の自分に全てを委ねた意思まで伝わってきた。
「はい、そこまで!!」
嫉妬した感じの橘さんが、無理やり私達を引き離した。
花さんは、恥ずかしいのか両手で顔を覆っている。
「つ、次は、私だね。よ、よろしく……。ちなみに私も初めて」
花さんとのやり取りを見ていたからか、少し興奮気味の可憐さん。
「い、いきま……」
なんと、可憐さんから唇を奪ってきた。
な、なんか……体の魔力が吸い取られる感じが……。
可愛い……大好き……。
そんな可憐さんの声が聞こえる。
あ、ありがとう……。
嫌われなくて良かった……。
契約を終えた可憐さんは、手をグーパーしながら橘さんに尋ねた。
「力が漲ってる。これって契約の効果なんですか?」
「ふふふ。その通り。ざっと数倍は強くなってるわよ。少しは自信が出てきたかしら?」
「さて、愛は今まで通りマジカル♡キュアドルの警護をお願いするわ」
「は、はい」
「ビーストとビーストロードの事は私達に任せて、二人はマジカル♡キュアドルの役割を」
♂ ⇒ ♀
昨日のビースト事件の報告のため、臨時の朝礼があった。
教室へ戻りながら、今後の活動について考えていた。
マジカル♡キュアドルの役割と言われても、校内で変身すると怒られるんだよね。
「痴女、あまり目立たないで」
「はぁ? だ、誰が痴女?」
杏はビシッと私を指差す。
「男子を誘惑して、マジカル☆ウィッチを三人も手駒にしてる」
「杏! それは橘先輩が決めたことです!! 滅茶苦茶怒られますよ!?」
「それは駄目。今言ったこと取り消す」
流石の杏も橘さんの事は怖いらしい。
これ以上、杏に何を言っても無駄と思い忘れることにした。
「何をするんですか!!」
愛ちゃんが男子の腕を掴んだ。
「愛、腕へし折るべき」
「ちょ、ちょと!? 二人共突然どうしたの!?」
「この男子が、杏のお尻を触ろうとしたんです」
「待って。調べる必用があるかも」
愛ちゃんが男子を壁に押し付けている間に、ブラックサキュバスに変身する。
「うーん……。禍々しい感じはないから、ただの変態みたい」
「やっぱり腕、へし折るべき」
「ご、ごめんなさい……助けて……」
「取り敢えず、先生に突き出したほうが良いかも」
愛ちゃんの提案により男子を職員室で先生に引き渡した。
「ったく、どうせお前らが生徒を誘惑したんだろ?」
またこいつか……。
「いいえ。変身もしていないし、他の生徒と同じ制服です」
愛ちゃんがムキになる。
二人が言い争いを始めると、偶然なのか校内放送でビースト出現が知らされた。




