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マジカル♡キュアドル!!  作者: きっと小春
第ニ章 長阜県のビーストロード編
14/23

第三話 敗北

 愛ちゃんがビーストを退治しに向かって20分くらい経過した。

 しかし、愛ちゃんが帰って来ない。

「希望と勇気を守る正義の使者、マジカル♡キュアドル!!」

 別に巫山戯ているわけじゃない。

 変身すると必ず自動で口走るのだ。

「待つ。これはマジカル☆ウィッチの仕事」

「杏、でも……遅すぎるわ!」

 杏の制止を振り切り、校舎に向かって走った。

 いつでもマジカル♡シールドを展開できるように気持の準備をする。


 校舎の中に、愛ちゃんの姿を見けられなかった。

「何処?」

 校舎の二階から、異世界に包まれている体育館が見えた。

「あそこに、愛ちゃんが!!」

 渡り廊下を走り、体育館に近づく。

 すると中からビーストの唸り声が聞こえた。

 体育館の壁の下にある小窓から中の様子を伺う。

「えっ!? 愛ちゃん!!」

 複数のビーストが、愛ちゃんの四肢に噛みつき引き千切ろうと引っ張り合っていた。

 無意識に体育館の扉に手をかけ、「マジカル♡セクシー!!」とビースト達を誘惑する。

 これは前回ビーストを胸に押し付けたのが、危険極まりないと怒られたため、必死に考えたオリジナル技だ。

 つまりちょっとエッチな格好で誘惑するのだが……。

「駄目……逃げて……」

 よく見れば愛ちゃんの手足が、絶対に曲がってはいけない方向に曲がっている!?

 5匹のビーストがマジカル♡セクシーに釣られて、愛ちゃんを放り投げ……私に向かってくる!?

「マ、マジカル♡シールド!!」

 対戦車砲も弾き返すと言われている程強力なマジカル♡シールドは、先頭のビーストの突進を止めるが、残った四匹はマジカル♡シールドを避けて、こっちに向かってくる。

「ど、どうしよう!?」

 咄嗟に、橘さんの事を思い出し……召喚した。

「ギャイン!!!」

 いつものように一陣の風が吹き、目の前には真っ赤な魔女ローブを着た、大きな槍を持つ魔法少女が現れる。

 そして、ビーストたちが吹き飛ばされた。

「よく頑張ったわね。後は任せなさい」

 橘さんの強さは圧倒的だった。

 体育館の天井を埋め尽くす程……数万の槍が、一気に天井から降り注ぐ。

 一瞬にして5匹のビーストは消滅した。


「愛ちゃん!!」

 愛ちゃんは、ボロボロだった。

 数本の指は食い千切られ、体中の骨が粉砕されていた。

「マジカル☆ウィッチにも、マジカル♡リザレクションあるんですよね?」

 中々回復しない愛ちゃんの様子に業を煮やして、パジャマ姿の橘さんに食って掛かった。

「ない。だから契約者が必用。これ大事」

 杏が体育館の中に入って来た。

 そして、私達のことを無視して、愛ちゃんに口づけする。

 愛ちゃんも杏を求めるように濃密なキスで応える。

「えっ? 二人は……契約者?」

「そうね。それよりも、まだ戦いは終わってないわ」

 再びマジカル☆ウィッチに変身した橘さん。

「どういうことですか?」

「間違いない。近くにビーストロードがいる」

「マジカル☆ウィッチの力は、異世界でしか使えない。だから変身すると、異世界と半分つなげる。そして、ビーストを見つけると、ビーストごと異世界に連れ込む」

「えっと……」

「つまり、現実世界にいるビーストを探すために、貴方の協力が必用なの」

「は、はい。意味はわかりませんが、協力します!!」

「まず、マジカル♡バリアを展開して。それも最大範囲で。そうすればビーストロードがいれば、そこに違和感を感じるはず」

「はい!」

 橘さんの指示通り、最大パワーでマジカル♡バリアを展開する。

 何故か橘さんは、私の手をしっかりと握っていた。

「凄い……。学校全体を覆ってしまったの!?」

 残念ながら、ビーストロードは校外に逃げてしまったらしい。


 ♂ ⇒ ♀


「ごめんなさい……私の力が及ばないばかりに……皆に迷惑をかけて……橘さんまで呼んでしまって……」

「良いのよ。私だって愛と同じ頃は、先輩によく助けられてたわ」

 愛ちゃんの怪我を完全完治するため、杏の魔力は吸い尽くされてしまい、杏はベッドで愛ちゃんと添い寝している。

 何故添い寝? と思ったが、薄情に見える杏も、愛ちゃんの事が心配なんだと思うと、ほっこりする。

「ビーストロードがいるのなら、この案件はあなた達だけじゃ、手に負えないわね」

 そう言うと、可愛い熊さん柄のパジャマを着た橘さんは、スマホでアチラコチラに連絡を取り始めた。

 その口調は完全に怒っていた。

「だから、無理ってなんなのよ!! 今すぐに来なさい!! 来ないと殴り込みに行くわよ!!」


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