第十話 契約と副産物
唇を奪われ咄嗟に橘さんの体を突き飛ばすが、橘さんはびくともしなかった。
それどころか、唇をこじ開けるように橘さんの舌が侵入してくる。
男時代から……キスの経験なんてない私は、興奮と絶望と快楽に思考ついていけず……オーバーフローして……橘さんになさるがままだ。
プライバシーも性犯罪も関係ないとばかりに、体の秘部を勝手に触ってくる。
そして、最も反応がある場所を見付けては、そこを重点的に攻められた。
『どう? 感じてるでしょ? 隠しても無駄よ……』
『え……。頭の中に直接……橘さんの声が……』
「希望と勇気を守る正義の使者、マジカル♡キュアドル!!」
恐怖の余り、ブラックサキュバスに変身する。
「誘惑は、私の……司る領域。勝手に汚さないで」
『悪ふざけ……いいえ、貴方の魅力に負けたのが悔しくて……』
『キスも、あんなところ触られたのも、初めてだったんだから』
ブラックサキュバスを通すと本音が言えないため、念話で憤りをぶちまけた。
『ごめんなさい……。嘘を言っても、無駄よね。私の心がわかるでしょ?』
一目惚れ。
その感情に全てが集約されていた。
それは自分も……同じだった。
マジカル♡キュアドルの変身を解いて、念話について教えてもらう。
『念話は契約の副産物よ。3m以内に近づくと、念話で会話ができるの。3mだから普段は心の中を覗くことはないの。安心して』
『今更です。もう全部覗いたんでしょ?』
『……そうね。異世界転生者だったのね。噂では聞いていたけど、本当に実在するなんて』
『そこ? それは……そうですけど……。他言無用でお願いします』
♂ ⇒ ♀
一応、本日の出来事を教育係の風化さんに説明しておく。
「えっ!? 嘘でしょ!? 孤高のウイッチ、橘 玲香と契約したの!?」
電話越しだけど、風化さんの驚いた顔が目に浮かぶ。
風香さんの話しによれば、橘さんは、どんなマジカル♡キュアドルが契約を結ぼうとしても、話さえ聞いてくれないほどのマジカル♡キュアドル嫌いらしい。
「貴方には本当に驚かされてばかりね。でもこれで安心ね。橘さんは、トップクラスの実力者よ」
うん? 何か、自分が褒められているみたいで嬉しい。
「それと杏との合同作戦、大変よね。しばらく会えないけど、頑張ってね」
「えっ!?」
「うん? 長阜県での長期滞在の件よ? あれ? 杏から聞いてないの?」
「そ、そんなの聞いてません!!」




