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マジカル♡キュアドル!!  作者: きっと小春
第一章 魔法少女の誕生編
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第九話 マジカル☆ウィッチ?

 胸に押しつけたビーストの荒れ狂うような激しい怒りが消え始めたのか、猫のようにゴロゴロと喉を鳴らし始める。

「だ、駄目!! な、舐めないで!!」

 まるで親猫が子猫の毛づくろいをするかのように、優しくペロペロと舌で胸を舐めた。

 こんな悶える姿を生徒たちに見せられないと、マジカル♡バリアの透過率を低くして、生徒たちから何が行われるか見えなくする。

「ガルルルルルゥ!!!!!!」

 校舎の屋上からビーストの威嚇する声が聞こえた。

「えっ!? もう一体いるの!?」

 ビーストに胸を押しつけて魅了しているのが精一杯だ。

 もう一体をどうこう出来る余裕はない。

 屋上から飛び降りたビーストは、生徒目掛けて突進していく。

「駄目!! あ……間に合わない……」

 その時、胸に押しつけていた走り出す。

 ビーストがマジカル♡バリアを破り、もう一体のビーストの首筋に噛み付いた。

 再度、マジカル♡バリアをビースト二体と自分が内側に入るように展開する。

 激しくもみ合う二体のビースト。

 しかし、誘惑したビーストは野生? の力を失ってしまっているのか、劣勢になり始め……遂には首の骨を折られてしまった。

「ビ、ビースト!?」

 分かち合えると思ったビーストが目の前で殺され、ブラックサキュバスは膝をガクリと地面に落とした。

 ビーストはブラックサキュバスを敵と認識し、ゆっくりと近づいてくる。

「ボーッとしてたら死ぬわよ!?」

 一陣の風が吹くと、目の前には真っ赤な魔女ローブを着て、槍を手にした……魔法少女?

 いや魔女が立っていた。

「産まれたばかりのビーストが、マジカル☆ウィッチに勝てる道理はない」

 マジカル☆ウィッチは、自分がアレだけ苦戦していたビーストを軽々と一撃で葬った。

「怪我はない? 立てるかしら?」

「あ、はい……」

 差し出された手を取り立ち上がる。

 そして、周囲を見ると、いつの間にかマジカル♡バリアが消され、生徒たちの姿も見えない。

「生徒がいない……」

「ここはそっくりだけど、全く別の世界。ビーストと戦う時は、こっちの世界に転移させるの」

「転移……」

「そ、それより……。そ、その胸どうにかしなさいよ。精神攻撃耐性がある私を魅了するって、ど、どうなのよ……」

「ご、ごめんなさい。へ、変身を解きます」

 変身を解いた制服姿の私を見て、マジカル☆ウィッチさんは、目を見開いて驚く。

「ツ、ツルペタのガキンチョじゃない!? そ、そう言えば……TVに写っていたわね……」


 ♂ ⇒ ♀


 マジカル☆ウィッチさんが変身を解くと、元の世界に戻ってこれた。

 学校には政府関係者やら警察やらが押しかけているので、近くの公園に逃げ込む。

「私は、橘 玲香。高校一年よ」

「……です。助けてくれて……ありがとうございます」

「まったく、マジカル♡キュアドルでビーストと戦うなんて、危険にも程があるわ」

「ごめんなさい」

 ここから橘さんとビーストの戦いの歴史が語られた。

 橘さんの話しをヒントにビーストの事を整理すると、ビーストは元々人間である。

 人間をビースト化させないように頑張るのが、マジカル♡キュアドルでの役割。

 ビースト化してしまった人間を倒すのが、マジカル☆ウィッチの役割。

 つまりビースト化してしまった人間は、元に戻せない。

 また今回のような堂々と姿を現す魔獣型ビーストは珍しく、人間に紛れて悪さをするビーストが大半らしい。

「ということは、あのビーストは……うちの学校の生徒?」

「多分ね。でも、ビースト化してマジカル☆ウィッチに倒されたビーストの……つまり人間だった頃の痕跡は、何も残らない。誰も覚えていない。つまりいなかったと同じなの」

「でも、私は……誰かわかればきっと、覚えています。自信があります!」

「うん、魔法少女だからね。でも、政府関係者、警察、学校の先生、生徒……あそこにいる全てはビーストが現れたことだけは覚えているのだけれど、元々の人間については誰も知らないし、覚えていないはずよ。それが不幸中の幸いなのか、悲劇なのかわからないけど……ね」

「そんな……」

「悲しまないで。ブラックサキュバスになって一週間でしょ? ビースト化はもっと前から、その生徒を蝕んでいたのよ。貴方の力不足じゃないわ。それに全ての人を助けられると思わないで、ビースト化しそうな人間が1000人いたら1人助けられたら良い方だと思って……ほら、泣かないの」

 悔しくて、可哀想で、無力な自分が許せなくて、頭の中がゴチャゴチャになる。

 橘さんは、私が泣き止むまで、そっと隣で寄り添ってくれていた。

「私と、パートナー契約を結ばないか?」

 今回は別件の調査で偶然、学校の付近にいたらしい。

 普通はこんなに早くマジカル☆ウィッチは現場に来ることは出来ない。

 しかし、パートナー契約を結べば、マジカル♡キュアドルはいつでもマジカル☆ウィッチの橘さんを呼び出せる。

 橘さんは悪い人じゃないし、信用できる。

 立ち上がり、橘さんの目をしっかり見て答えた。

「はい、なります!」

 すると橘さんに、ぐっと体を引き寄せられ……キ、キスをされた!? 


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