プロローグ
「お前のことが、好きで好きでたまらないんだ!!」
サッカー部の部室で掃除をしている最中に、幼馴染の石垣 京介が、また馬鹿なことを言い出した。
汗だくで家に帰ってシャワーを浴びたいと、一心不乱に掃除していた俺は、京介を無視して掃除を続ける。
「なぁ、本気なんだ!!」
京介に肩を掴まれる。
「いい加減にしろ。俺は男で、お前も男だ。そして、俺は男に興味なんて無い」
「だから、お前が女になれよ!!」
「巫山戯んなよ、俺は早く家に…………ごっくん……。って、お前!! 何を飲ませた!? あ、あ……あれ……目が回る!?……ちょっ、これ、まじやばいって……」
♂ ⇒ ♀
「ふぁ〜……」
ベッドの温かい温もりで、俺は悪い夢を見ていた事を確信する。
そんな事より、母親が起こしに来るまでの残り少ない時間で二度寝することが重要だ。
俺は布団をかぶって……妙だな? 女の匂いがする。
梨々花の奴、また勝手に俺の布団で昼寝してたな……後で説教だ。
妹でも女に違いないと、少々興奮してしまう。
流石に妹をおかずにするのは気が引けたので、クラスで人気のある彩花を思い浮かべる。
そして、下着の中に手を突っ込もうとしたとき、自慢のシックスパックがプニッとしていることに気付く。
だが手はそんなことを気にせず、秘部にたどり着くが……。
「え、ない!? どういうこと!!」
触った秘部はツルンツルンで大事なアレが無かった。
声も低く男らしい声じゃなく、まるで子供の……女の子の声だった。
俺がしばらくフリーズしていると、「どうしたの!? お姉ちゃん?」と妹の梨々花が勝手に部屋に入ってきた。
お姉ちゃん?
部屋に備え付けのスタンドミラーへ猛ダッシュする。
そこに映し出されていたのは、小5,6ぐらいの小さな女の子だった。
しかも……驚くほど美少女だ。
「梨々花……。俺、女になちゃった」
梨々花は部屋を飛び出して、「おかあさ〜ん! お姉ちゃんがおかしくなっちゃった!!」と階段で叫ぶ。
♂ ⇒ ♀
「あー。これじゃない。アレも駄目。なんなんだよーっ!!」
どれもこれもが女の子っぽい服ばかりだ。
部屋中を服で埋め尽くす俺に、母親が「いい加減にしなさい!!」と怒る。
しかし、絶対にスカートなんてはくものか!
どうにか中性的なズボンに着替えて家を飛び出した。
時間割も5年1組のものだった。
性別が変わって過去に戻っただけなら……きっと上手くやれるはず。
通学路に小学生たちの姿はない。
もしかしたら、どんなに急いでも遅刻決定か?
「そこのキミ、ちょっと待ってくれないか?」
時間がないのに呼び止められるとは……。
でも俺じゃないかも知れない。
無視して先を急ぐことにした。
「待ちなさい!!」
左腕を掴まれ、まるで自分が紙で出来ているみたいに、フワッと体浮いた。
そして、自分がお姫様抱っこされてしまった驚きと、その視界に写った……魔法少女にまた驚く。