私は私のままで、あなたはあなたのままで
数年後
白を貴重とした明るい店内にはずらっと化粧品の小瓶が並び、バラの絵や蜂蜜、植物などそれぞれの絵が書いたラベルがついている。 店内で一番目を引くのは、天井から引かれた真っ白なカーテンで区切られたスペースの奥に見える床から天井まで一面にはられた、磨き上げられた大きな鏡。
ティファニーズ・ビューティーサロンでは、この数年で化粧品だけでなく、体に良いお茶やスイーツの品揃えが増えた。はちみつやフルーツの自然な甘みを活かしたスイーツは女性たちに評判で、お茶会での定番スイーツとなりつつある。
「……甘さ、もう少し足したいけどこれ以上は砂糖入れすぎよね。5番のドライフルーツをペースト状にして入れたケーキが一番理想に近い気がするわ」
私は新作お菓子の試作品をずらりと白いテーブルに並べ、片っ端から試食しながら唸っていた。
「好きにしたらいいけど、試食のお菓子食べ過ぎてドレスが入らないなんてことになっても知らないわよ」
血も涙もないことを言うティファニー様をジトっと横目で見ながら、クレアが入れてくれた温かい紅茶で口の中をリセットした。
磨き上げられた大きな鏡の横には、大胆なフリルが美しい純白のドレスがかかっている。
「なんで同じ食事してるのに、ティファニーは太らないのかしら」
「意識の差ね」
ティファニーは指先にパールの入ったマニキュアを塗りながら、ふーふーと息をかけて乾かしている。ティファニーは手は骨張っていて男性的だが、爪は縦長で綺麗な形をしているのだ。
「挙式後のパーティーのドレスをお揃いにしたいって言ったのグレイスじゃない。あっちはがっつりマーメイドラインなんだからお腹出てるとダサいわよ」
「そうなのよね……式はティファニーがタキシードだからいいけど、パーティーでは横に並ぶから絶対に比べられるわ。あーどうしてお揃いにしようなんて言ったの私!」
「グレイスお嬢様はティファニー様のドレス姿も大好きでいらっしゃいますからね」
クレアが紅茶のおかわりをポットから注ぎ、試食のお菓子を容赦なく下げていく。
名残惜しく見送るが、もうここまできたらやるしかない。挙式まではあと二週間を切っているのだ。
「大好きな人が一番素敵に見える姿ですもの。私も負けてられないわ」
ネイルが綺麗に塗れて満足げに爪を眺めていたティファニーと目が合い、ふふ、と二人で笑う。
私は私のままで、あなたはあなたのままで、幸せになる。
そう胸を張って言える日々が、ここにあった。




