【特別編】 兆し
ネタバレ注意
ある時、創の元に一通のメールが届く。
「なんだなんだ?俺は忙しいってのに誰がメールなんて送ってきたんだ?」
創は悪態をつきながらも送られてきたメールを確認する。
メールの差出人は神国アヴァロンに連ねる国家の一つであるアグネス王国の王子からのものだった。
アグネス王国は小国であり、農業などの第一次産業が発展している地域だ。
創はよくアグネス王国の食材を食べているため、彼らには感謝している。
そんなアグネス王国の王子からのメールならば、無視することはできない。
創はメールの内容を確認していると、手に持っていた通信端末を破壊してしまった。
何故なら、そこには奴隷の売買が密かに行われていると書かれていたためだ。
創は奴隷の売買が大っ嫌いであり、神国アヴァロンでは禁止されている行為だ。
そんな奴隷の売買を創に隠れて行っている不届き者がいるとならば、放っておくわけにはならない。
それに、メールには子供の奴隷もいるとも書かれており、創の地雷を見事に踏み抜いていた。
そうして、怒りでついつい通信端末を破壊してしまった創はそのことを気にすることはなく、そのままアグネス王国へ瞬間移動する。
アグネス王国にやって来た響はすぐに王城へ突撃し、メールを送ってきた王子と面会する。
創がこんなに早く現れるとは思ってもいなかった王子は少し驚いた表情を浮かべたが、すぐに切り替えて本題に移る。
王子の話によると、この王都で貴族たちによる奴隷の売買が行われているらしい。
創はその話を聞いた時、今すぐに神国アヴァロンにおける貴族制の廃止の法案を通そうかと考える。
しかし、そのような改革をすると自身にも仕事が回って来そうなので、創は貴族制の廃止の法案を通さないことにする。
それに、神国アヴァロンは連邦国家の関係上、所属する国々のことも考えなければならない。
それらのことを踏まえると、各国々である程度の自治権を認める方が丸く収まる。
創は国の運営は面倒だと思いながらも国民のことが大好きであるため、なんやかんや言って動いてはくれる。
創は王子から奴隷商がいると噂される場所の情報を聞き出すと、早速乗り込むことにした。
創は奴隷商がいるとされる屋敷の前にたどり着くと、ドアを蹴破って破壊する。
いきなりドアが破壊されたことで中にいた使用人たちは驚きを隠せない様子であったが、創の顔を見てさらに驚く。
神国アヴァロンの王がわざわざ屋敷に現れた。
その事実に使用人たちは状況が理解できずにあたふたしてしまう。
そんな使用人たちの様子を見ていた創は彼らが奴隷売買には加担していないことを見抜く。
まあ、彼は他者の心を読む能力があるので、それでも確認しているため、彼らが奴隷売買に加担していないのは確定である。
創は近くにいた使用人に声をかける。
「おい、この屋敷の主人はいるか?」
「は、はい!!執務室におられるかと思われます!!」
「それなら今すぐ呼んできてくれ。アヴァロン王が来ているという文言も忘れずにな?」
「は、はい!!今すぐ呼んで参ります!!」
使用人はそう返事すると、階段を登って行った。
他の使用人たちは創のことを見てソワソワした雰囲気であり、そんな彼らに声をかける。
「お前たちは仕事に戻っておいてくれ。俺の用事はお前たちに関係ないからな」
創が使用人たちに仕事に戻るように言うと、彼らは慌てた様子で自分たちの仕事へ戻る。
そうして、創が主人を呼びに行った使用人を待っていると、いきなりため息をつく。
何故かというと、使用人に創が来ていることを聞いた主人が慌てた様子で窓から飛び出して逃げてしまったためだ。
創はため息をついた後、瞬間移動をして窓から飛び出して空を飛んでいる主人の首根っこを掴む。
そして、創は主人を掴んだまま地面へ勢い良く降り、そのまま主人を地面へ叩きつける。
普通ならば、このような攻撃を喰らえば死ぬのだが、彼らは腐っても神だ。
この程度の攻撃で死ぬことはない。
だが、創の力が加わっているため、主人は既に瀕死の状態である。
そんな主人に対し、
「お前、奴隷売買をしてたみたいだな?それも子供を売り捌いてたと聞いたぞ?この罪の重さ、お前は理解してるんだよな?」
創はドスの効いた声で質問する。
そんな彼からの質問に対し、主人は恐怖で体が言うことを聞かなくなってしまったせいで答えられない。
創はそんなこと最初から理解しているので、勝手に話を進める。
「まずはお前の頭の中から取引相手の情報を全部引っ張り出す。その後はお前の想像通りだ。簡単に死ねると思うなよ?」
創はそう言うと、無理矢理主人の頭の中の記憶を引っ張り出し始める。
それは相手の精神と記憶を破壊してしまう弊害があり、魂までも摩耗させてしまう。
そのため、使用は禁止されているのだが、相手が外道であれば使うのもやぶさかではないだろう。
それに、神国アヴァロンにおいて創が絶対のルールであり、彼が法律だ。
なので、彼がいくら犯罪を犯したところで彼がそれを許可してしまえば、それは無罪となる。
神国アヴァロンではよく忘れられているが、この国は独裁国家なのだ。
そうして、主人から奴隷売買に加担した者たちの情報を全て引き出すと、精神干渉を行なって無理矢理主人を正気に戻す。
そして、彼を連れたまま各地を巡り、奴隷売買に加担した者たちを捕縛し、とある場所に集めたのだった。
そのようにして、創が奴隷売買に加担した全ての者たちを一箇所に集めると、
「創さん、いきなり呼び出してなんのようですか?」
そこに神父服と牧師服を組み合わせ、それを魔改造した戦闘服に身を包んだ男が現れる。
彼はフードを深く被っており、顔は仮面で見えない。
そんな彼は創と慣れ親しんだ仲らしく、軽いノリで声をかける。
この男に声をかけられた創は彼と話をする。
「よう、久しぶりだな。みんなは元気してる?」
「もう元気いっぱい過ぎて俺の方が大変なくらいですよ。そんな話はおいておいて、わざわざ俺を呼んで何をさせたいんですか。なんかいっぱい捕まってる人たちがいるし」
「こいつらは奴隷売買を働いた犯罪者たちだ。こいつらを死刑なんて生半可な罰じゃあ許されねぇ。だから、こいつらを好きに使って良いぞ。実験材料やら、餌やらで困ってるだろ?」
「まあ、それはありがたいですけど、そういう話は先に言っておいてくださいよ。こっちにも準備があるんですから」
男はそう言いながら携帯端末を使って誰かに連絡する。
すると、彼らの前に身長230センチメートルほどの牧師服に身を包んだ人物が現れる。
その者は創と男を見るなり会釈をすると、
「それでは、この方たちを連れていけば良いのですね?」
牧師はそう問いかけてくる。
その問いに対し、男は答える。
「ああ、連れて帰ってくれ。使用用途は後で考えるからとりあえず生きたままで頼むよ」
「ええ、分かりました。ちなみに、私にも実験材料を分けてもらえますよね?」
「それはもちろんだよ。わざわざこうして手伝ってもらってるからね」
そうして、男と牧師が話していると、
「それじゃあ、後のことは任せるからな」
創はそう言い残すと、現場から立ち去ってしまった。
男は自分勝手に動く創を見て大きなため息をつく。
そして、思い出したかのように牧師に話しかける。
「そうだ。近頃、ヘルムさんと一緒に任務に向かってもらう予定だから準備しておいて」
「それは構わないのですが、我々の任務とはどのようなものなのでしょうか?」
「それはね、ヴァルハラに潜入してもらうことだよ」
男は不思議そうな様子で自分へ視線を向けている牧師へ告げる。
学園都市ヴァルハラに潜入してもらうと。
その言葉を聞いた牧師は問い返す。
「なるほど、あの学園都市で何か問題が起こるということですね?」
「まだ、分からないけどね。念には念をということだよ。それに、あの場所で君たちに回収してもらいたいものもあるんだよ」
「分かりました。正式に決まり次第情報の提供をお願いしますね。それでは、私は彼らを連れて帰らなければならないので、この辺りで失礼します」
牧師はそう言うと、捕えられた者たちと共に影の中へと消えて行ってしまった。
そんな彼を見送った後、男は虚空を見つめながら呟く。
「さてさて、これで最低限の保証はできた。後は響くん次第だね」
そう呟いた男もまた虚空へと消えて行ってしまったのだった。
お久しぶりです。大猩猩和です。こちらは私がカクヨムで連載しているワルキューレ ✖️ レーラーの前日譚となります。アヴァロンの方で投稿した通りワルレラは他の作品と比べてアヴァロンとの繋がりがとても深い作品となっています。なので、アヴァロンが好きな方が読んだら、ああ!!あの設定がここで出てくるのか!!みたいなことがあったりするのでよかったら読んでみてください。




