ギリエニア共和国の崩壊まで二
そうして、黒と白の毛が混じる男性から王都の権力者たちへの言付けを承った国王親衛隊の隊長は命を取られることはなく見逃され、王都まで必死に帰ってきたのであった。
首都ギリアから帰還までの一連の流れを聞いたギリエニア共和国の権力者たちは隊長以外の外へ探索へ行った者たちは二度と王都へ帰ってくることはないと確信し、隊長からの話的に王都以外の都市は全滅していると判断した。
そして、首都ギリアから帰還までの一連の流れを話した隊長はその黒と白の毛が混じる男性から承った言付をこの場にいる者たちに語り始めた。
男『明日北門から1000キロメートルの位置で待つ。これがお前たちに与える最後のチャンスだ。勇気ある者よ。俺と一対一でギリエニア共和国の未来についての会合をしようじゃないか』
これが黒と白の毛が混じる男性から承った言付けであった。
隊長から男性から承った言付けを聞いた王都に残った権力者たちは視線をお互いに交わした。
誰が、この男性と会合するのかと。
この場にいる者たちは隊長からの情報を聞いたため、そんな明らかに自分たちよりも上位の存在である男性と一対一で会合するなど誰もしたくなかった。
何故なら、その男性との会合で選択を間違い、王都への侵攻を再び始め不要な失態を犯したときの責任を取りたくないからだ。
そして、この場にいる多くの権力者たちは勇敢ではなく、自分の保身に走ることを優先するような者たちしか残っていないため、国の命運がかかっている選択など行いたくない者たちばかりであった。
それだけではない。
もしも会合に参加している最中、この男性の気分が変わり、ギリエニア共和国を滅ぼす方向になった時、真っ先に殺されるのは会合の席にいる者だろう。
己の身が一番の権力者たちにとっての名誉ある死はただの死と同義であり、彼らは何としてでも生き残りたいともがき続けている。
ギリエニア共和国の国王は自らが会合の任を請け負うと名乗りを上げようとしたが、彼は重度の病に犯されており、会合をするようなことは出来ない状態であった。
そんな国王が病で会合が行えず、権力者たちが会合の任を押し付けあっていと、ある者が名乗りを上げた。
それはギリエニア共和国の第一王女であるナタリアであった。
彼女は押し付けあっていた会合の任を自らが受け持つと名乗りをあげた。
会合の任を押し付けあっていた権力者たちがこのままナタリアに会合の任を押し付ければ、問題は解決するのだが、権力者たちは彼女に任を押し付けて会合が成功してしまった時、自分たちの立場が危ないのではないかと余計なことを考え始めた。
そして、先ほどまでは仲が悪そうに会合の任を押し付けあっていた権力者たちはお互いに視線を交わしてアイコンタクトで話し合い、ナタリアに会合の任を押し付けることにした。
権力者たちは素直に会合の任をナタリアに押し付け、次の日、ナタリアは黒と白の毛が混じる男性と会合を行うために北門を出て、会合を行う地へ向かって歩いていった。
ナタリアが会合のために王都から北門を通って出ていったことを確認した権力者たちは王都の中で彼らしか知らない秘密の会合部屋に集まっていた。
秘密の会合部屋へ集まった権力者たちは、黒と白の毛が混じる男性とナタリアとの会合が成功した時のことについて話し合っていた。
そう、彼らは大人しくナタリアに会合の任を押し付けたのではなく、一度彼女に会合の任を押し付けておいて、彼女が会合を成功させた時の対処についての話し合いの時間を稼いでいたのだ。
彼らはナタリアが会合を失敗した場合は、この秘密の会合部屋でギリエニア共和国を滅ぼした男性がこの土地を去るまでの間、潜伏する予定であるが、ナタリアが会合を成功させた時の対処については全く考えていなかった。
そのため、権力者たちは自分の保身のためにナタリアが会合を成功させた時に彼女の手柄をどう自分たちの手柄に偽装するのかについて計画し始めていたのだった。
ギリエニア共和国の権力者たちは国のために行動をする者たちが大多数である。
そのおかげで、ギリエニア共和国はギリエニア王国時代を含めて長い年月、途絶えることなく発展し続けることができた。
しかし、ギリエニア共和国の国や民のために動いている権力者たちはキュロシアン要塞での戦いで放たれた光剣によってほぼ全滅してしまい、王都にいて生き残った者たちも周辺状況の確認のために遠征に行った時、命を落としてしまった。
そして、自らの保身に走るような権力者の多くも首都ギリアの壊滅と共に命を落としてしまったのだが、王都に運良くいた者たちは生き残ることに成功した。
そうして、自分の保身に走ることを優先する権力者たちはナタリアの手柄を奪う大まかな算段を付け、彼女の結果次第での動きまで細かく決め、彼らは万全の準備を行なった。
だが、この時の彼らはまだ知らない。
彼らが自らの保身に走ったことにより、黒と白の毛が混じる男性、如月 創の怒りを買ってしまい、ギリエニア共和国と共に自分たちも破滅してしまうことを。