ワカティナ防衛作戦(ヘルム視点)十
相手の心理を利用する完璧な作戦により、ミヤを騙すことに成功したヘルムはミヤの気持ちが変わる前にさっさと混沌に誘いし者たちの施設へ行こうと黒滅龍レイルアルマの方へ近づこうとした時、ヘルムは誰かに肩を掴まれた。
肩を掴まれたヘルムは自然と自分の肩を掴んでいる者の方へ視線を向けてみると、ヘルムの視線の先には自分の肩を掴んでいるアルベルトの姿があった。
自分の肩を掴んでいるのがアルベルトであることを知ったヘルムはミヤを味方につけてもこいつは意見を曲げる気はないのだなと思いながら、肩を掴まれていたら混沌に誘いし者たちの施設に行けないので、ヘルムはアルベルトの手を肩から離そうとした。
だが、ヘルムの肩を掴んでいるアルベルトはヘルムの肩から絶対に手を離さないようにと馬鹿みたいな力で掴んでいたため、ヘルムはアルベルトの手を引き剥がすことが出来なかった。
なので、ヘルムは無理矢理にでも自分の肩からアルベルトの手を引き剥がそうと思い、自分の肩を物凄い力で掴んでいるアルベルトの顔面に向けて渾身の力を込めた右ストレートを振り向きざまに放ったのだった。
ヘルムがアルベルトの顔面に向けて渾身の右ストレートを放つと、流石にヘルムの本気の右ストレートを顔面にモロに喰らうのはまずいと判断したアルベルトは致し方なくヘルムの肩から手を離し、彼との距離を取った。
アルベルトがヘルムの本気の右ストレートを躱したために彼の右ストレートは空を切ってしまったのだが、ヘルムの右ストレートの威力とスピードが凄まじかったせいで、彼の空を切った右ストレートは周りを吹き飛ばさんとするほどの風圧が発生した。
そんな風圧を発生させるほどの威力を持つ本気の右ストレートを目の当たりにしたアルベルトはこの右ストレートが顔面に直撃していた時は自分の頭は木っ端微塵に粉砕され、吹き飛んでいたのだろうなと思った。
そして、アルベルトは先ほどヘルムが自分に向けて放った本気の右ストレートは間違いなく彼が自分のことを倒すために今出せる力を全て乗せた本気の右ストレートであるのだと確信したのだった。
そんな風にアルベルトがヘルムの放った本気の右ストレートの分析を行なっていると、ヘルムが黒滅龍レイルアルマの方へ向いていた体をアルベルトの方へ向けてきた。
アルベルトの方へ体を向けたヘルムは完全に戦闘態勢に移行しており、自分の邪魔をする者を本気で戦闘不能にするまで攻撃を仕掛ける気であることが彼が周囲に放っている雰囲気から察することが出来た。
そのため、アルベルトはいつものように根気負けしてヘルムに自由行動をさせるのかと思いきや、今回のアルベルトはヘルムのワガママを通す気は全くなかったので、彼もヘルムと同じように戦闘態勢に入った。
ヘルムとアルベルト既には戦闘態勢に入っているのだが、フェアな戦いをするためにもお互いに使用する武器は拳のみとされており、その条件からヘルムもアルベルトもそれぞれ違う形で拳を構えていた。
ちなみに、ヘルムとアルベルト以外の第十七汎用騎士部隊のメンバーたちはヘルムが黒滅龍レイルアルマと一緒に混沌に誘いし者たちの施設に行こうが行かまいか、どちらでも良かったので、今回はどちらかに肩入れすることは行わないようだ。
そのため、カーサスなどの第十七汎用騎士部隊に所属している他のメンバーたちはヘルムとアルベルトの本気の喧嘩が終わるまでの間は彼らの邪魔をしないよう彼らの喧嘩が終わるまでの間はゆっくりと待つことにしたのだった。
そんなゆっくりとしている第十七汎用騎士部隊に所属しているメンバーたちは今から始まるであろうヘルムとアルベルトの喧嘩について、ディルグがどっちが喧嘩に勝つのか賭けた方が面白くないかと他の二人に声をかけた。
ディルグがヘルムとアルベルトの二人のうちどっちが勝つのかみんなで賭けようとカーサスたちのことを誘ってみると、カーサスはとても乗り気そうにしており、セントはとても面倒臭そうにしていた。
そして、ヘルムとアルベルトのどちらが勝つのか賭けてしまうと後々面倒なことが起きるのは目に見えていたので、セントは賭け事を提案してきたディルグに自分は面倒臭いからやらないと伝えた。
しかし、セントが賭け事を断るとディルグとカーサスがノリが悪いだのビビってんのかなど様々な煽り文句で賭け事をしないと言ったセントのことを煽り始めたのだった。
ディルグとカーサスからのだる絡みがあまりにもウザ過ぎたため、セントは嫌々ではあったが、ディルグの提案したヘルムとアルベルトのどちらが勝つのか賭けることにしたのだった。
そうして、ディルグたち(セントは除く)がヘルムとアルベルトのどっちが喧嘩に勝つのかとワイワイ騒いでいると、ヘルムとアルベルトが遂に拳を振り上げ、お互いに向けて猛スピードで接近した。
こうして、黒滅龍レイルアルマと一緒に混沌に誘いし者たちの施設に行きたいヘルムとヘルムの勝手な行動を無理矢理にでもやめさせたいアルベルトとの激しい殴り合いの喧嘩が始まってしまったのだった。