ワカティナ防衛作戦(ヘルム視点)九
へ「ここの護衛は隊長たちに任せるから、俺はレイルアルマと一緒に混沌に誘いし者たちの施設に拉致されているその白界龍ブレイカウスって言う龍を助けに行ってくるわ」
ヘルムはクレーターの中に入ってきたアルベルトたちに向けて、自分は黒滅龍レイルアルマと一緒に白界龍ブレイカウスの救出と混沌に誘いし者たちの施設の破壊を行なってくると言ったのだった。
ちなみに、アルベルトたちはヘルムと行っていた通信の魔術越しで黒滅龍レイルアルマの話は全て聞いていたので、いちいち説明しなくても話は通じている。
ヘルムがアルベルトたちに黒滅龍レイルアルマと一緒に白界龍ブレイカウスの救出と混沌に誘いし者たちの施設の破壊を行うことを伝えた時、この場で一番驚いていたのは間違いなく黒滅龍レイルアルマであった。
黒滅龍レイルアルマはヘルムが自分と一緒に白界龍ブレイカウスの救出と混沌に誘いし者たちの施設を破壊すると言った時、ヘルムが何を言っているのか理解することが出来なかった。
まあ、先ほどまで自分の大切な妹であるベルヘイムのことを人質に取られ、自由に発言する権利すらも許さなかった相手がいきなり自分の手伝いをしてくれると言われても到底信じられるわけがない。
そのため、黒滅龍レイルアルマは自分の手伝いをすると言って油断させ、その油断のうちに一斉攻撃を仕掛けて自分のことを仕留めようとしているのではないかと考え始めた。
そうして、黒滅龍レイルアルマがヘルムたちのことを警戒していると、
ア「いやいや、いきなり勝手なことを言われても困りますよ。私たちは隊長の指示なしに勝手に動くことは部隊の規律を乱す行為でありますし、貴方と言う強力な戦力がいなくなるのも困ります」
アルベルトが困惑気味にヘルムが今この戦場からいなくなるのは色々な意味で困るのに加え、勝手な行動は許したらいけないため、黒滅龍レイルアルマと一緒に混沌に誘いし者たちの施設へ行こうとしているヘルムのことを止めようとしていた。
へ「規律がとか言っているが、今は緊急時なんだから独断で動いても別に問題ないだろ。それに俺がいなくてもこの部隊の隊長であるアルベルトがいるから、そっちの面も問題ないはずだが?」
一方、ヘルムはこの異形の化け物たちの軍勢の量が多すぎて相手するのが面倒臭くて嫌になったのに加え、黒滅龍レイルアルマが言っていた混沌に誘いし者たちの施設が気になったため、何としてでも彼女に同行しようとしていた。
そうして、アルベルトが黒滅龍レイルアルマについて行こうとするヘルムのことをこの場に留まるように説得しようとしていたのだが、一向にヘルムが意思を変える様子はなかった。
なので、アルベルトは自分ではない違う誰かにヘルムのことを説得して貰う方向にシフトチェンジすることにした。
ア「ミヤ、貴女もヘルムにはこの戦場に残って貰った方が良いと思いますよね?」
アルベルトは最初に自分たち第十七汎用騎士部隊のオペレーターであるミヤにヘルムのことを説得して貰おうと思い、通信機越しで話しかけた。
ミ『は、はい......アルベルトさんの言う通りヘルムさんがこの場からいなくなるとーーー』
へ「なあ、ミヤ?俺はレイルアルマと一緒に混沌に誘いし者たちの施設に行った方が良いよな?」
ミヤがアルベルトの意見に賛同し、ヘルムが黒滅龍レイルアルマと一緒に混沌に誘いし者たちの施設へ行くのを止めようとした時、ヘルムがミヤに威圧の篭った声で彼女の話を遮ったのだった。
ヘルムに自分の話を遮られたミヤはヘルムのことを止めるためにももう一度同じことを言おうと思ったのだが、先ほどヘルムから威圧をかけられたことで萎縮してしまい、声を出すことは出来なかった。
そんなヘルムへの恐怖心から萎縮して固まってしまったミヤにヘルムは自分の意見を押し通すためにも彼女に追い打ちをかけるように言葉を続ける。
へ「このままレイルアルマが一人で混沌に誘いし者たちの施設へ行ったら、白界龍ブレイカウスを救出し、その後に施設を爆破してしまうだろうな。そうなったら、混沌に誘いし者たちはこの施設でどんな実験を行っていたか分からなくなってしまうぞ?それはこちらとしても大きな損失になるとは思わかんかね?」
ヘルムはミヤに追い打ちをかけるように自分が黒滅龍レイルアルマと一緒に混沌に誘いし者たちの施設に行くことへのメリットをベラベラと話し始めたのだった。
そんなヘルムから黒滅龍レイルアルマと一緒に混沌に誘いし者たちの施設に行くことへのメリットをペラペラとマシンガントークされているミヤは彼が言っていることが自分が思っているよりも正しいのではないかと思い始めた。
これはヘルムがミヤにマシンガントークをする際に自分が黒滅龍レイルアルマと一緒に行くことで発生するメリットを誇張し過ぎたり、嘘を言わないように慎重に言葉を選んで話すことで、ヘルムはミヤに自分の発言への警戒心を薄れさせることに成功した。
そして、ヘルムはわざとマシンガントークをすることで、話を聞いているミヤにゆっくりと情報を精査させる時間を与えないことで、ミヤの判断能力を鈍らせようとした。
そうして、ヘルムの策にまんまとハマってしまったミヤは
ミ「確かに、ヘルムさんが言うことにも一理ありますね......」
ヘルムの思惑通りに騙されてしまったのだった。