黒滅龍レイルアルマが親になったわけ四十五
黒滅龍レイルアルマは少し離れてしまったバルクレシスとフィンベルクに追いつくように螺旋階段のある空間の先にある通路に入ると、この通路にも螺旋階段のある空間と同じように灯りはなかった。
そして、この通路には螺旋階段のある空間に充満していた自然魔力よりも更に濃度の濃い自然魔力で満たされており、この通路に入った時は黒滅龍レイルアルマですら不快感から顔を顰めるほどであった。
この濃度の自然魔力であれば、中級神以下の生物たちはもちろん、上級神クラスの力を持つ生物の過半数ですら、この濃度の自然魔力が充満する空間に入れば一分も持たずに魔力中毒で死に至るだろう。
ちなみに、魔力中毒というものは体内に大量の魔力が過剰に侵入することで、己の体内で取り扱うことのできる魔力量を大幅に超えてしまい、体内で魔力の暴走が起こってしまう症状のことである。
基本的に魔力中毒を起こしたものは高熱が出たり、鼻血などの出血が起こる程度で済むのだが、体内に侵入する魔力が大量であった時、体内でその魔力が暴走してしまい、体がその魔力の暴走に耐えられなくなり、体が内側から弾け飛んで死んでしまうという事案もある。
この魔力中毒を逆手に取って、封印されている状態の創は自分の魔力を無限の権能で膨大にまで増幅し、その魔力を相手に注ぎ込むことで意図的に魔力中毒を起こし、相手の体を爆散させて殺すという戦法を取る。
だが、この魔力中毒は体内で魔力が暴走することから体に桁違いの負荷がかかるため、魔力中毒を起こされている側は感じたことのないほどの激痛を味わうことになる。
そのため、この意図的に相手に大量の魔力を注ぎ込んで魔力中毒を起こし、相手を爆散させる戦法はあまりにも道徳心に欠けているという理由で創はアイナたちから使用を禁じられている。
まあ、創は基本的に道徳心に欠ける行為はしない主義であるため問題はないのだが、彼が暴走したり、救いようのないクズが相手の場合はアイナたちから止められていても魔力中毒を意図的に起こして相手を爆散させている。
他にも王直属部隊には生物が弾け飛ぶ音に快感を覚えている頭のおかしいヤバい奴もいるので、その頭のおかしいヤバい奴が創から直々に伝授された意図的に魔力中毒を起こして相手を爆散させるという戦法をよく使用している。
しかし、その頭のおかしいヤバい奴と同じ部隊に所属している者たちから血や内臓が自分たちの方にまで飛び散ってきて迷惑だからやめろとキツく怒られてしまったため、一人の任務の時以外は使用していないようだ。
一応言っておくが、この頭のおかしいヤバい奴は歴とした王直属部隊の一員であるため、爆散させる相手は慎重に選んでおり、怒りに任せて相手を無闇矢鱈に爆散させている創よりも相手を爆散させた回数的には少ない。
このこと以外にも話したいことはたくさんあるのだが、今回はこの爆散魔は関係ないので、またの機会に話すとしよう。
この通路に満たされている自然魔力が体の中に侵入してくることを不快に感じながら黒滅龍レイルアルマは足早に歩いていると、先ほどまで遠くにあったバルクレシスとフィンベルクの背中が自分の近くにまで迫っていた。
やっと二人に追いついたと思った黒滅龍レイルアルマはこのまま適正距離を保ちながら歩こうと思い、先ほどまで早歩きをしていた黒滅龍レイルアルマは自分の前を歩く二人に合わせるように歩く速度を落としたのだった。
バルクレシスとフィンベルクに追いつき、歩く速度を落とした黒滅龍レイルアルマは余裕が生まれたため、今自分が通っている通路の壁や床、天井などに視線を向けた。
この通路には保存状態が悪く、様々な場所に亀裂や崩壊が起こっていた螺旋階段のある空間とは違い、壁や床、天井などをくまなく調べてみても亀裂どころか小さな傷すらも入っていない。
そのことから、黒滅龍レイルアルマたちが今通っている通路は先ほどまでいた螺旋階段のある空間よりも保存状態が良く、定期的に補修されているのだと黒滅龍レイルアルマは推測したのだった。
そして、壁や床、天井には接合部分が見当たらないことから黒滅龍レイルアルマはこの通路は一つの大きな岩を掘り抜いて作ったのではないかと推測を立てた。
そんな今通っている通路のことについての考察を黒滅龍レイルアルマがしていると、通路の遥か先に今まで見えなかった光が僅かにだが見えた。
黒滅龍レイルアルマが最初にこの光を見た時、ただの見間違いだと思い、ついに灯が恋しくなり過ぎて光が見える幻覚が見え始めたのかと自分に落胆していた。
しかし、通路の遥か先にある光はいつまで経っても無くなることはなく、黒滅龍レイルアルマは自分の目が捉えた光は本物ではないかとこの時から思い始めた。
そして、黒滅龍レイルアルマたちが通路を進むにつれて光は大きくなっていき、黒滅龍レイルアルマはこの光が溢れている場所が目的地である滅戒龍グラン・ガイウスがいる場所ではないかと考え始めた。
そうして、黒滅龍レイルアルマが光が通路へ漏れ出す場所の正体を考察している間に彼女たちは光が通路へ漏れ出す場所へとたどり着いたのだった。




