黒滅龍レイルアルマが親になったわけ三
思っていたよりも結界構築に時間をかけてしまった黒滅龍レイルアルマは慣れない結界構築に巨木抜きまで行ったため、疲れから睡魔に襲われてしまった。
黒滅龍レイルアルマはこのまま眠ってしまっても大丈夫かと心配になったのだが、寝不足でいる方が危険と感じた黒滅龍レイルアルマは睡魔に逆らうことなく眠ることにした。
そうして、眠ってしまった黒滅龍レイルアルマが次に目覚めた時は眠ってしまった時からまるまる二日後であった。
二日ぶりに目覚めた黒滅龍レイルアルマはストレッチをして怠け切った体を無理に起こすと、周りの様子を伺った。
周りの様子は二日前と変わらず、自分の周りに張っている結界の方も確認してみるが、引っかかった形跡もなく、黒滅龍レイルアルマが眠っている間は何も起こっていないことが分かった。
そのことに安心した黒滅龍レイルアルマは安堵のため息をつくと、今度は樹海の方にも異常がないか確認するために、不安であったが、樹海の見回りに行くことにした。
そうして、見回りに行くことにした黒滅龍レイルアルマはその大きな二対の翼を羽ばたかせ、一瞬で遥か上空へと飛びたった。
上空まで飛び上がった黒滅龍レイルアルマは下に広がる樹海の様子を飛びながら観察していると、黒滅龍レイルアルマは樹海のとある異変に気づいた。
それは最初に樹海に来た時は生物たちの鳴き声で溢れかえっていたのに、今の樹海はそんな生物たちの声が一切聞こえない静かにな空間へと変わってしまっていた。
普通ならば、一日前になると根源であるオリジンから溢れ出す膨大な生命エネルギーがこの樹海に満たされ、龍が生まれ落ちる森などでは生物たちがこの溢れ出す生命エネルギーを吸収して血気盛んになり、普段以上に森などは騒がしくなる。
なのに、今の森は虫一つの声どころか、今確認できている範囲内には生物の一匹すら、姿を見ることはなかった。
そのことに嫌な予感を覚えた黒滅龍レイルアルマはすぐに樹海全体の様子を確認するために魔力反応を探知しようと感覚を研ぎ澄ました。
だが、この樹海からは生物から放たれる魔力反応を探知することは出来なかった。
そのことから導き出される答えは樹海に住む生物が全て殺されてしまったか、何者かに恐れて逃げてしまった二つであった。
黒滅龍レイルアルマはこの二つの答えを導き出すと同時に今出せる最高速度で結界が展開されている場所まで引き返した。
黒滅龍レイルアルマは自分が目を離した隙に襲われているかもしれないと、急いで結界を展開している場所へ引き返したのだが、樹海からは全く生物の魔力反応がないことから分かるように結界を展開している場所には何の変化もなかった。
そのことに安心した黒滅龍レイルアルマは急いで帰ってきたこともあり、安心と疲れからその場にへたりこんでしまった。
その場にへたりこんでだ黒滅龍レイルアルマは疲れのせいで乱れる呼吸を何とか落ち着かせると、自分だけではこの樹海にいるのに不安を感じたため、姉である滅戒龍グラン・ガイウスに樹海の様子を伝えて、今すぐ来て貰うことにした。
そうして、滅戒龍グラン・ガイウスに応援要請を出そうと黒滅龍レイルアルマは通信の魔術と似ている龍種たちが使う連絡手段で滅戒龍グラン・ガイウスに連絡を入れたのだが、
レ(あれ?グラン・ガイウス姉さんに全く繋がらない........?)
いくら、黒滅龍レイルアルマが連絡を入れても姉である滅戒龍グラン・ガイウスが黒滅龍レイルアルマからの連絡に応える様子はなかった。
そのことにも不信感と危機感を覚えた黒滅龍レイルアルマは姉である滅戒龍グラン・ガイウスの元へ様子を見に行こうと思ったのだが、この場を今離れることも出来ない。
そうして、黒滅龍レイルアルマは滅戒龍グラン・ガイウスの様子を見に行くのか、この場に残り続けるのか迷ったのだが、
レ(まあ、グラン・ガイウス姉さんは私よりも強いので、どんな敵が相手でも苦戦をすることはあるかも知れませんが、負けることは絶対にないですし、心配するのであれば、今から生まれ落ちて来る妹のことを心配する方が賢明な判断ですかね)
悩みに悩んだ果て、黒滅龍レイルアルマは姉である滅戒龍グラン・ガイウスは自分よりも強いため、今から生まれ落ちてくる妹となる龍のことを守る方を優先することにした。
そうして、黒滅龍レイルアルマは姉である滅戒龍グラン・ガイウスの様子を見に行かずに結界の中で新しく生まれ落ちて来る妹となる龍を待ちながら樹海の様子を伺い続けたのだった。
だが、この時の黒滅龍レイルアルマは知らない。
自分が選んだ選択肢が正しかったことを。
もし、姉である滅戒龍グラン・ガイウスの様子を見にいっていたら、自分も姉である滅戒龍グラン・ガイウスと共に何者かの手によって、命を落としてしまったことを。
そして、自分が姉である滅戒龍グラン・ガイウスの代わりに新しく生まれ落ちて来る妹となる龍ベルヘイムの育ての親になることを。




