ワカティナ防衛作戦(アルベルト視点)十一
へ「ベルヘイム?俺に力を貸してくれるか?」
ヘルムは自分の肩にちょこんと乗っているベルヘイムに力を貸して貰えるか質問した。
ベ「うん!任せて!あの凄く遠くにいる龍を撃ち落とすだけの力だよね!」
ベルヘイムは元気よくそう言うと、ヘルムの右手の甲にある魔法陣から膨大な魔力が溢れ出した。
そして、魔法陣から溢れ出した魔力はヘルムの右手を通じて全身に巡り、彼の体にはベルヘイムの魔力が右手の魔法陣を中心に血液のように循環し始めた。
へ「相変わらず、ベルヘイムの力は凄まじいな。これだけの力があったら遥か上空になる竜も余裕で撃ち落とせそうだ」
ヘルムが肩に乗っているベルヘイムの方に視線を向けながら呟いた。
ベ「ふふ〜ん!私の力は凄いでしょ?別に褒めてくれても良いんだよ?」
ベルヘイムはヘルムの肩で可愛らしく胸を張りながらヘルムに自信満々に言った。
ヘ「まあ、本体の俺の方が強いからな?本体の俺よりも強くなってから威張ってくれ」
ヘルムは肩で自信満々に胸を張っているベルヘイムに威張るのは自分より強くなってからにしろと言われてしまった。
ただ褒めて欲しかっただけなのに、ヘルムにマウントを取られてしまったことが気に食わなかったベルヘイムはヘルムの頭をその可愛らしい手でバシバシ叩いた。
この二人のやり取りはとても愛らしく、アルベルトたちはまるで、心が浄化されていくように癒された。
そうして、ヘルムは肩に乗っているベルヘイムに顔をバシバシ叩かれた後、彼が使っている変形機構の剣を召喚した。
変形機構の剣を召喚したヘルムはその剣を大弓に変形させた。
変形機構の剣を大弓に変形させたヘルムはベルヘイムの魔力を用いて大弓用の大矢を作り出し、大弓につがえた。
ベルヘイムの魔力で作った大矢の見た目は赤黒い槍のようで、その色はベルヘイムの体と全く同じ色である。
ヘルムは赤黒く輝く大矢を引くと、あまりの魔力にヘルムの周りの空間が火花を散らしながら振動し始めた。
その振動はヘルムが弓を引けば引くほど強くなっていき、ヘルムを中心に大きな地震と言っても過言ではないほどの揺れへと変わって行き、ヘルムの握っている大弓からは暴風が吹き荒れた。
あまりの揺れと風の勢いにより、ヘルムの肩に乗っていたベルヘイムはヘルムの肩から落ちかけてしまい、なんとか落ちずに済んだベルヘイムは必死にヘルムの肩につがみついた。
アルベルトたちもあまりの揺れと暴風に動くことも出来ず、ただヘルムが遥か上空にいる龍を撃ち落とすことを願うことしか出来なかった。
そして、ベルヘイムの魔力で作られた大矢はあまりの魔力量と濃度により、周りの空間を侵食し始め、大矢の周りの空間は大矢の魔力により崩壊し始めた。
だが、ヘルムはそんな環境下の中でも周りの様子に一切動じず、遥か上空を飛んでいる龍大弓の照準を合わせ続けた。
最初は狙いが定まらずに大弓の矢先は弧を描くように揺れていたが、ヘルムの集中力が増していくごとに大弓の矢先のブレは自然と少なくなっていき、最終的には大弓はピタリと止まった。
その集中力は凄まじく、今のヘルムの世界には遥か上空を飛行している見えない龍の魔力しか映っていない。
ヘルムは更に集中していく。
自分の遥か上空を呑気に飛んでいる龍を撃ち落とすために。
そして、大弓がピタリと止まった瞬間、ヘルムの方から耳をつんざくような轟音が辺り一面に響き渡った。
アルベルトたちがヘルムの方に視線を向けると、ヘルムの構えている大弓から
大弓から放たれた大矢は周りの空間を切り裂き、まるで、流れ星のように綺麗な線を描き、標的に向かって光速を軽く超える速度で迫って行った。
そして、
ヘ「堕ちろ.......」
ヘルムがそう呟くと同時に遥か上空から何か巨大なものが目にも留まらぬ速さで落下してきた。
巨大な何かが地面に衝突した時、辺り一面に砂嵐と共に大きな振動と轟音が響き渡った。
あまりの振動にこの場にいる全員が立っていることも出来ずにその場に膝をついてしまった。
そして、アルベルトたちは物凄い勢いで吹き荒れる砂嵐を耐えていると、少しずつだが、視界が開けてきた。
巻き起こった砂煙が止み、アルベルトたちが目の前に広がる光景を見た時、衝撃が走った。
なんと、アルベルトたちの目の前には先ほどまで無かった超巨大なクレーターが出来ていたのだ。
その超巨大なクレーターのサイズは半径一キロメートルを軽く超えている。
アルベルトは突然にして出来た超巨大なクレーターの中を恐る恐る覗いてみると、クレーターの中心に何か動くものを見つけることが出来た。
アルベルトはその動く何かに警戒しながら目を細めて姿を確認してみると、その動く何かは全身が青白く輝く鱗に体が包まれており、背中には二対の大きな翼が生えている。
だが、その何かの背中に生えている二対の翼のうち前方の右の翼は中心に大きな穴が空いており、ボロボロである。
その何かの頭には立派な二本角が生えており、相手を射抜くような赤黒い目が顔の中心に一つだけついている。
足は全部で二対生えており、その何かは四つん這いのような体勢で立っており、その姿は空中で捉えられた姿とは違い、とてもスリムで美しい。
そのことから、空中で捉えられた時に太く見えてしまったのはこの何かの背中に生えている大きな翼のせいだったのだろうと容易に想像できる。
尻尾はまるで、ムチのように鋭くて長く、尻尾の先端には相手を突き刺すようなのか槍のように鋭く尖っている。
アルベルトはその姿を見た時、自然ととある単語が口から漏れてきた。
ア「あれは間違いなく龍ですね.........」




