ワカティナ防衛作戦(黄泉視点)三
悪「ああ、どうして俺たちはこんなに暇なんだ..........」
悪夢はとても暇そうに地面に何かの絵を描きながら皆に聞こえるような大きな声で言った。
他のメンバーたちも悪夢の呟きを肯定するかのようにため息を漏らした。
どうして、悪夢たちが暇であるかと言うと戦場に出てから早数時間も経過しているのに化け物たちは全く侵攻してきておらず、一度も戦闘がなかったからである。
何故、悪夢たちの元に化け物たちが攻めてきていないのかと言うと、それは創が原因である。
創が昼間に発生させたブラックホールが夜になっても消えておらず、そのため本来攻めて来る筈であった化け物たちは全てブラックホールに吸い込まれて消えてしまい、全滅してしまっている。
なので、悪夢たちはとても暇そうにしているのだ。
悪「暇だし、いっそのこと俺たちの方から敵陣に攻め込んだりしちゃう?」
黄泉はあまりにも暇すぎたため、今残っているメンバーに自分たち自ら敵陣に突っ込むことを提案した。
詩『そんな危険な行動は許しませんよ。私たちの目的にワカティナに侵攻する敵の殲滅もありますが、一番の目的はワカティナに取り残されている国民たちを守ることです。なので、敵陣に攻め込むなど危険な行動をして被害が出てしまった時、ワカティナの防衛に被害が出てしまう可能性が高いので敵陣に攻め込むのは禁止です』
悪夢があまりにも暇すぎたため、敵陣に突っ込むように提案した後、詩葉に通信でお説教が入った。
それも詩葉のお説教はいつものノリ的なものではなくガチのものであり、その様子から詩葉が悪夢たちに敵陣に突っ込むことを阻止しようとしていることが窺える。
そうして、詩葉からのお説教を受けた悪夢は
悪「今のはただの冗談だよ。だから、敵陣に突っ込むことなんてしないから安心してくれ」
先程の敵陣に攻め込むのは冗談だと怒っている詩葉に説明した。
ちなみに、悪夢の敵陣に攻め込む発言は普通に冗談ではなく本気であり、詩葉に止められなかった時は普通に残っているメンバーを引き連れて敵陣に突っ込んでいた。
なので、敵陣に攻め込む発言をした悪夢にお叱りを入れ、止めた詩葉はいい判断であったのだ。
詩『冗談であれば問題はありませんが、本当に敵陣に攻め込むなど馬鹿なことはしないで下さいね。もし、私の言うことを聞かずに敵陣に攻め込もうとすれば容赦なく隊長の奥様に報告しますから』
詩葉は冗談だと言う悪夢のことを疑いながら許したのだった。
だが、ただ許すだけでは少し不安であったので、詩葉は悪夢に彼の嫁に報告すると言う脅しをかけておいた。
どうして嫁に報告するなどと言う脅しをかけたのかと言うと、この脅しをかけておけば、悪夢は絶対に自分勝手な行動をしなくなるからである。
現にこの脅しはだいぶ悪夢に効いているらしく、詩葉からは見えていないが、悪夢はプルプル震えている。
悪「そ、それで、詩葉の方のレーダーには敵は映っていないのか?俺たちの探知では周りには敵の姿が確認できないんだが?」
悪夢は気分を変えるために詩葉に質問したのだった。
詩『はい、私の方でも確認はしているのですが、隊長たちの周りには全くと言っていいほど敵の姿は確認できませんね。隊長の位置から一番近い敵の反応でも数百キロメートル先ですし』
詩葉は悪夢に彼らの周りには敵がいないことに加え、一番近い敵も数百キロメートル先にいることも伝えた。
悪「そうか......一番近い敵でも数百キロも離れているのか.......これは大人しく交代の時間まで待つしかないのかな..........」
詩葉からの返答を聞いた悪夢はとても悲しそうな声で呟いた。
流石に敵と戦いたい悪夢でも数百キロメートルも離れているとなると行くのが面倒臭くなる。
そのため、悪夢は詩葉からの説教を受けても心に残っていた闘争心が完全に消えてしまった。
これは悪夢にだけ言えた話ではなく、この場に残っている活気盛んな王直属部隊のメンバーたちも流石に数百キロメートルと言う遥かに離れた場所にいる敵をわざわざ暇だと言う理由で倒しに行きたいとはならない。
なので、悪夢たちは敵との戦いを諦めたことにより、彼から溢れ出していた覇気は完全に消え去り、彼らの雰囲気は完全にお葬式ムードになってしまった。
この明らかにやる気がない空気は歌派にも伝わっており、
詩『レーダーに映らない敵が攻めてくる可能性もあるので、気はしっかり引き締めておいて下さいね。お昼にも創さんがレーダーに映らない地下を移動している敵に接敵しておりますし、隊長たちがその敵に接敵しないとは言い切れませんので』
詩葉は悪夢たちに創が昼間に出会ったもぐらのような化け物のようにレーダーに映らない敵もいるので、気はしっかり引き締めておくように言った。
悪夢たちは詩葉から注意されたことにより先ほどよりかは周りの様子に注意をしているが、当然そこまでのやる気などはない。
そうして、悪夢たちはダラダラしながら何事もなく入れ替わりの時間を迎えたのだった。




