ワカティナ防衛作戦(創視点)四十五
創(さて、ここからどうしようか...........)
創は号泣している如月ファミリーズ全員から抱き付かれ、身動きが取れない状態のまま状況を打開する方法を模索していた。
最初は普通に「記憶喪失はドッキリでした!」と創は言おうかと思ったが、この状況からそんなことを言ったら、ただでは済まないのは確定なので、違う方法にすることにした。
だが、違う方法と言ってもこれと言って良い案は思い付かず、創は頭を悩ませていた。
いつもなら、こんな嘘をついたとしてもアイナと言う嘘発見器にそれと同程度の精度を持つ嘘発見器であるレーナがいるため、こんな嘘は冗談程度で済む。
だが、今回は特に創の言うことを何でも信じてしまう心が純粋な子たちであったため、創の名演技も相まって全員が記憶喪失であることを信じてしまった。
そして、今回のメンバーは先ほど創とミスディルディアとの喧嘩を止めるだけなのに創のことを気絶させるようなパワー系軍団である。
ちなみに、リヴァイアサンとレヴィアタンはパワー系ではない。
そのため、記憶喪失がドッキリであったことが分かった瞬間、彼女たちに何をされるのか分からないため、創は慎重にことを進める必要があった。
そうして、創がこの状況を打開するための方法を必死に模索していると、
リ「ご主人様ぁぁ.......本当に私のこと忘れちゃったの.......?」
ショックのあまり敬語を忘れてしまったリヴァイアサンが号泣しながら必死に言葉を紡いで創に質問した。
その姿はとても弱々しく、しっかり者で頼りになるリヴァイアサンの姿は微塵もない。
創はそんなリヴァイアサンの姿を見て、心を痛めているとリヴァイアサンは更に言葉を紡いでいく。
リ「嘘なら嘘って言ってよ.......私、怒らないから.......お願いだから今すぐ嘘って言ってよ...........」
リヴァイアサンは創の胸の中で今にも消えそうな声で呟いた。
このリヴァイアサンからの言葉を聞いた創は今まで自分に不利益が被らないように立ち回ろうとした自分に酷く落胆した。
アイナならともなく、リヴァイアサンがここまで追い詰められているのにこのまま演技を続けることは最低な行為である。
だから、創は今にも消えてしまいそうな声ですすり泣いているリヴァイアサンに声をかけた。
創「ごめん.......リヴァイアサン.......ここまでみんなが信じるとは思ってもいなかったんだ..........だから、いつものノリのつもりだったんだ...........」
創はリヴァイアサンだけでなく、周りにいる如月ファミリーズ全員に聞こえる声で言った。
その声を聞いた如月ファミリーズのみんなは創の言葉が理解できずに固まっていたが、徐々に創の言葉を理解していくと同時に彼女たちの顔はだんだん明るくなっていった。
そして、創の胸に顔を押し付けていたリヴァイアサンは目から涙は溢れているが、満面の笑みを浮かべながら創に微笑みかけている。
その笑みは太陽よりも明るく、ひまわりよりも元気で、バラよりも美しく、創はリヴァイアサンの笑顔に魅了された。
アトランシアとレヴィアタンは既に泣き止んでおり、創とリヴァイアサンのことを優しく微笑みかけながら見ていた。
そうして、創とリヴァイアサンが無言でお互いのことを見つめ合い、良い雰囲気になって来たところ、
草「主様ぁぁ〜〜!!!!」 ゼ「ご主人様...........」
創とリヴァイアサンの間に流れる良いムードを破壊するかのように草薙剣とゼルクレイグが泣きながら創のことを押し倒し、そのまま二人は創の胸に自分の頭をすりすりし始めた。
リヴァイアサンは創との良いムードを破壊されたことを不服に思い、頬を膨らませていたが、すぐに二人の気持ちを汲み取り、リヴァイアサンは機嫌を治した。
創はリヴァイアサンの切り替えの速さに感心しながら、自分の胸の中で泣き喚く草薙剣と珍しく顔を涙でくしゃくしゃにしたゼルクレイグのことを慰めた。
創「あの〜二人とも俺に抱きつく力を抑えてもらえません?凄く痛いんですけど?」
創は力一杯自分にしがみついてくれる草薙剣とゼルクレイグに力を弱くするように伝えた。
しかし、号泣している二人には創の言葉が届くはずもなく、創の背骨と肋骨からミシミシミといういかにも骨からなってはいけない音がなり始めた。
創「ちょっ!?本当に痛いから!痛いから!力抜いて!」
創はあまりの痛みに大きな声で叫びながら、草薙剣とゼルクレイグを自分から引き剥がそうとした。
だが、二人が創に抱きついている力は尋常じゃないほど強いので、なかなか引き剥がすことが出来ない。
そうして、本格的に骨からいけない音が鳴り始めた時、リヴァイアサンとアトランシアが草薙剣とゼルクレイグのことを引き離してくれたので、創は背骨が折れずに済んだのだった。
ちなみに、肋骨の数本かは今の抱きしめで折れたようであった。




