パワハラ上司になる創
創たちは作戦会議を終え、王直属部隊のメンバーが待っている広場に戻ってきた。
そして、創は作戦会議の内容を簡潔にまとめ、王直属部隊のメンバーに伝えた。
創「と言うわけで、みんなには明日から遊撃部隊として化け物たちの軍勢と戦ってもらいまーす!はい、拍手〜!」
みんな「いぇ〜い!!」
創が拍手すると、王直属部隊のメンバーも歓声をあげながら、創にならって拍手した。
創「おい、ふざける場面じゃないだろ」
急に創が真顔になり、声のトーンまで下げて、歓声を上げている王直属部隊のメンバーたちにキレた。
みんな(いや、お前がやらせたんだろ...........)
王直属部隊のメンバーは全員が同じことを考えていたのだが、反論すると何されるのか分からないので、黙って下を向いていた。
創「おいおい、お前らノリが悪いな〜そこは『いや、お前がやらせたんだろ』って、ツッコミを入れるところだろ?これじゃあ、せっかく返しを用意してたのに無駄になったじゃねぇか」
創はノルが良い王直属部隊のメンバーたちが、どうしてツッコミを入れないのか不思議に思ってきた。
ア「もし、ツッコミを入れていたら、どう返しをする予定だったんですか...........?」
アルベルトは恐る恐る手を上げながら質問した。
創「それはもちろん『上司に口答えとは何だ!お前は今から作戦が終わるまで戦場行きだ!!』って返してたけど?」
みんな(ただのパワハラ上司じゃねぇか!)
王直属部隊のメンバーは心の中でツッコミを入れながら、心の底から創にツッコミを入れなくて良かったと安心した。
創「はい、君たち今心の中でツッコミを入れましたね?もしかして、僕が相手の心を読める能力があることを忘れたのかな?」
創がそう言った途端、王直属部隊のメンバーたちの表情が固まり、真っ青になった。
創は本当に相手の心を読むことが出来る能力を保持しており、その能力を良く使用している。
そのため、王直属部隊のメンバーたちは本当に心が見透かされたと思った。
しかし、実際は相手の心を読むことが出来る能力は封印が全て施されている時には使用することが出来ない。
そのため、創の今の発言はただのハッタリである。
だが、王直属部隊のメンバーたちはその事実を知らないので、創の今の発言がハッタリだと気付けるわけもなく、恐怖で体を震わせている。
創はそんな彼らを見て心の中で大笑いをしながら、用意していたあの台詞を言うことにした。
創「それじゃあ、おっほん....... 上司に口答えとは何だ!お前は今から作戦が終わるまで戦場行きだ!!」
創は迫真のパワハラ上司の物真似を披露した。
あまりの迫力に王直属部隊のメンバーたちはブルブル震えていた。
ちなみに、黄泉は創の迫真の演技に全く反応はしていなかったが、今から戦場に送られるのが憂鬱過ぎてため息を漏らしている。
創「まあ、茶番はここまでにしておいて、お前らには明日の早朝から二部隊に分かれて順番に敵陣へと遊撃に出てもらう。だから、今日はしっかり食べて、休息を取るようにしろよ。ちなみに、キャンプ地はこの広場を使用して良いそうだ。さっさとキャンプの準備をするぞ」
創が笑顔でそう言うと、恐怖で顔を染めていた王直属部隊のメンバーたちの顔が一気に明るくなるのが分かった。
そして、彼らは心の中でガッツポーズをしながら、意気揚々とキャンプ地の設置を始めた。
ゼルクレイグやリヴァイアサンたちも王直属部隊の手伝いをして忙しそうにしている。
黄泉やシンなどナンバーズたちも忙しそうに自分の部隊の兵士たちに指示を出しながら、問題を起こさないように色々と動いている。
そのためか、少し離れた場所から彼らの様子を見ている創の存在に誰も気づいてきないようであった。
創は忙しそうではあるが楽しそうでもある彼らを微笑ましく思いながら眺めた後、急に南へ向かって歩き出した。
キャンプ地の設置に勤しんでいる彼らは創がどこかに行ったことも気づかずに準備を続けていたが、その中で唯一ナターシャだけは創がいなくなったことに気付いた。
ナターシャは周りをキョロキョロして創を探した後、南へと歩いている創の後ろ姿が見えた。
創を見つけたナターシャはすぐに創を追いかけようと思ったのだが、ナターシャは自分の部隊の面倒を見ないといけないため、創を追いかけることが出来なかった。
ナターシャは創のことが心配だが、追いかけることも出来ないため、悩んでいると、草薙剣がナターシャの近くを通った。
ナターシャは自分の代わりに草薙剣を創に向かわせようと思い、声をかけた。
ナ「草薙さん、ちょっと良い?」
草「どうしたのナターシャ?」
草薙剣は振り返りながら、ナターシャに質問した。
ナ「創さんがあっちの方向に行ったんだけど、僕はみんなの面倒を見ないといけないからついて行く事が出来ないんだ。少し心配だから見に行ってきてくれる?」
草「うん、分かった。主様の様子を見にいけば良いんだね?」
ナ「うん、そうだよ。よろしく頼むね?」
ナターシャがそう言うと、草薙剣はナターシャが指差した方向に向かって小走りを始めた。
ナターシャは創の元へ向かう草薙剣を見送ると自分の仕事に戻ったのだった。




