真の古代遺跡
創たちは洞窟の中に広がる遺跡に入って調査を始めたのだった。
創「この遺跡の壁画は何を描いてるのか全く分からないな。幼稚園児にでも描かせたのか?」
創がこう言うのも仕方がなかった。
この遺跡の天井や壁、床という、ありとあらゆる場所に謎の壁画が描かれているのだが、その絵が抽象的かつ、規則性や統率性もなく、バラバラに描かれている。
猫のような生き物が狼のような生き物に襲われている絵が続いたと思ったら、いきなり鯨のような生き物が空を飛んでいる絵になるなど、描かれている壁画のストーリーがめちゃくちゃだ。
そして創は壁画の意味を理解しようと頭を悩ませていると、レーナが創にこう言った。
レーナ「多分ですが、ここに描かれている壁画には意味がないと思います。これは多分ですが、本物の壁画に気づかせないようにするためのダミーですね。こうやって、意味のない壁画を大量に描くことにより、侵入者に全ての壁画に意味があるように思わせているのでしょう。」
創「なるほど、ここに描かれている壁画は本当に大事な壁画に気づかせないようにするためのダミーということか。流石は、数々の古代遺跡の調査を行って来たエリートだな。レーナの指摘がなかったら俺はずっとこの壁画の意味に頭を悩ましているところだったよ。」
レーナ「いえ、創さんのことですから、直ぐにこの壁画に意味がないことに気付いていましたよ。それにしても、この遺跡は緩やかな坂道が一本で何もありませんね。」
創「まあ、変に入り組んでいるよりかはシンプルで良いだろう。まあ、何もないと逆に怖い気がするがな。」
レーナ「すみません、あそこに気になる壁画がありましたので、ちょっと見て来ます。」
レーナはそう言ってその気になる壁画に近づいていき、その壁画に釘付けになった。
そんなレーナを眺めていると、アンが近づいて来た。
アン「ねえねえ、創くん?この遺跡ってどれくらい前のものなんだようね?すっごく昔のものなのは分かってるけど、それって具体的にはどれくらいなの?」
創「うーん、壁の材質から見ると、最低でも初代アヴァロン王が神国アヴァロンの王として就任するよりは前だな。あまりにも昔すぎてこれ以上のことはわからないが。」
アン「壁の材質を見るだけで分かるなんて凄いね。」
創「まあ、俺は一応、創造神だからな。」
アン「創造神ってすごいね。それでこの遺跡はどの古代文明のものか分かるの?」
創「それは流石に分からないな。専門外だからな。ここは専門家のレーナに聞いたほうがいいぞ。」
アン「そうだね、レーナは古代文明の遺跡に詳しいんだっけ?ちょっと聞いてくるよ。」
アンはそう言って壁の壁画に張り付いているレーナのところに小走りで行った。
ちなみに、創たちの配列は、アン、レーナ、創が先頭で、戦闘ができない(いざとなったら出来るが)陽奈とアイナを守るように、リア、ノエル、ベルが配列されている。
そして最後尾に草薙剣、アトランシア、レヴィアタンがいる。
この配列を決める時、アイナは創の近くが良いと駄々をこねたが、何とか創に説得された。
最初は創と離れ離れになったことによって、不機嫌になっていたが、今になっては遺跡調査を全力で楽しんでいるようであった。
創は後ろで楽しそうにしているアイナの姿を見て安心した。
創(それにしても、さっきから歩いているが、全くトラップがないな。普通、こういう古代遺跡には嫌というほどトラップが仕掛けられているはずだ。それに道が一直線というのも怪しいな。一応、下に向かってどんどん進んでいるようだが、全く分かれ道があるように感じない。普通は入り組んだ道を作って侵入者を惑わせるんだがな。この遺跡はもしかして侵入者を拒んでいないのか?だったら、この遺跡を作った奴はどういった目的で作ったんだ?)
創はこの遺跡を作った目的が分からずに頭を悩ましながら進んでいると、行き止まりに出た。
アン「あれ?この遺跡はもう行き止まりなの?」
レーナ「この遺跡はここまでのようですね。もしかしたら、建設中に何かあって、遺跡の建設が中止になって放棄されたものかもしれません。仕方ないですが、引き返すのが良さそうですね。」
アン「あーあ、せっかくの古代文明の遺跡だったのに残念だったな。まあ、これ以上は進めないし仕方ないか...........。」
そうしてアンとレーナが諦めて帰ろうとした時、創は屈んで地面を叩き出した。
レーナ「創さん?一体何をしているんですか?」
創「いや、普通、こんなところで遺跡が終わってるのも不自然だなって思って、色々歩いている途中に調べたんだが、ようやく分かったんだ。この床は明らかに音の反響がおかしくてな、何か下に空洞があるように感じたんだ。それで調べてみたらこの床の下には大きな空間があったんだ。それで下の調査をするために、床を破壊しないといけないんだが、床を破壊するために、どれくらいの厚さなのか調べていたんだ。」
レーナ「それでは、この遺跡はここで終わりではなく、この下にまだ遺跡が続いているんですか?」
創「まだ確実には分からないが、多分そうだろうな。」
創はそう言いながら床をコンコン叩くのをやめた。
創が床を叩くのをやめると同時に、創の右腕に魔法陣が浮かび上がった。
そして創は勢いよく古代遺跡の地面を殴った。
そうすると、地面に穴が開き、中を覗いてみると、そこには遺跡のようなものが広がっていた。
創「やっぱり、この上の遺跡はダミーだったようだな。」
レーナ「そのようですね。この下に広がっている遺跡が本物のようですね。」
創「それじゃあ、この下に広がる遺跡の調査をしようか。」
創はそう言うと、創造の権能を使って遺跡の床まで続く階段を生み出した。
そして前衛の創たちは階段を降りて行ったのだった。




