第13話 アジト攻略六
アンはそこそこ有名な貴族の家の子だった。
ちなみに余談だが、神の世界の貴族はただの肩書なだけで、貴族であるからといって権力は持っているわけではない。
だが、貴族は己の司っているものがこの世界に必要不可欠なものであったり、そのものを司っている神の中でも位が高いものが多いため、必然的に権力を持つことになる。
だが、アンは自分の家が何を司っているのかは知らず、ただ神国アヴァロンの政府の中でもそこそこ良い位の地位にいたのは知っているので、なかなか良いものを司っているとアンは考えている。
そしてアンの家は四人家族で、父、母、アン、そして弟の四人だ。
アンの父と母は忙しく、なかなか家に帰ることはなかったので、弟と使用神と暮らしていた。
そのため、アンはほとんどの時間を弟と過ごしていた。
そしてある時、アンと弟が親戚の家に遊びに行っていた時の帰り、家が何者かによって襲われた。
アンと弟は親戚の家に遊びに行っていたため、何とか襲撃を免れたが、アンの父と母はその襲撃者によって殺されてしまった。
その時、アンは乗っていた車に隠れていたが、弟は暗に何度も止められたにも関わらず、襲撃者によって燃やされた家の中に執事の二人を入って行ってしまった。
そして、しばらく経った時、弟が燃え上がる家から一人で帰還し、その時に中で何が起こったのかアンは弟から聞いた。
どうやら、アンの家に襲撃してきた者はまだ中に居たらしく、弟が連れて行った執事はこの襲撃者によって殺されてしまった。
弟は何とか襲撃者から逃げることができた。
そしてアンと弟は父と母と帰る場所を失ったため、助けを求めてもう一度、親戚の家に行くことになった。
しかし、親戚の家の神に事情を話すと、
親戚「我々では君たちを引き取ることが出来ない。他をあたってくれ。」
と親戚の家から追い出されてしまった。
そしてアン達はとにかく自分たちの親戚の家を助けを求めて訪ねた。
しかし、その答えは全て同じだった。
自分たちを引き取ることはできないと。
アンが親戚の家を回っている間に弟は何かの病気にかかってしまった。
アンは弟が心配で病院に連れて行くと、アンの弟は正体不明の重病にかかっているのが分かった。
そしてアンの弟は治療のために病院に入院することになった。
アンの弟が病院に入院するのと同時に、アンは仕事を始めた。
その理由はアンの弟の治療費を稼ぐためであった。
アンの弟の治療費はとても高く、アンは仕事を何個も掛け持ちをして毎日、朝早くから日が変わるまで必死に働いた。
しかし、弟の治療費を返すどころか、どんどん膨らんでいった。
幸いなことに病院の院長や医師、看護師のみんなはとても親切で、治療費を全然返せていないのに弟の面倒をしっかり見てくれたり、弟を治す方法を色々試してくた。
そして院長はアンの事情を知っていたため、『治療費はそんなにすぐに払わなくて良い。私たち神は悠久の時を生きる者だ。いつか返してくれれば良いよ。』と言ってくれた。
アンはこんな良い神たちに迷惑はかけたくなかったため、必死に働いた。
そしてアンは自分だけでは治療費を返せないと思ったため、親戚の家に治療費を少しでも払ってくれないかとお願いして回った。
だが、アンの親戚の全員が自分には関係ないとアンを突き放した。
そしてアンは自分の力だけで弟の治療費を払うことになった。
治療費を返すために毎日、十数時間働くようになってから七年が経過した時、アンの元にある仕事が来た。
それは混沌に誘いし者たちの新しく出来た基地の護衛の依頼だった。
アンは昔、父から剣の稽古をつけられていたため、剣の扱いには慣れているのに加え、剣の達人である父から剣筋がいいと褒められていたので、自分の剣に自信があったため、その依頼を受けることにした。
そして今に至ると。
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ア「これが私がこの基地にいる理由だよ。最後まで聞いてくれてありがとう.......って、王様?すごく泣いてるけど大丈夫?」
創「アンは今まで必死に頑張っ出来たんだなって思うと涙が止まらなくなって..........それにとどめを刺すように弟への愛情が伝わって俺の涙腺が崩壊してしまった..........。」
ア「王様って凄く優しいんだね..........他人のことなのにこんなに泣いてくれて..........私、そういう神好きだよ...........。」
アンの呟きはとても小さく、わんわん泣いている創の耳には届かなかった。
創「いや、それにしてもその親戚たち本当に最低だな!!!復讐するんだったら俺も手伝ってやるぞ!!」
ア「復讐はするつもりないから大丈夫だよ。」
創「どうしてだ?こんなに酷い目にあったんだ。復讐しても許されると思うが?」
ア「だって復讐しても死んだお父さんもお母さんも戻ってこないし、弟の病気が治るわけでもないからね。それに私は誰かを傷つけることはあんまり好きじゃないから。」
創「アンってすごく強いんだな。俺だったらきっと復讐していたよ。」
ア「ふふ、褒めてくれてありがとう。それで私からの質問に答えてくれる?」
創「ああ、もちろん。これだけ色々話してくれたんだ。なんでも聞いてくれ!」
そうしてアンは創に質問をしたのだった。




