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魍魎祓師  作者: まっふん
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再び館へ


キーンコーンカーンコーン


「ふわあぁぁぁぁぁぁ…」


チャイムと共に統は大きな欠伸をした。昨日、家に帰ったはいいものの布団に入った瞬間、昨日起こったことがフラッシュバックしてなかなか寝付くことが出来なかったのだ。統は6時間目が終わったら、すぐに学校を出ないといけないことを思い出し、今の間に寝ておこうと机の上に突っ伏した。



「いや~やばかったよね!あんなイケメン、初めて見た!」


「あの子、娘なのかな。兄の割には歳離れてそうだしね~」


「いや、父親にしては若すぎでしょ…」


統は女子のテンションの高い声で目が覚めた。まだ数分しか経っていないが、深く眠っていたようだ。統が身を起こしたと同時にチャイムが鳴り、教師が入ってきた。あと1時間後には異世界のような場所に戻る。昨日までは不安でしかなかったが、少し楽しんでいる自分がいる。統は一人でニヤつくとテキストを開いた。



「はーい、連絡事項は以上だ。今日は解散~」


担任がそういうと今日の日直が起立!礼!と言い、クラスメイトが一斉に帰りの挨拶をした。統は挨拶が終わると同時に、鞄を担ぎ、階段を駆け下りた。15:28。時間が守れない奴は嫌いな穂村さんことだ。遅れたら何か言われるかもしれないと統は急ぎ足で下駄箱に行き、靴を履き替え校門に向かった。


「…あれ?」


校門に向かう途中、統は何やら校門が騒がしいことに気付いた。なぜか女子が大勢集まっているように見える。さっさと通り過ぎたいと感じた統が女子の群れを横切ろうとした時、自分の名前を呼ぶ甘い声がした。


「…げ。」


女子に囲まれていたのはあろうがごとか颯だった。一斉に目を向けられた統は蛇ににらまれた蛙のごとく身を縮こまらせた。


「お疲れ~!迎えに来たんだよー」


「あ、えっと…穂村さんは?」


「ほらほら、そこで停まっているでしょ」


颯が指さす方向を見ると明らかに機嫌が悪そうな穂村と、その後ろに穣が乗っていた。


「穣…!」


「そうそう大勢で来ちゃった~ほむくんに怒られちゃうから、行こうか。君たち、またね~」


統の両肩を穂村の車の方に向かって押しながら、颯は好意の目を向ける女子たちに手をヒラヒラと振った。


「ほむく~ん、お待たせ!統くんも来たよ。」


颯が声をかけると、運転席に座っていた穂村が助手席側の窓を開けた。


「あぁ、お疲れ。雨惹は後ろに乗れ。おい、お前も乗るのか」


「一緒に行くって言ったじゃん!怒らないでよ~」


「俺は怒ってない。謝るなら穣に謝れ。お前を囲む女子らのせいで声がうるさすぎて頭痛がするって言ってたぞ。」


「えぇっ、みのるん、ごめん~」


「いいよ、イヤホンぶっさしたら、聞こえないし。統、やっほー元気だった?」


後部座席に座っていた穣が前に身を乗り出した。


「うん、穣は?もう大丈夫なのか?」


「うん、ばっちり。ハンターも楽しんだみたいだし。私は寝たらたいてい大丈夫だからね」


統はそうかと頷くと後部座席に回り、穣の隣に座った。


「いろいろ急に起きたからびっくりしたでしょ。いきなり三人の魑魎祓術を体験したもんね。ちゃんと休めた?」


「うん、まあパニックたけど、穣に会ったらだんだん実感が湧いてきた。」


穂村が車を発進させた。


「魑怪が見えてから、たった一日で補助師か魑魎祓師か決められるだなんて、急すぎよね。皆、段々役割が分かっていくものなのに。」


「いや、そうなのかもしれないけどさ、知識が全くない俺に役割を任されてもどうしようもないんだよな…」


統は苦笑いした。


「大丈夫だよ、先生は優しいし、統の味方だよ。」


助手席にいた颯が後ろを振り向いて言った。


「あの、皆が言ってる先生ってどんな人なんですか?」


「「「お節介/うざい/面白い」」」


三人が見事にハモった。


「えぇ?」


「お節介だよ、めっちゃ世話になっているし。」


「うーん、お節介なのも分かるけどさ、やっぱり面白いよね先生。僕たちを統制できるだなんて到底出来ないことだと思うよ~」


「…あいつはうざ絡みが多い。できれば先生だなんて呼びたくない」


「え、じゃなんで先生って呼んでるんだ?」


「先生の趣味。まあ、修行するときの師匠みたいな感じだからいいんだけどさ。」


「どういう修業をするの?」


「う~ん、説明が難しいなあ、僕たちの能力って生まれつきあるもので、年齢と共に強くなっていくんだよね。で、この力を扱いきれないから、先生の所に行って調整して術を自由に操れるようにするんだよ。」


「へえ、なんか魔法みたいだな。」


「確かに魔法みたいだな、だが自分の感情のブレで人が傷つくことも多くあった。だから、生まれ持った力が暴走する前に館で統制する力を身につける。昔の方が俺たちはもっと荒れていたし、出てくる火も乱雑で独りでに暴れていた。」


「他の皆は力を抑え込んで調整して、相手が手ごわい時に一気に力を放出するっていう修業だったけど、私と育だけは既に動物を慣らしていたから、逆に動物をいかに上手く相手に合わせて出していくかの修業をしてたんだ。」


「へ~」


「まぁ、お前は祓師では無いから、そんな大変じゃない。心配するな。」


「ですよね」


しばらく沈黙が続いた後、颯が口を開いた。


「ねえ、ほむちゃん。これどのくらいかかるの?」


「あ”?2時間半だが、文句あるのか。」


「無いない。僕が自分から乗っていくって言ったもん。」


「文句言ったら、放り投げるところだったぞ。雨惹、疲れてるなら寝とけ。」


「え、いやそんな、申し訳ない。」


「大丈夫大丈夫。それに山に入ってからはかなり揺れるから、今の間に寝といた方が良いよ」


「そう…なのか…?」


穣がうんうんと頷き、手本を見せるかのように目を閉じた。颯も話さなくなり車内が静かになったので、統は窓から流れる景色を見つめながら、ゆっくりと瞼を下した。




力が暴走する前に館に行くことになるので、先生の世話になるのは人によって違います。

穣と育は既にある程度、術を身につけていたので高校から来ましたが、穂村や颯はもう少し幼い時から世話になっていました。

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