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魍魎祓師  作者: まっふん
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夜の空中散歩



「へえ~そんなことがあったんだ。三鷹市にそんな魑怪がいただなんて知らなかったなぁ、あ、そもそも行かないやそんなところ。」


三人で食卓を囲っていたが、永遠に話していたのは颯だった。穂村はもうお前の声は聞きたくないという風に眉間にしわを寄せて食べていたので、統は空気を悪くしないように話があちこちに行きがちな颯との会話を盛り上げていた。


「颯、さんはどこに住んでいるんですか?」


「ん~、家は一応、ここ?大体誰かの家に泊っているからなあ、ここで過ごす時間の方が短いや。」


「え、えぇ…なんか放浪の旅でもしてるんですか?」


「してるわけないじゃん!いろんな子が遊びにおいでよ!っていうから、甘えさせてもらってるの」


「あぁ…なるほど…」


絶対、女の人だと統は確信した。こんな雰囲気であんな距離感な上に、白髪にポニーテールはかなり目立つ。これがモテる男なんだろうなと統はつくづく感じた。


「はあ、お前、ほんとに次々乗り換えるのは止めろ。どこで繋がっているか分からん。」


「ほむちゃん、心配性だなあ…大丈夫、僕何にもしてないよ。家に上がらせてもらって、ご飯一緒に食べて、映画見たりゲームしたりして、寝るところを借りているだけだよ?男女関係は一切ないでーす」


颯は箸をカチカチさせながら言った。


「お前の心配じゃなくて、お前を家に呼ぶ奴らが心配なんだよ。」


「えぇ~変な人に襲われないか僕のことを心配してよ~…ってかここから、三鷹市まで結構かかるでしょ?遅くまでいて大丈夫なの?」


「あ、大丈夫です。今日は友達の家に泊るって伝えてるんで」


「へえ~初めて来た場所にいきなり泊るだなんて統くんもなかなかやるじゃん!今日は僕と遊ぼう!」


「ダメだ。こいつは明日学校があるから早く出る必要がある。」


「ええっ!学校あるの!?そっかそれ制服だもんね~じゃ明日の朝、すごく早いじゃん!起きれるの?」


「いや、それは…まあ…」


「僕が今から送ってあげようか?僕なら今から1時間で三鷹の方まで行けるよ!」


「1時間!?まだ20時前だし、やっぱ穂村さんには申し訳ないし、そうしてもらおうかな…」


「確かにたまたま楓田が来たにはそっちの方がいいかもしれない。私道を通っていく道も速いが揺れが酷いからな。」


「え、いいじゃんいいじゃん!夜の空中散歩、とっても楽しいよ!」


颯が目をキラキラさせながら言うものだから、空中散歩と聞いた統は某映画のイメージが流れた。


「えっと、じゃあお願いします。」


「オッケーオッケー任せて!」


「雨惹、明日車で迎えに行くから学校が終わったらすぐに出てこい。15:30ぐらいに終わるだろ?」


「分かりました!…ってか何で時間知っているんですか」


「山の麓の学校に通っている奴が3人いるからな。何高校だ?」


「三鷹市立高等学校です。」


「分かった。家族に帰ると連絡しておけ、部屋の荷物は忘れるなよ。」


そういうと穂村は立ち上がって、空いている皿を片付け始めた。


「あ、はい!美味しい飯を作ってくれて、ありがとうございます!」


統も慌てて立ち上がると、自分の使った皿をシンクに持って行った。


「じゃ、統くん僕待ってるから、荷物持って道場前に来てね~」


颯は手をヒラヒラとさせて、空いている皿はそのままに部屋から出ていった。



「じゃあ、また明日よろしくお願いします!あ、あと穣にもよろしく伝えといてください」


「はいはい、また明日会うけどな。」


後片付けを手伝った統は寮の戸の前まで送ってくれた穂村にぺこりとお辞儀をすると、颯との待ち合わせ場所まで行った。


「お待たせしました!」


「全然、もっとゆっくりでも大丈夫だったのに~。今から三鷹市まで風の力で移動するんだけどね、ジェットコースターとか大丈夫な人?」


「はい!好きです」


「良かった良かった。いつもは僕一人だからそんなに気にしていないんだけど、全然魑魎祓術に慣れていない人を連れて行くから、心配になっちゃって。まあ、風をうまくコントロールできるから大丈夫!ちゃんと僕に捕まっててね。」


そういうと颯は統に腕を差し出した。統は恐る恐る颯の腕に自身の腕をしっかりと絡ませ、学生カバンを握った。するとゴオオッッという音と共に、ものすごい砂ぼこりが舞い自身の脚が地面から浮くのを感じた。


「うおっっ」


「しっかり踏ん張っていてね、バランス崩れると態勢を立て直しづらくなるから。」


颯に捕まっているのにぐらぐらしている統の横で、颯はまるで立っているかのようだ。


「すごいですね…」


「僕、体幹だけは良いんだよ。移動しながらうまく立てるところ探してあげるから、慌てないでね。」


颯がそういうと、2人の身体は一気に上昇し、道場の屋根の高さまでになった。


「高い!」


「楽しいでしょ、僕の腕に捕まった状態で座った体勢になった方が安定するかも。力抜ける?」


統は颯に捕まっている限り、落ちることは無いだろうと信じ、全身の力を抜くと風の力で空中椅子をしているような体勢になった。


「ばっちりじゃん!じゃ、このまま三鷹市にしゅっぱーつ!」


上手く風の力に適応した統に満足げな笑みを浮かべて、颯の声と共に2人は夜の空を進み始めた。



「ありがとうございました!」


三鷹市の少し明るく人気がいないところで、地面に降り立った二人はそこからはタクシーで帰り、館から二時間弱で統の家の前についていた。今日の夕方の雨のおかげで雲がかかっており、月あかりなどで人に見られる危険な状態に合うことなく、夜の散歩は終わった。うまくスピードを加減してくれた颯のおかげで統も途中からは風の力に慣れて、楽しむことが出来た。


「いいよ~僕も久しぶりに誰かと空を移動出来て楽しかったし、僕はこのまま友達の家に行くよ。また明日ね。」


タクシーの窓から顔を出して、颯は別れを告げた。


「はい、よろしくお願いします!」


統が礼をしたと同時にタクシーが動き出し、颯は去っていった。


「はあ…めちゃくちゃ濃密な半日だったな…」


なぜか謎の生き物が見えるようになってから、未知の世界が一気に広がったのだ。半日とは思えない経験だった。やはり、疲れた体で明日朝いちに起きるのは無理だっただろう。穣とはあまり話せなかったが、穂村さんとは少し仲良くなれた気がする。明日、会うことになる「先生」とはどんな人なんだろうと統は考えながら、家のドアノブを回した。





まだ半日分しか書いていないのか…

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