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魍魎祓師  作者: まっふん
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犯人Ⅳ


「先生、ご馳走さまでした!」


「土曜日に祓ってもらいましたからね、特別給与みたいなものだよ」


玲瓏たちはハンバーグを売りにしているファミリーレストランから会計を済ませて出てきた伊奴使にお礼を言った。


「給料ってあるんですね…」


「そりゃあ、もちろんあるよ。よく知らない人間を守るために身体を張ってもらっているのに、お金を払わないのは不公平でしょう。それに魑魎祓師の中には、これをメインの仕事として生計を立てている人もいますからね。」


「私と嶺はまだ独り立ち出来ていないから、玲瓏さんよりお給料低いし、独り立ちして2年経った人としか任務に行けないとかの制限があるんだよ。」


「まあ、普通は高校卒業と共に独り立ちできるように修業をしてもらっているので、お小遣いのようなものだね。ちゃんと地元の高校には通っているし、がっつり特訓は夏休みとか土日だけだからね。」


伊奴使はかばんに財布をしまうと、駐車場に向かって歩き出し、他も後に続いた。


「特訓方法も色々あって、穣さんとか育さんみたいに本拠地を中心としている人もいれば、私みたいに独り立ちしてある程度年数経っている人の下で訓練する人もいる…」


ポソリと嶺が呟いた。


「まぁ、氷雨家は俺のように水が相手じゃない限り、祓術を使えないからなあ…」


「氷室家と玲瓏家は魑魎祓師の名家の中でも特殊な関係にあるからね。統くんはまだ全員に会っていないから、ピンと来ないかもしれないけど、現在は魑魎祓師は7つの族に分かれているんだよ。でも一昔前までは氷室家を抜いた6つの族が魑魎怪を祓うことが出来る一族だったんです。玲瓏家は自分の一族だけが魑魎祓術を応用させられることに気付き、少しずつ自らが生み出す水を凍らせる技術を進めていった結果、生まれたのが氷室家ってわけですよ。」


「ま、俺も玲瓏家がどんな研究をして、氷室家を生み出したのかよく分かってないんだけどな。でも昔までは玲瓏家の腰ぎんちゃく的存在であった氷室家がどんどんデカくなってきているのは、こいつを見てても分かる。」


助手席に乗り込んだ透は親指でグイと、統の二つ隣に座った嶺を指さした。


「へえ、どういうところが強くなってきてるって思うの?」


「そうやなぁ…あと数年もすれば、嶺は俺が作り出す水や自然に存在している水以外の液体も凍らせることが出来るんちゃうかって考えてる。水を凍らせる氷の祓術じゃなくて、液体ならジュースでも血でも凍らせるレベルまで氷室家は強くなってきていると思ってる。」


「え!それって凄すぎない!?もう氷って名乗れないレベルじゃん。」


「流石にそれは嘘。液体なら何でもじゃなくて、氷点下の力を液体にぶつけることで凍らせられるのが氷室家の祓術の原理だから。液体でも凍らないものは凍らないし、むしろ固体でも凍らせられるようになるってパパが言ってた。」


嶺が興奮している穣にツッコミを入れた。


「それもそれで凄いと思うけどね…二人はどうする?私達は今から山に戻るけど。」


「あ~どうせ、明日も暇だしな。久しぶりに道場で訓練でもするか。俺らも山に行きます。」


「分かったよ。じゃあ二時間ぐらい苦しいかもしれないけど、後ろの3人は頑張ってね。」


「「「はーい」」」



「統くん、何だか浮かれない顔をしているね。」


伊奴使がバックミラー越しに統の顔を見てそういった。


「えッ、あ、いや…その折角連れ出してもらったのに何の役にも立たなかったなって…」


「フッ、何言ってんだお前、そりゃ魑魎怪が視えて2日目の高校生が役に立つわけないじゃろ。」


「透くん、2人が寝てるんですからもう少し静かに話してください。確かに透くんの言う通り、知識がほぼ皆無に近い統くんが役に立つかだなんて、これっぽちも思っていませんよ。」


「ははは…そうですよね…」


予想はしていた言葉だが、ストレートに二人から言われるとグサリと刺さった。


「まあ、君はそれでいいんです。本来はちょっとずつこの世界の常識を身につけてもらうのですが、統くんには2年でつけてもらわないといけないですからね。補助師にはちゃんと2年後にはなってもらいます。大変かもしれませんが、それが私のやり方です」


「厳しく聞こえるけど、先生は伊奴使の中で一番いい人だ。もし、お前が関西出身とかだったら、もっと嫌な扱いを受けてたじゃろうな。」


「伊…先生にも兄弟がいるんですか?」


「透くん、あまり私の家族の話をしないでくださいと言ったでしょう。魑魎祓術の七族を育てる家系として、そりゃあ一人や二人ぐらいは兄弟はいますよ。関西に長男、九州に次男、関東に末の私が伊奴使家の代表としているんです。」


「七族を育てる家系としてって…なんだか昔みたいですね。」


「その通りです。魑魎祓師や伊奴使のような力を持つ者はその血を引くものだけなので、多くの子孫を残すことが求められているんです。」


「わしにも弟と妹がいる。嶺にも幼い弟がいるな。七族はどこの家系にも兄弟がいるのがほとんどや、たまに叔父叔母に子供がおらんってとこもあるけど。穣の父親の弟とかはそうやな。あの家系は穣と育以外に血を引く者がおらんから、七族の中でも厳しい教育を受けている。先生はまだ独り立ちを許してへんけど、あの二人はもう一人立ちして数年の祓師と同じレベルじゃろ。」


「正直言うと2人とも自由だから、あまり厳しい教育を受けて来たって感じがしないな…」


「普段はあんな感じですが、儀式や集いの時は行儀がとても良いですよ。統くんの成長具合にもよりますが、七族は正月や冠婚葬祭で伝統を最重視しているので、今の日本であまり見られない経験を出来ると思います…もうすぐで獣道の入り口に着くので、酔うようでしたら静かにしておくことが賢明です。」


減速してあまり負荷がかからないような運転をし始めた伊奴使に統は返事をし、口を閉じた。



「着きましたよ、2人とも起きてください。本当、あんな道でよく眠れますね。」


「…いや、半分起きてたんですけど…あの揺れで寝たり起きたりしてたんです…」


嶺はそう言いながら、目をこすって車から降りた。隣の穣も続いて降り、大きな欠伸をした。


「先生、今日は泊るんで今から布団干させてください。おい、嶺。お前も手伝えよ。」


「もちろんです。好きにしてください。」


「ありがとうございますって……チッ。あいつのお出ましか…」


先ほどまで笑顔だった透の顔が瞬時に険悪な顔付に変わった。統が透が見ている方向に視線をずらすと、ちょうど研究施設から出てきた穂村がいた。


「よう、仏頂面さんよ。わざわざ出迎えに来てくれたのかぁ?」


「チッ…先生が帰って来たと思って出たら、邪魔虫か。雨惹、おかえり。何か学べたか?」


「ただいまです…いや、魑怪を視る前に皆さんが祓ってしまったので何も…」


「そうか、それは残念だったな。まあ、機会はいつでもある。横のうるさい奴の声は耳障りでは無かったか?」


「はっ!俺より会った時間が長いくせに、こんなにも距離が取られているじゃないか。よく俺の声が耳障りだったとこ言えるな。耳障りな声と思うのは、お前にコミュニケーション能力が無いからだよ。」


「そうやっていちいち揚げ足を取るところが邪魔虫だって言ってるんだ…全く大人げない奴だ。そういう奴の声は無視して良いからな。」


「そうやって他人に自分の考えを押し付けるのもどうかと思うぜ、だいたい…」


「はいはい、そうやっていい大人の口喧嘩を未成年の前で見せて、未成年に注意される二人の方がよっぽど恥ずかしいと思うけど~。統、2人はもう一生こんな感じだから、2人とも無視して良いからね。恐らく、実璃さんが来てると思うから、ほっといて挨拶しに行こう!」


透の言葉を割り込みして打ち切った穣はそう言うと、互いに険悪なムードを出しながらも穣に指摘されたことが恥ずかしいのか、そっぽを向いている透と穂村を置いて、統の背中を道場の方に押していった。


「あの二人はね~もう一族が誕生した時から、あんな感じだからほっといていいよ。あれが恒例行事みたいなものだし!」


「そ、そうなの…?」


「うん!祓術を使わない限り、無視してればいいから!実璃さんは庭園かな~行ってみよう!」


そういってぐんぐん進む穣に統はあたふたとついて行った。





久しぶりの投稿で、話し方とか今までの内容を忘れてしまいました…(笑)


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