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魍魎祓師  作者: まっふん
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犯人Ⅱ


「ぐわあっ!!」


男はナイフを適当に振りかざしながら、近づこうとする穣を寄せ付けないようにしたが、軽い動きでかわす穣は、確実ながらも男に近づいていた。


「よっと、うわっ」


「穣さんの動き、軽い…」


「流石、すぐ血が上る男の元で教わっているだけあるな。」


2人が呟く中、あっという間に、穣と猿の守眷が男の前後を囲った。



「くそ…なんでだ、何でだ!!!」


「ただ振り回すだけでは、動きが読めるからね。それに自分自身にも傷がつくよ。」


穣が男にそういって、手から刃物を振り落とそうとした瞬間、突如、守眷が穣の前に飛び出し、穣の身体が宙に投げ出された。


「穣っ!!」


玲瓏と嶺は男の最後の一振りが、壁に刻まれた跡のように、守眷を切り刻んでいくのを見た。玲瓏は自身の両手で丸を作り、空に高く飛んだ穣の身体にかざすと、泡のような水の膜が現れ、穣の身体を包み捕えた。


「穣!大丈夫か!?」


咄嗟に水の膜で穣の身体を包んだ玲瓏は、地面に着地した穣に駆け寄った。水の膜のおかげで、けがは無いが、服が濡れて穣は鼻に水が入ったのか咽ている。


「ゴホッ、ゴホッ、大丈夫っゴホッ」


「最後のあの一撃、穣さんに刃物が触れたわけでは無いですよね?」


嶺は男が次にどう動くのか見張りながら、穣に声を掛けた。


「…うん、触れてない…ッチ…あのクソ男…」


落ち着いた穣は犯人への怒りを露わにし、あたりに不穏な空気が漂った。


「まあまあ、落ち着け」


「落ち着いてられるわけないやろ!!!よくも私の守眷に傷をつけやがって…」


玲瓏がなだめるも、自身の守眷が一体、失うことになってしまったことにブチぎれている穣は立ち上がって、自身の手のひらを拳で叩き、男を睨みつけた。


「(儀式を踏めば、失った守眷は戻ってくるのになぁ…動物に対する愛情が深い辺り、流石はあの眷獣師家を正す存在と言われてるだけあるにゃあ…)」


玲瓏は穣をどうどうと落ち着かせながらも、守眷に対する愛情深さに感心した。


「…穣さんを怪我させようとした辺り、もう手加減する必要ないですよね??」


玲瓏がへっ?と慌てて、嶺を見ると、穣と同じく嶺も男を殺気立った目で睨みつけていた。


「(あぁ…そっか、コイツ穣のこと好きやもんな…)いや、それでもあらけないことしたら、あかんよ?」


「大丈夫ですよ、魑怪がとり憑いているのは、あの男にじゃなくて、刃物にですから。魑怪が取りつく事による男自身の攻撃力の上昇はさっき近づいたときに感じかれ無かったですから。」


「じゃあ、男と刃物を引き剥がすまでは、穏便に行こう。はがしてから好きにしてええよ。」


「「もちろん」」


そういうと穣は透き通った虎の守眷を出した。


「私今、玄太郎の聴力を借りたんで、どこに残りの功撃が飛んでくるか大体把握できます。もう一度、男に近づくので、サポートお願いします。」


「ええよ、じゃわしはその拡散された斬撃の勢力を水の力で緩和させるわ。出来そうなら、そのままその斬撃を嶺と一緒に抑え込む。」


「りょーかいです!」


「ほな、はよう片づけましょうか。」


玲瓏の一声で穣は再び男に向かって、走り出した。



「あっ、眷獣師さんから連絡が来ました。犯人と思われる人物を見つけたそうです…でもそこから連絡が来てませんね…何かあったんでしょうか…」


玲瓏たちが攻撃される数分前。伊奴使と統の三人で魑怪の痕跡を探していた古田は携帯で穣からの連絡を確認した。


「犯人に魑怪が憑いていて、こちらも待つ間もなく、攻撃されたとしか考えられませんね。三人の誰からも連絡が無いのはおかしいですから。」


「そうですよね、眷獣師さんが居場所を送ってくれているので、我々はそちらに向かいましょう。雨惹さんはどうしますか?」


「えーっと、ここにいるのも場違いなので…先生について行きます。」


「確かに高校生一人はおかしいね。」


「私もついて行きたいところですが…あぁ、捜査員に呼ばれてしまいました。玲瓏さんたちの確認はお二人にお願いできますでしょうか?」


「容易い御用だよ。」


「では、伊奴使さんからの連絡を受けてから、こちらの警察官を向かわせますので、少し早めの段階で連絡していただけると助かります。」


「分かりました。じゃあ、統くん、我々も行こうか。恐らく本物の魑怪が視えると思いますよ。」


「は、はい…」


伊奴使の微笑みに統は、本当に皆大丈夫なのかと心配しながら、後を追った。









穣の術には、2種類あります。

1つが実体があるタイプの守眷。もう一つが幻の守眷です。どちらとも攻撃力はありますが、実体の方がより強く、こちらは魑魎怪が視えない人にも見えます。幻のタイプは透明状態なので、相手の攻撃は当たりません。穣は各守眷12体ずつ出すことが出来ますが、自分の体力的な問題もあるので、大きい守眷を何匹も出すことはあまりありません。玲瓏の「儀式を踏めば…」とありましたが、穣の扱う生の術は、身体に守眷が宿っているもので、各守眷が祀られている場所で眷獣師家の当主と守眷の長の対話で許可が下りれば、失った守眷の補欠を補うことが出来ます。穣がどういった守眷を保持しているのかは、またの機会で。

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