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魍魎祓師  作者: まっふん
11/16

新たな犠牲


「よし、時間になったからそろそろ行こうか。」


時計を確認した伊奴使はそういうとソファーから立ち上がった。


「はーい/はい!」


ちょうど穣も着替えて居間に入ってきた。朝ご飯は各自適当に台所にあるものを食べていいと言われたので、統は食パンにバターを塗って食べたのだが、やはりまだ気が引けるからか自由にしろと言われるとどうすればいいのか分からなくなる。


「今日は池袋の方まで行くから、2時間半ぐらいかかるからね。」


「分かりました」


「大丈夫だと思うが、相手は殺人を犯している魑怪だ。気を付けろ。」


「…っ!分かりました…」


穂村の言葉で統は相手が未知の存在だと再認識し、背筋に鳥肌が立った。



「…警察も関わってくる事件ってよくあるんですか?」


車で移動中、統は恐る恐る伊奴使に尋ねた。


「…あるね。統くんが出会った猫の魑怪は何も害が無かったけど、人の感情とかで出来た魑魎怪は悪影響を与えることもあるからね。」


「そもそも魑怪って視えないんですよね?事件と魑怪ってどう関わってくるんですか?」


「感情に基づいた魑怪は変幻自由だからね。統君、今までここなんか不気味だなーとか、何故か分からないけど、ここにいる人を見ているだけで楽しいとか感じたことあるでしょう?それは憎悪とか怒りを抱えた魑魎怪が醸す空気に影響されているんだよ。負の感情を持つ魑魎怪がそこに存在しているだけで、影響を受けやすい人はすぐにメンタルがやられたり、他人に当たってしまったりするんだ。そういうのが連鎖していくことで、街全体が悪くなっていくんだよ。」


「あ~なるほど…そういう経験、あった気がします。その時は魑魎怪は視えていなかったけど、そういうのが原因だったのかもしれないんですね…」


「ただ単に昔から治安悪いところもあるけどね。」


「今回の現場はただ単に治安が悪い場所じゃないらしいよ。そうだ、穣。昨日渡された資料を見てくれないかい?魑魎祓師と警察が見るポイントは違うからね。あ、遺体の写真があるから閲覧注意でね。」


「未成年に遺体写真見せる先生もだいぶどうかと思うけどね…」


そう言いながら、穣は伊奴使が助手席に置いている鞄から引っ張り出したファイルを受け取って開いた。


「うわ…何これ…」


「そんなにヤバいの…?」


穣の少し血の気に引いた顔に統は少し興味を示した。


「ちょっとね。まだ統は見るべきじゃない、いくらグロ耐性があるとしても映画の世界と現実は違う。」


そういいつつ、穣はページをめくっていった。


「先生、これやっぱり統を連れてくるべきじゃないと思う。」


「うーん、そう言ってもね…警察絡みの事件なんてそうそうないし、ただでさえとんでもなく遅れている統君を早く一人前にしたいからね…」


「でもトラウマになったらどうするんですか、本当はまだ魑魎怪見つかっていないんでしょ。いくら魑魎祓師が三人いるとはいえ、統になんかあったらどうするんですか。まだ親にも何も伝えていないし…」


「でも連れてきたのは穣だよね?」


伊奴使の鋭い指摘に穣はグッと息を呑んだ。


「統君に何かあった場合は、穣が責任とるって覚悟しているんだよね。今更怖気づいても遅いですよ。」


「待って。俺に補助師になる素質がなかったら、穣に何かあるの?」


「この世界を知る人は日本に数%もいないからね。穣は一般人に魑魎怪の重要な秘密を話したということでまあまあの罰を受けることになるよ。」


「そんな…」


「覚悟はちゃんとしましたけど、いきなりこんな事件だなんて誰も思っていないし。それに私は統は何かしら持ってるって確信してる。」


不貞腐れながらも何度も断言してくれる穣に統は照れくささを感じた。にやけ面を隠すために、ミラー越しに伊奴使を見ると、彼も少し微笑んでいたのできっとさっきのキツイ言葉はからかいなのだろうと統は思った。その時、伊奴使のスマホに着信が来た。


『伊奴使さん、おはようございます』


「古田くん、おはよう。今、所沢のあたりだから、40分ぐらいで到着しますよ。」


「誰?」


「刑事兼補助師的役割も果たしてる古田さん。魑魎怪絡みの不可解事件が起きたら、いつも古田さんが連絡してくる」


スピーカー状態で古田が話しているので、統は小声で穣に聞いた。


『伊奴使さん、それがちょっと問題がおきまして…』


「周囲の音を聞く限り、また起こったんだね?」


『そうなんです…先ほど、3人目の被害者が出ました。』


「えッ…」


穣と統はヒュッと息を呑んだ。


「やはりですか…今、どちらの方に?」


『1人目が発見されたところから、そんなに離れていません。後で住所を送ります。まだ被害者の血が固まっていないので、魑怪は近くにいるかもしれません。』


「分かりました。鼻が利くやつが二人いるので魑怪の方は私たちが探し出します。古田さんは魑怪を生み出した原因について解明してください。」


そういうと伊奴使は電話を切った。


「ふーー、やはり連れてくるべきでは無かったね。」


「俺のことは大丈夫なんで、犯人の魑怪探しだしましょう!」


伊奴使は統の言葉に頷くと、古田が送ってきた住所に向かって車を走らせた。




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