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今は鮮やかな深紅

こんばんは、遊月です!

殺伐感情戦線「約束」参加作品、3話目です!


恋人の夏希が消息不明になって焦る藍。彼女の身に起こる出来事とは……?

本編スタートです!

 (あい)ちゃんは、嘘をついた。

 うそつきうそつきうそつきうそつきうそつきうそつき、うそつきうそつきうそつきうそつきうそつき、うそつきうそつきうそつきうそつきうそつき、うそつきうそつきうそつきうそつきうそつき、うそつきうそつきうそつきうそつき。

 私のこと忘れないって言ったのに。

 会いに来るって言ったのに。

 私たちの間には赤い糸があるから、絶対にずっと一緒だよって言ってたのに……っ!!


 許せない、許せない、許せない、許せない、許せない……!

 悪いのは誰?

 誰が悪いの?

 悪い子にはお仕置きが必要だよ。

 だから…………


  * * * * * * *


 夏希(なつき)が部屋に戻らなくなって数日が経った。

 携帯にかけてもやっぱり繋がらなくて、いなくなった次の日には警察に捜索願を出すことに決めた。最初は家族でないと……と断られそうになったけど、どうやら同居人のものも受け取ってもらえるらしくて、しばらく待ってからいろいろ話すことになった。

 だけど動き出すのに時間がかかるという情報もネットで見ていたから、夏希が勤めている会社とか、よく会っているお友達とか、そういう方面にも自分で声をかけることにした。だけど、みんな夏希がどこに行ったか知らなくて、連絡もつかないと言っていた。

 それから何日か経ってもまだ見つからなくて、ようやく見つかったのは近所の空き家に捨てられた夏希の携帯だけ。しかもそれもたまたま見つかったもので、本体は壊されていて中身のデータを見ることもできない状態だった。すぐに携帯ショップに持って行ったけど、データ復元には手続きも含めてそれなりの時間がかかるらしい。


 夏希の身に、何が起こったのだろう?

 何もわからない。歩き回るのに疲れきって座ったのは、夏希と最後に別れた駅前のベンチだった。ここで、わたしたちは喧嘩をして、そのまま会えなくなって……。


「……っ、ううっ、…………っく、」

 なんでこんなことになっちゃったんだろう?

 こうなるくらいだったら、夏希の言う通り両親に会いに行くことなんてなんでもなかった。遅かれ早かれ全部言わなきゃいけないことだったんだから、少しだけでも勇気を振り絞れていたら? もっとちゃんと、夏希の言うことに耳を傾けていたら? 後悔してもしきれない。

 こんなことになるなんて思わなかった、あれが別れになるなんて思ってなかった、会えなくなるなんて想像しなかった、帰ったら当たり前に夏希がいて、少し機嫌悪そうにわたしを迎えてくれて、それでわたしもどうにか勇気を振り絞って謝って……そんな仲直りを、疑いもせず当たり前のように想像していた。


 ねぇ夏希、今どこにいるの?

 誰かのところにいるの? それともひとりでどこかに泊まってるの? 携帯が壊れた状態で見つかったのはどういうことなの? 最後に話したときには言葉が全然出てこなくて、うまく気持ちも伝えられなかったのに、会えなくなってからこんなに言葉が出てくる。

 伝えたい言葉が溢れて、止まらない。


 いつもありがとうとか、本当に大好きだよとか、こないだは不安にさせてごめんねとか、一緒にご飯食べようとか、今日の仕事でこんなことあったよとか、たくさん話したいことがある。たくさん話してほしいことがある。

「会いたいよ……、夏希……っ、」

 苦しいよ、会えない時間がこんなに苦しいって思う人なんて、今までいなかった。


 もし時間を戻せるなら、なんだってするのに……!

「もし時間を戻せるなら、なんだってするのに……」

 後ろから、鈴を転がすような声がした。


「夏希!」

 帰ってきてくれたの!?

 期待を込めて振り向いた先にいたのは、知らない女の子だった。年齢はたぶんわたしと同じくらいに見えるけど小柄で、いわゆるロリ服に身を包んだ姿が痛々しくないくらいには童顔だった。

「……あ、すいません」

「いいですよ、別に。お疲れ様です、早く見つかるといいですね」

「はい……」

 思いの外落ち着いた、聞きやすい声。わたしが夏希を捜しているのを知っているみたいで、彼女はわたしを労るように背中を擦ってくれた。その優しい手つきが却って涙を誘って、しばらく止められなかった。

 結局涙が止まって、息が落ち着いたのはそれからしばらくした後、そのとき初めて見た時計は、もう午後11時を指していた。飲み会をしていたと思しきグループも帰り始め、終電めがけて駅に向かう人たちの波ができ始めている。

 そんな時間まで、この人は付き合っててくれたんだ……。そう思うと、嬉しいよりも申し訳なさが勝ってきてしまう。


「あの、すみませんでした。お時間こんなにとらせてしまって」

「いいんですよ、あなたが泣いているのは、私にとっても(つら)かったから。……よっぽど大事なお友達なんですね」

「はい、大切な友達で……今は恋人なんです」

「恋人」

「はい……あの日、たまたま喧嘩をしてしまって……」


 話を聞いてくれる人がいる、その安心感からか、つい過去のことを話してしまった。夏希と出会ってお互い惹かれ合ったこと、それまで付き合った人とは違う優しさにどんどん夢中になったこと、いつしかそれに甘えてしまっていたこと、そして両親に会いに行こうという提案を拒んだこと。

「もしわたしが、あと少し勇気を持てていたら、たぶん両親にも全部打ち明けられたんだと思います。それで、彼女とも……、それなのに……」

「……………………」

 彼女は、何も言わない。

 当たり前か、こんな話されても困っちゃうよね。それでも話さずにはいられなかったから仕方ないけど、確かに、


「約束したのは、私の方が先だったのに」

「え?」

 首筋に当てられた感触に気付いたときには既に遅くて。


 一瞬チカッと目の前が光ったあと、全部真っ暗になった。

前書きに引き続き、遊月です!

とうとう現れましたね……(恐らく皆様のお察しの通りです) 赤い糸がある限り結ばれていると盲信するのは個人的にはいただけないな、と思いつつも、やはりついつい夢を見てしまうもの。

皆様の赤い糸も、どこかと繋がっているのかも知れませんね……


次回で、本当に完結です!

また次回、お会いしましょう!


ではではっ!!

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