※おまけで肉奴隷がついてます
一度で良いからハニートラップにかかってみたい。
「家賃1万 敷金礼金無し 風呂トイレ付き 駐車場無料 更に肉奴隷が着いてくるだってぇぇぇぇ!?!?!?」
「お客様、お静かに願います」
「す、すみません……」
ショボンと椅子に腰掛け、紹介された物件のチラシをまじまじと眺める。どう見ても怪しいのだが気にはなる。
「一度ご覧になられますか?」
「あ、はい……」
とりあえず見るだけならと思い、仲介屋の車でその物件とやらに行ってみた。
「これが……?」
どう見ても普通の一軒家で見た目は真新しい。文言からして安アパートかと思っていたが、なんと借家だったとは!!
「どうぞお入り下さいませ」
鍵を開け、促された家の中へと入り込む。
玄関には靴が一足…………どうやら誰か居るようだけど……?
「初めまして、肉奴隷だよ♪」
いきなり目の前に現れた女の子。見た目は若々しく実に可愛らしい。大きめのシャツを着ており、袖がダルンダルンで指先だけが袖口からチョコンと出ている辺りが実に好みだ。
「……自分で肉奴隷言ってますけどもしかしてイッチャッテルんでスカね?」
仲介屋の方を心配そうに見つめたが、仲介屋はニコニコと営業スマイルを崩さない。
「ハハ、こんにちは。僕は『宍渡 岭』だよ。永遠の25歳さ!」
「やっぱりイッチャッテルじゃないですか……」
自分で『永遠の〇〇歳』とか言う人はちょっとアレな感じがして要注意だって会社の先輩が言ってたぞ!?
「お客様岭ちゃんは如何ですか? お気に召しましたか?」
仲介屋が急かすように返事を促してくる。
岭……ちゃんは……見た目は悪くない。イメージはクラスで二番目に可愛い子と言った感じだ。脚はむっちりとしていて実に健康的だし、何より
「お乳が大きい!!」
「お客様、心の声がダダ漏れで御座います……」
まるでエーゲ海のカスピ海の女神なビーナスが降臨したかのようなお乳から目を離すことが罪であるかのような錯覚に陥ってしまう!
「お客様の肉奴隷で御座います。お好きになさって下さい♪」
「触っても?」
「オールオッケーで御座います」
「舐めても?」
「デリシャスです」
「激しく上下しても?」
「無問題です。義兄弟の誓いでも刎頸の交わりでも何でもして下さって結構です」
「僕を貴方色に染めてもいいよ?」
―――!?
その言葉に吾輩の幸福丸は錨を上げ、欲望の大海原へと出航せざるを得なかった! 契約書に適当に判を捺し舵を精一杯切った!!
「今夜は舟盛りだー!!!!!」
三世よろしく、可憐なダイバーを決めようとしたその時、仲介屋が一つ咳払いをした。
「コホン、お客様……一つだけ注意が御座います」
「なんだ、もしかして昼間からはダメかな?」
「いえ、そうではございません。この物件で御座いますが、岭ちゃんとの距離感で家賃が変動するシステムとなっております」
「……は?」
吾輩の幸福丸の錨がズルズルと海底に沈んでいく音がした。
「……Aは?」
「おおよそ三万~五万」
「……Bは?」
「七万~十万でしょうか」
「…………C」
「二十万以上となっております」
「………………D」
「プライスレスになります」
──チラッ
「今日から宜しくね♡」
とにかく開いた口が塞がらなかった。最高に素敵な物件かと思いきや、まさかの禁欲寺とは…………。
「それでは……♪」
仲介屋はニコニコと家を後にし、残れた俺はポツンと突っ立ち、岭がひっそりと俺の袖を引っ張る。
「どーすんだこれから……」
「一緒に暮らすんだよ?」
手を出したら自らの身を滅するとんでもない爆弾娘を抱えた俺は、とりあえずリビングの椅子に座り両手を組み知恵を絞った。
「…………」
「ねぇー、お腹空いてない?」
ムニュッと机に豊作なお乳が捧げられ、まるで潰れたお饅頭の様になっている。
「とりあえずお乳が大きい!!」
「ハハ、お兄さん隠し事出来ないタイプだねぇ♪」
岭は立ち上がり冷蔵庫からネギと卵を冷飯を取り出した。
「……待て。何故冷蔵庫荷物が入っているんだ?」
「え? だって僕はココに住んでるんだよ?」
「ま、待て! なら何故ココは入居者募集になっているんだ!! おかしいだろ!?」
「……一人で暮らすのが耐えられなくてさ。どうしても寂しくなっちゃうんだよね……僕」
何やら事情有り気な寂しい顔をする岭。しかしネギを切る度に小刻みに揺れるお乳を見る度にどうしてもシリアスにはなれない。
(左右のお乳で違うリズム取れねぇかなぁ……)
そんなアホな事を考えながら、気が付けばチャーハンが出来上がっていた。
「召し上がれ」
──パクッ
「普通!!」
「でしょ? でも、普通って中々難しいんだよね……」
岭が再び事情有り気な寂しい顔をしたが、俺は岭がシャツの膨らみの上に落としたご飯粒が気になって仕方なかった。
「やはりお乳が大きい!!」
「ハハ……家賃が上がるのも時間の問題かな?」
俺はチャーハンを食べた後、後片付けを手伝う。食器を洗いながら岭の方を見ると、お風呂の浴槽を洗っていた。
──ゴシゴシ……
スポンジを左右に振る度に揺れるエアーズロック×エアーズロック。そしてシャツ雲の隙間から見える富士山麓に、先程から同じ食器しか洗えない呪いが神々と降り注ぐ。
「ダイナマイッ!!!!」
「お兄さんってドストレートに変態さんだよね」
真っ直ぐに邪な欲望を浴槽へと向けつつ、俺はイマイチ洗いきれていない皿を棚へと片付けた。
そして浴槽にお湯を張り、先にどちらがお風呂に入るかの話になる。
俺からしたらどちらでもお得である。俺の出汁を岭が浴びるか、岭の出汁を俺が浴びるかのどっちに転んでもお得ゾーンである。
「どうする? なんなら僕と一緒に入る?」
「家賃賃がウナギ昇りでファイヤー昇龍拳せざるを得ない!!」
シャツを半分脱いだところで岭の動きが止まる。
宇宙センターから見える南半球は厚いオゾン層に包まれており、地球を直接観測する事は叶わなかったが、オゾン層が薄いオレンジ色だと分かっただけでもノーベル賞ものである。
「どうする? 一緒に入るの? 入らないの?」
脱いだり着たりを繰り返す岭。その度にオゾン層がチラチラと見え隠れし、俺は来世はフロンガスに生まれ変わりたいと切に願った。
「少し考えさせてくれ。家賃を上げずにラッキースケベする方々を考えているんだ……」
「それじゃあ先に入ってるから、その気になったらおいで♪」
──ガチャ……
岭は脱衣所の扉を閉め、露骨に大きな動きで服を脱ぎ始めた。
──バルンッ!
「マグニチュードお乳!!!!」
脱衣所の扉を挟んで向こう側で女子がその身をを露出させていると思うと、家賃賃の弾道が上がらざるを得ない。
「むむむ……!!」
俺は悩んだ挙げ句、その日は風呂に入らなかった…………
そして寝る時間になり、寝室へ向かうとそこにはベッドが一つだけ。なのに枕は二つある。
(……マジかよ)
もぞもぞとベッドに潜り込む岭。俺の枕をペンペンと叩き俺を手招きする。
「お願い……一人で寝ると怖い夢見るから…………ね?」
子どものような目で懇願する岭。俺は仕方なくベッドに入り、努めて冷静な素振りを見せた。しかし岭の良い匂いに俺の妖怪センサーは常に反応しっぱなしである。
「……襲っても、いいよ?」
「おおおおお、おう……」
家賃一万とお乳の狭間で、俺の天秤はガタガタと揺れまくっていた―――
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