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世界の果てでも愛しましょう  作者: シャカリキブサイク
8/13

1. 森の中で気付きましょう

短いです





どこか艶々としたカフェから距離を取りながら、担いだ戦斧を両手に構える。

何故朝まで楽しまれた私が森で戦斧を振り回しているかというと、まあ単純に来るべき戦いから確実に逃げるためである。

逃げるためには相対する者より強くなければならないからだ。

龍?知らないね。勇者に全部任せる事にしよう。

あと、私が身長に合わない戦斧を使っているのは邪魔する奴等をなぎ払うためであり、けしてそんな英雄になりに行くためではない。

私は静かに暮らしたいのだ。

適材適所、勇者には勇者の仕事があって私には私の仕事がある。


「ん?」


近くにある木を見境なく薙ぎ倒していると、私の戦斧ではできない傷がある木を発見した。

これは剣だろうか。

よく見たら爪痕のようなものもあるが、これもこの森では見ない……というか本来ならあるはずがない爪痕だ。


五本の抉るような爪痕を残すような動物や魔物はこの森には生息していないはずだし、もし生息しているとするならば成人男性ほどの身長がある大猿か悪魔だろう。

間違っても戦いたくはない。


「なあ、カフェ」


「剣の腕はあんまり良さそうじゃないよね」


「私の聞きたいことを先読みして答えるのはやめてよ」


熟練した剣士ならそもそも戦闘中とはいえ、木を斬りつけるような振り方はしないはずである。

剣に愛着がないか、カフェの言った通り下手くそなだけなのか。


「それとも、本気でそんな余裕ができないような敵と遭遇したのか」


「……考えたくはないね」


カフェの言うことも一理ある。

森は私達人の手には余る大自然であり、動物や魔物の住処なのだ。

いつ何が現れたってなんの不思議もないし、そのために私達の様な武器を持つ者達が存在する。

引っ掻き傷と剣筋による傷は追っていくごとに深く、多くなっていく。

流石に距離を取るわけにもいかずカフェとくっつくようにして前へ進んでいると、何やら荒れ果てた場所にたどり着いた。木々などは円を描くように薙ぎ倒され、夥しい血痕や服かなにかの切れ端のような布、折れた剣や鎧の破片らしき物体が周辺に転がっている。


「ん?カフェ、アレ」


「え?……うわ、残滓だよこれ」


そこから少し離れた場所に黒いモヤのような何か……いわゆる魔力の残滓だ。

これで誰かが魔法を使った痕だというのは分かったが、果たして使用したのは剣の主か、それとも引っ掻き傷の主か。


「生きてるのかな」


全く心配していない声でカフェが呟く。


「どっちが?」


「どっちも」


「ま、この有り様じゃお互いに軽傷やら無傷じゃ済まんだろうしなあ」


少なくとも数十メートルは戦った跡が残された上でのこの現状だ。

どちらかが生きていようが死んでいようが、帰還後に報告の必要はあるだろう。

よくわからない変化も安全を保つには報告しなければならない。

特に魔法を行使する存在が森に住み着いたと言うのなら危険度は跳ね上がるだろうし。


「目敏いお嬢ちゃん、だっけ?」


「おい」


「冗談!さ、帰ろう!」


異変を見つけ続けた結果大人達にそう揶揄われたのを思い出し(私も大人だが)、苦い顔をしながら文句を言うと、カフェは笑いながら逃げていくのであった。


場所が場所じゃなきゃ可愛いと思ったかもしれないが惨状の中の笑顔なので若干サイコっぽい。




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