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不良の俺、異世界で召喚獣になる  作者: アイビス
5章 『魔物の波』
67/72

5話

「―――かっ、はァ……?!」

「目が覚めましたみたいですねぇ……どうですぅ?変な所とかないですぅ?」


 ほんのりと明るい夜空。おそらく、夜が明けようとしているのだろう。

 キョーガはアルマに膝枕された状態で、爽やかな風が吹き抜ける野原に寝転がっていた。


「俺ァ……どうなったんだァ……?」

「一応手加減したんですけどぉ……死んでなくて良かったですよぉ」


 心底ホッとしたように肩を落とし、キョーガの前髪を優しい手付きで弄る。

 ―――俺は……どうなった?

 アルマが『紅眼吸血鬼(ヴァンパイア・ロード)』に変身して、角の色を蒼色に変えた所までは覚えている……だが、それ以降の記憶が所々飛んでいる。

 辛うじて覚えているのは……世界が紅色に染まった事だけだ。


「はぁ……昨日の夜から家に戻っていないから、ご主人様に怒られちゃいますよぉ」

「あァ……そうだなァ……」


 『蒼角』のせいで体がダルいが、文句は言ってられない。

 痛む体を無理に起こし、キョーガは『プロキシニア』の外壁に目を向けた。


「……はァ、帰るかァ……クソッ、リリアナに怒られんのが一番きちィなァ……」

「ですねぇ……まあでも、ボクも一緒ですから大丈夫ですよぉ」

「何が大丈夫なのかわかんねェがァ……まァいいやァ。とりあえず帰ろうぜェ」


 これから怒られる未来を想像しながら、キョーガとアルマは重い足取りで家を目指した。


―――――――――――――――――――――――――


「もう!これで2度目ですよ?!私の言った事、ちゃんとわかってますか?!」

(わり)ィ……」

「ま、まあまあご主人様、ちょっと落ち着いて―――」

「何を言ってるんですかアルマさんもですよ?!」

「……はいぃ……すみませんでしたぁ……」


 帰ってきたキョーガとアルマに、リリアナが怒声を浴びせる。


「まったく……本当にまったくですよ!」


 キョーガたちが怒られている様子が面白いのか、リリアナの後ろでサリスがケラケラと笑っている。

 そんなサリスを睨み―――余所見している事に気づいたのか、リリアナがキョーガの顔を掴んで正面を向かせた。


「キョーガさん! 今は私と話してるんですよ?! どこ見てるんですか?!」

「いやだってサリスがよォ……」

「サリスさんは関係ありません! いいですか?! そもそもキョーガさんは―――」

「【挨拶】 みんな、おはよう」


 機械的な声と共に、マリーが階段から降りてくる。


「【質問】 シャルアーラはいないか?」

「マリーちゃん、おはようございます。シャルアーラさんは……見かけてないですよ?」

「なんだマリー、一緒じゃねェのかァ?」

「【肯定】 いつも通り朝の調節を頼もうと思っていたのだが……」


 ここにいないという事は、『サモンワールド』にでも行っているのだろう。

 その場にいる全員がそう思い、特に気にした様子もない。

 再びリリアナが表情を怒りに変え、キョーガとアルマを叱りつける―――直前、玄関の扉が開けられた。

 そこから現れたのは―――シャルアーラだった。


「【発見】 どこに行っていたんだシャルアーラ。早く当機の調整を―――」

「やあ二日連続で申し訳ない」

「がっ、学院長?!ど、どうされたんですか?!」


 勢いよく椅子から立ち上がり、驚きに目を剥く。


「……シャルゥ、どこに行っていたんだァ?」

「朝空を見ていたであります。そしたらこの雑草使いがやって来たのでありますよ」

「雑草使いとは辛辣な言い方だね。まあ『森精霊(エルフ)』と『地精霊(ドワーフ)』の仲は知っているから、何も言わないけどね」


 おどけたように肩を(すく)めるシエラが、美しく長い薄緑色の髪を揺らしながら室内に足を踏み入れる。


「……おめェが来たって事ァ、まさかァ……」

「うん―――『ギアトニクス』に魔物の大群が迫っているらしい。すぐに出発しよう」

「え、え?も、もう『魔物の波』が?」


 慌てるリリアナとは逆に、キョーガたちは不敵な笑みを浮かべた。

 そんなキョーガたちの表情を見て、シエラ手を掲げ―――


「おいで、『森精霊(エルフ)』のセレーネ」


 カッと、室内が眩い光に包まれる。

 光が晴れた時、そこには美しい金髪の女性が立っていた。


「セレーネ、早速で悪いんだけど、この場にいる全員をこの前行った国に転移させてくれないかな?」

「わかったわ。『空間転移(ムーヴ・ポイント)』」


―――――――――――――――――――――――――


「……はァ……これ便利だなァ」


 眼前の光景が一瞬で切り替わる。

 リリアナの家から、復興途中の『ギアトニクス』の入口へ。

 キョーガが粉々に吹き飛ばした石の門がそのままになっており……前来た時と、そんなに変わったとは思えない。


「……人がいねェなァ……」

「『魔物の波』が来た時は、あの建物に避難するように決めていたらしいからね。私たちも、あそこに行くとしよう」

「チッ……めんどくせェなァ……」


 先導するシエラに続き、キョーガたちが『ギアトニクス』に足を踏み入れる。

 そのまま真っ直ぐ『ギアトニクス』の中央にそびえ立つ建物に向かい―――その道中で、鎧に身を包んだ男たちを見つけた。

 おそらく、『帝国』の人間だろう。キョーガには遠く及ばないが、それでもかなり鍛えられているのがわかる。


「……キョーガさん?行きますよ?」

「あァ……わかってらァ……」


 騎士の男たちと、目が合った。

 そう、目が合ったのはキョーガだ。なのに、男たちはすぐにキョーガから目を外し―――リリアナたちに目を向け、下卑た笑みを浮かべたのだ。

 今は考えても仕方がない―――男たちから目を逸らし、リリアナの後を追いかけた。


「……あはっ♪や〜な感じ〜♪」

「あァ?」

「あの男たちだよっ♪気色悪い視線を向けられて、思わず殺したくなっちゃったよ〜♪」


 どうやらサリスも、男たちの視線を感じていたらしい。おそらく、アルマやマリーも感じただろう。

 ―――敵は『魔物の波』だけではない。

 一層気を引き締めた所で、建物に着いた。

 白色の四角い建物だ。中なら多くの人の気配がする。ここに避難しているのだろう。


「……さて。リリアナ、君はどうする?」

「えっ、え?何がですか?」

「君も共に戦うのか、それともここに残るのか……どちらだい?」


 シエラの言葉に―――リリアナは、悔しそうに口を開いた。


「……私が付いて行っても、足手まといにしかなりませんから……私はここに残ります」


 無理に笑みを浮かべるリリアナ。

 何とも言えない気持ちになったキョーガは―――とりあえず、リリアナの頬を引っ張った。


「んな面すんじゃねェ。おめェは俺らの召喚士なんだァ。堂々としてェ、俺らが帰ってくるのを待ってろよォ」

「キョーガさん……はい。キョーガさんたちを信じて、ここで待ってます」


 ようやく普通に笑ったリリアナの頬から手を離し、キョーガはアルマに目を向けた。


「アルマァ。おめェはリリアナと一緒にいろォ」

「まぁ、別にいいですけどぉ……理由を聞いてもいいですぅ?」

「今は太陽が出てっからァ、おめェの力が制限されるだろうがァ。それにィ―――敵が魔物だけとは限らねェ」

「……『帝国』、ですねぇ?」

「あァ。だからァ……リリアナの事は任せるぞォ」

「わかりましたよぉ」


 リリアナとシエラと共に建物の中に入って行くアルマ―――と、非戦闘員であるはずのシャルアーラが、なかなか中に入ろうとしない。


「シャルゥ?おめェはどうすんだァ?」

「はっ。自分も戦うであります」

「……おめェ、戦えんのかァ?」

「あ、殴る蹴るの戦うではなくて、避難誘導をしたり、まだ避難できていない人を探したり……自分も一応『最上級召喚獣』で、リリアナ殿の召喚獣であります。召喚獣であるキョーガ殿たちが戦うのであれば……自分も、できる事をするであります」


 そこまで言うのなら、キョーガはもう止めはしない。

 グリグリと乱暴にシャルアーラの頭を撫で、キョーガがこの場に残った者たちを見回した。


「……さァ、()ってやろうかァ」

「あは〜♪ま、死なない程度にね〜♪」

「【報告】 『ギアトニクス』周辺に、大量の気配を感知。おそらくモンスターだと推測」

「が、頑張るであります!自分だって、やる時はやるんであります!」

「……シエラの命令だから、仕方がないわね」


 それぞれ言葉を言い残し―――キョーガたちが散開。

 唯一、シャルアーラだけが置いて行かれていたが……それについては誰も何も言わず。

 ―――『ギアトニクス』防衛戦が始まった。


―――――――――――――――――――――――――


「―――エリザベス様。モンスターの群れが『ギアトニクス』周辺に現れたようです」


 避難所の裏。キョーガたちがいた方とは反対側。

 そこに、数十人の騎士と、美しい少女が立っていた。


「そうですか……聞きなさい、『プロキシニア』の勇敢な騎士たちよっ!」


 突然の大声に、騎士たちの視線が少女に集中した。

 全員の視線が集まるのを確認し、少女は大声で続ける。


「私たちの任務は、『魔物の波』から『ギアトニクス』を守る事です!私たち以外にも、『帝国』の騎士たちが来ているようですが……あなたたちが『帝国』の騎士に劣っているとは思いません!実力主義の『帝国』に、私たちの力を見せつけてやりましょう!」

「「「「「「おおっ!」」」」」」


 空気を震わせるほどの返事を聞き、少女は腰に下げていた剣を抜いた。


「さあ、行きましょう!私たちの力を、『帝国』に、『ギアトニクス』に―――世界に知らしめるのですッ!」

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