表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不良の俺、異世界で召喚獣になる  作者: アイビス
4章 禁忌の箱を開けし者
53/72

10話

「だ、ダメですよアバンさん!相手は『禁忌箱(パンドラ)』ですよ?!アバンさんの『サイクロプス』では―――」

「無能は黙ってろ。大人しくそこの女の人と一緒に下がって……いや、尻尾巻いて逃げてろ。()()()()かも知れないからな」


 シッシッと鬱陶(うっとう)しそうに手を振り、アバンがガルドルを睨み付ける。

 リリアナはアバンの事が苦手なのか、大人しく言う事を聞いて、シャーロットと一緒にアバンの背後へと隠れた。


「……よう。久しぶりだな、ガルドル」

「アバン君……ひ、久しぶりだね」

「お前……契約していた『ブルーフェアリー』はどうしたんだ?」

「『ブルーフェアリー』……?……そういえば、ガルドルさん……」


 そう。ガルドルは……『妖精族(フェアリー)』の初級召喚獣である『ブルーフェアリー』と契約していた。

 だが……『禁忌箱(パンドラ)』はいるが、『ブルーフェアリー』の姿は見当たらない。


「ああ、うん……契約破棄したよ」

「……へぇ、あんなに可愛がってたのにか?」

「………………僕が落ちこぼれだって言われてたのは、『ブルーフェアリー』が弱かったからさ。だから、契約破棄するのは、当然だよ」


 『禁忌箱(パンドラ)』の陰に隠れるガルドル―――その眼に、狂気が宿っている。

 穏やかな雰囲気は消え、強者の感覚を知ってしまったその姿は……普段のガルドルとは、似ても似つかない。


「……はん。『神精族(デウスロード)』と契約して、少し頭が狂っちまったのか?」

「……なんだって?」

「力を得るために相棒を手放し、その力で何をするかと思えば……卒業式をメチャクチャにしやがって……なあオイ、僕は密かにキレてるからな?」


 何を言ってるんだ。アバンの『サイクロプス』が、ガルドルの『禁忌箱(パンドラ)』に勝てるわけないだろう。

 舐めたように薄ら笑いを浮かべ、ガルドルがそう言おうと口を開きかけ―――アバンの放つ鬼気を感じて、ガルドルが怯えたように口を閉じる。

 ガルドルの前に立つミーシャも、異様な気配を感じたのか、眉を寄せた。


「……『死霊族(アンデッド)』の気配……それも、中級召喚獣とか上級召喚獣とかじゃない……へー。ただ生意気なだけかと思ってたけど、なかなか良い召喚獣と契約してるじゃーん」

「まあ、でないとこんな大口は叩けないだろ」

「あ、アバン、さん……?」

「まだいたのか無能。もうどうなっても責任は取れないからな?……『命令 戻ってこい』」


 アバンの命令に従い、『サイクロプス』がこちらに走ってくる。

 ズシンズシンと揺れる迷宮……そんな事は無視して、アバンがミーシャと向き合った。


「―――来い。『死霊族(アンデッド)』、『吸血鬼(ヴァンパイア)』のレテイン」


―――――――――――――――――――――――――


「……………」

「んァ?どォしたんだアルマァ?急にしかめっ面になりやがってよォ」


 迷宮を歩いていたアルマが、ピタリと固まった。

 可愛らしい顔が歪み、眉間にしわを寄せ、心底不愉快そうに牙を噛み鳴らす。

 普段の穏やかなアルマからは想像もできない表情だ。


「いえ………………何でもないですよぉ……まさか、そんなはず……ないです、からねぇ……」

「んだよオイアルマァ、なんかあるんなら言っとけェ」

「………………『吸血鬼(ヴァンパイア)』がいるような気がしますぅ……ボクじゃない、『吸血鬼(ヴァンパイア)』の気配が……」

「あァ?……けどよォ、『吸血鬼(ヴァンパイア)』はこの前サリスがぶっ殺しまくっただろォ?」

「キョーガもですよぉ?なんで責任をサリスに(なす)り付けてるんですぅ?」


 鋭い指摘に、キョーガが肩を(すく)め―――すぐに話を戻した。


「んな事ァどうでもいいだろォ……んでェ、その気配は確かなのかァ?」

「どうでもよくないですよぉ?今残されている『吸血鬼(ヴァンパイア)』の数、わかってますぅ?ボクとお父さんとお祖父さんだけなんですよぉ?」

「まァ……そォだなァ」

「はぁ……悪いと思ってるなら、ボクが子孫を残すのに協力してくださいよぉ?家族内で子孫を作るのは、さすがに問題がありますからねぇ」

「はいはいわかったわかったァ……」


 雑に返事をするキョーガが、とんでもない爆弾発言を投下する。

 自分が何を言ったのかを理解していないのか、キョーガが表情を変える事なく『お前との子孫を残す』と宣言した。

 数秒固まったアルマが……ボッと顔を真っ赤に染める。

 パクパクと口を開閉させ、キョーガの腕に抱きつき、興奮したように声を上げた。


「とっ……取った!言質(げんち)取りましたよぉ!」

「騒がしィやつだなァ……ちっとは落ち着けェ。リリアナを探すぞォ」


 アルマの腕を振り払い、素早く歩き始めるキョーガ―――その顔は、ほんの少しだが赤くなっている。どうやら、自分の言った事を理解しているらしい。

 それに気づいたアルマがニターと妖艶に笑い、再びキョーガの腕に抱きついた。


「……『吸血鬼(ヴァンパイア)』がいる気がするっつってたがァ、なんでそんなのわかんだァ?」

「同種族の気配は、何となく感じる事ができるんですよぉ……ほら、この前お父さんがボクの所に来たじゃないですぅ?あれはたぶん、ボクの気配を探って来たんだと思いますぅ……」


 ……なるほど。この前レテインがリリアナの家に来た時、どうやってアルマの存在を知ったんだ?と気になっていたのだが……そういう事か。

 納得したように頷き、キョーガが思い付いたように問い掛けた。


「なァオイ、その気配はどっから感じんだァ?」

「気配、ですぅ?……そこまで遠くはないですけどぉ……まあ、走って5分って感じですぅ」

「……んじゃァ、行くぞォ」

「え……えっ?!い、行くんですぅ?!ボクは嫌ですよぉ!だってこの気配、もしかしたら……」


 掴んだ腕を振り回し、本気で嫌そうに拒絶する。


「……なんでそこまで嫌がるんだァ?」

「だ、だって!この感じ……お父さんかも知れないですよぉ!もうボク、お父さんには会いたくないですぅ!というか、なんで行こうとするんですぅ?!」

「何となくだァ……ちっとでもリリアナがいる可能性があんならァ、そこに行くぜェ」

「……はぁ……ボクとの子どもを作るって言ったそばから、他の女の所に行こうとするなんて……」

「なんかその言い方だとォ、俺が悪者みてェじゃねェかァ?」


 キョーガの問いかけには答えず、すねたように口を尖らせ、咎めるようにキョーガを見つめる。

 無言の圧力に耐えかねたのか、バツが悪そうに舌打ちした。


「………………行くぞォ。とりあえずゥ、リリアナを探さねェとォ」

「まあ、確かにそうですねぇ……はぁ……行きますぅ?」

「あァ……アルマァ、案内してくれやァ」


―――――――――――――――――――――――――


「ま、マリー殿……本当にこっちであってるでありますか……?」

「……【解答】 当機には道を知る手段がない。(ゆえ)に、どの道の先にリリアナたちがいるかはわからない」

「……つまり、迷子って事でありますよね?」

「…………………………………………【肯定】」


 迷宮を歩く、2つの小さな影。

 右腕の大きな銃を構える金髪少女が無表情のまま先導し、その後ろを褐色白髪の少女がイソイソと追いかける。

 と、いきなりマリーが歩みを止めた。

 銃を構えて辺りを見回し……モンスターが近づいてきていると思ったシャルアーラが、慌ててマリーの背後に隠れる。


「……【感知】 こちらに接近する、強者の気配を感知」

「も、モンスターでありますか?!」

「【否定】 モンスターではない……これは……」


 曲がり角に銃口を向けていたマリーが、いきなり銃を下ろした。

 長い金髪を揺らしながら曲がり角へ進み……シャルアーラがその後を追い掛ける。


「―――ガルルルル……!」

「うぎゃああああ?!も、モンス―――あれ?」

「グルルルル……あは~♪よ~やく見つけたよ~♪」


 獣のように低く唸る少女―――サリスだ。

 全身を返り血で染めたその姿は……『地獄番犬(ケルベロス)』と呼ぶに相応(ふさわ)しい。


「ね~♪リリちゃん見てないよね~?」

「見てないであります……あれ?……サリス殿は1人でありますか?アルマ殿やリリアナ殿は……?」

「ん~♪……それが、リリちゃんが消えちゃってね~♪今、探してるの~♪」

「【理解】 なるほど……マスターは?」

「アルちゃんと一緒に行動してるよ~♪……とりあえず、リリちゃんを見つけないとね~♪」


 そう言って、サリスがその場を立ち去ろうとして―――固まった。

 どうしたのか?と、シャルアーラがサリスに近づこうとして……隣に立っているマリーも固まっている事に気づく。

 遠くに眼を向け、何かに気づいたサリスが、地獄の底から響くような声でマリーに問い掛けた。


「……ね~マリーちゃん。この感じ……わかるよね~?」

「【肯定】 ……この感じは、まさか……」

「えっ、え?ど、どうかしたでありますか?自分にも教えてほしいであります」


 ニコニコと笑みを浮かべるサリス……だが、その笑顔は、いつもの明るい笑みではなく、暗く濁ったような黒い笑みだ。

 そんなサリスの姿に悪寒を感じながらも、シャルアーラが勇気を振り絞って問いかけ……直後に返された答えに、呆然とした。


「……アルちゃんのお父さん……レテイン・エクスプロードが現れた……かな」

「エクスプロード……って、『蒼き眼の吸血鬼』でありますか?!え?という事は、アルマ殿は―――」

「歴代最強の『紅眼吸血鬼(ヴァンパイア・ロード)』、アルマクス・エクスプロード……それがアルちゃんだよ~」


 ()かされた事実に、シャルアーラは息を呑んだ。


 ―――歴代最強の『紅眼吸血鬼(ヴァンパイア・ロード)』、アルマクス・エクスプロード。

 その実力と才能は、それまで最強と呼ばれていた『アスラード』という『紅眼吸血鬼(ヴァンパイア・ロード)』すらも凌駕(りょうが)すると言う。

 彼女が残した戦果は、どれもこれも耳を疑うような事ばかりで……なんでも、20年前に『三大竜族(キング・ドラゴニア)』の『厄災竜(ディザスター)』を瀕死に追い込んだり、『死霊族(アンデッド)』を目の(かたき)にしている『精霊族(スピリット)』の『獄炎精霊(サラマンダー)』を単独で撃退したり……その実力は、『巨人族(ギガント)』の王である『始祖巨人(ユミル)』や、『神精族(デウスロード)』ですら恐怖を感じるほどだとか。


 そんなデタラメ(ちゅう)のデタラメな存在……それがアルマクス・エクスプロードという最強の『紅眼吸血鬼(ヴァンパイア・ロード)』。

 その正体が、まさか1つ屋根の下で一緒に暮らしているアルマだったなんて……と、シャルアーラはぶっ倒れそうなほどに驚いていたりする。


「……ん~……?」

「サリス殿?どうかしたでありますか?」

「し~……ちょっと静かにしててね~……」


 黒い笑みを消し、身を低くして通路の先を睨む。

 と、何かに気づいたのか、サリスが先ほどまでの黒い笑みではなく、明るい笑みを浮かべた。


「……あは~♪……見~つけたぁ……♪」

「【感知】 レテインの気配の近くに、リリアナの気配を確認」

「え?……リリアナ殿がどこにいるか、わかったのでありますか?」

「うんっ♪……あの『吸血鬼(ヴァンパイア)』のおかげってのが、ちょ~っとムカつくけどね~♪」


 サリスが手足を地面に付け、マリーがシャルアーラを抱え上げた。


「それじゃ、行こっか♪」

「【了解】」

「は、はっ!了解であります!」


 四足動物のように駆け、サリスが迷宮の奥へと消えていく。

 ボッと加速し、マリーがシャルアーラを抱えたまま、その後を追い掛けた。


 ―――決着まで、残りわずか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ