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不良の俺、異世界で召喚獣になる  作者: アイビス
3章 ボクの居場所
33/72

5話

「あ………………あァ……?」

「あは~♪なっつかし~♪」


 目の前にそびえ立つ、大きな扉。

 アバンの使っていた『サイクロプス』が2匹縦に並べば、てっぺんに届くか、届かないか……そのくらい、大きい。


「ここァ……『サモンワールド』かァ?」

「あはっ♪正確には、『サモンワールド 地獄門前』って感じかな~♪」

「地獄……へェ、地獄ねェ」


 興味深そうに地獄への扉を見上げるキョーガ……と、サリスがどんどん先に進んでいる事に気づき、慌ててその後を追う。


「なんだァ、サリスがこの場所が嫌いなのかァ?」

「ん~……♪嫌いって言うか、ちょっと居心地が悪いって言うか……♪あたし、門番の仕事をすっぽかして召喚獣になってるからさ♪」

「あァ……ま、さぼってたら気まずいわなァ」

「さ、さぼってるわけじゃないけど……♪」


 走るサリスを追いながら、キョーガは辺りの光景を横目で確認する。


 ―――わけがわからん。

 なんで大陸が宙に浮いている?あれはなんだ、浮遊大陸ってやつか?しかも、その大陸の上に建造物が見えるし。

 それに、なんで何もない所から水が流れ落ちて、滝ができている?

 なんだここは?物理常識が通用しないのか?重力はどうなっている?大気圧は?


「キョーちゃん♪一応、『吸血鬼(ヴァンパイア)』の特性について説明しておくねっ♪」

「あァ、頼む」

「えっとね~……こっちの『吸血鬼(ヴァンパイア)』も、太陽が出ている間は力が制限されるよ~♪」

「……だったらァ、太陽が出てる間に終わらせたらァ」

「う~ん♪そういうわけにもいかないんだよねっ♪」


 走りながら、サリスが困ったように眉を寄せる。


「んだよどういう事だァ?」

「アルちゃん以外にも、『紅眼吸血鬼(ヴァンパイア・ロード)』がいるんだよ♪」


 ニコニコと笑うサリス……その笑顔は、少し引きつっているように見せる。


「……つまりィ、太陽が出てもあの『赤い霧』が出るからァ、太陽での弱体化は望めねェって事かァ」

「そゆこと♪しかも、その『紅眼吸血鬼(ヴァンパイア・ロード)』が強いんだよ~♪……それこそ、あたしじゃ相手にならないくらいに……ねっ♪」


 ひたすら整備されていない道を走り―――森の中に入った。

 見た事のない召喚獣がウロウロしているが……観察している暇はない。


「だから、あたしがアルちゃんのお父さんの相手をするっ♪姿を消すあいつは、キョーちゃんには天敵でしょ♪」

「………………チッ……しゃァねェ。だがァ、きっちり殺せよォ?」

「あっはぁ~♪……言われなくても、だよっ♪……その代わり、『紅眼吸血鬼(ヴァンパイア・ロード)』の相手は任せるからねっ♪」

「あァ……踏み潰してェ、ぶっ殺したらァ」


 と、眼前に崖が現れる。

 どうやって越えるのか―――と、キョーガが勢いよく飛び上がった。

 後を追うように、サリスが崖を駆け上がって乗り越え、スピードを殺す事なく走り続ける。


「それと♪『吸血鬼(ヴァンパイア)』は数が多いんだよ♪たぶん、アルちゃんのお父さんを含めて……20匹はいたはず♪」

「多いなァ……なんとかならねェかァ?」

「無理だね♪……アルちゃんのお父さんは、『エクスプロード家』っていう、『死霊族(アンデッド)』の中でもとても大きな権力を持つ家系なの♪だから……『吸血鬼(ヴァンパイア)』は絶対あっちの味方になるよ♪」

「はーめんどくせェなァ……っつーかァ、よく知ってんなァ?」

「あは♪『蒼き眼の吸血鬼』……アルちゃんのお父さんは、なかなか有名だからね~♪」


 今度は海に出た。

 海岸に沿って走り―――と、辺りに召喚獣の姿が見えなくなっている事に気づく。


「……なんか雰囲気(わり)ィなァ」

「……もうここら辺は、『吸血鬼(ヴァンパイア)』の縄張りだからね~♪好き(この)んでこの辺をうろつく召喚獣はいないよ~♪」

「なるほどなァ……いつ襲われてもおかしくねェって事かァ」

「うん♪……キョーちゃん。念のために言っておくよ♪」


 どんどん雰囲気の悪い方向に進み……再び、森に入った。


「……『紅眼吸血鬼(ヴァンパイア・ロード)』は、伝説の『死霊術士』が使役していた召喚獣で、『反逆霊鬼(リベリオン)』と肩を並べて戦ってたの♪」

「はっ、まァた『死霊術士』かよォ」

「そして……史上3回目の『神殺し』を()した種族でもあるから……無理は、しないでね♪」


 『神殺し』。

 それはアルマが教えてくれた言葉で、神と呼ばれる最強の種族、『神精族(デウスロード)』を殺す事を()す。

 つまり―――過去に『神殺し』を()した2匹が、肩を並べて『死霊術士』のために戦っていた2匹が―――今日、激突しようというのだ。


「……上等……!」

「う~ん♪心配は要らなさそうだね♪……そろそろ、『吸血邸』に着くよ♪」


 そう言って、スピードを上げる―――と、辺りに凄まじい轟音が響き渡った。

 直後、森の奥から火の玉が迫り―――


「ちィ―――おらァッ!」


 圧倒的破壊をもたらす拳が、火の玉を正面から打ち消した。

 ―――森の奥に、空を飛ぶ何かが3匹ほどいる事に気づく。


「はっ……出迎えたァご苦労なこったァ」

「あは~♪いきなり『炎魔法』ぶっ(ぱな)してくるなんて、ずいぶんな挨拶だね~♪」


 キョーガの(ひたい)から『紅角』が生え、サリスの口元が獰猛に歪む。


「……()るぞサリスゥ」

「うん♪()っちゃお~♪」


―――――――――――――――――――――――――


「どうした、久しぶりの我が家だぞ?もう少し喜んだらどうだ?」


 冷たい牢獄の中。

 幼い青髪の『吸血鬼(ヴァンパイア)』は……二度と戻りたくなかった場所に帰ってきた。 


「にしても……まさかアルマクスが召喚獣として召喚されるとはな……私も召喚獣としてあちらの世界に召喚されていなかったら……アルマクスを失う所だった」


 うつむくアルマから、返事はない。


「まあどうでも良い。お前は、この『エクスプロード家』を継がなければならない……わかるな?」


 うつむくアルマから、返事はない。


「私は、父上から『紅眼吸血鬼(ヴァンパイア・ロード)』の力を継げなかった……だが、お前は『紅眼吸血鬼(ヴァンパイア・ロード)』に選ばれたのだ」


 うつむくアルマから、返事はない。


「誇れアルマクス。お前は強くなれる。父である私を越える事ができるのだ」


 うつむくアルマから、返事はない。


「それに、お前の『結晶魔法』は強力だ……訓練を積めば、父上すらも追い抜く事ができるだろう」


 うつむくアルマから、返事はない。


「わかるな?お前は期待されているのだ……死んだ妻も、お前が強くなる事を望んでいる」


 うつむくアルマから、返事はない。


「私を越え、父上を越え、そして『死霊族(アンデッド)』の(おさ)となり、この『サモンワールド』を支配する……調子に乗っている、忌まわしき自称神どもを引きずり降ろす事もできる」


 うつむくアルマから、返事はない。


「―――なんじゃ『レテイン』。帰っていたのか」

「父上……はい、先ほど帰ってきました」


 牢獄への扉が開かれ―――そこから、年老いた男性が現れる。


「ふむ……お前の教育は、相変わらず変わっているな」

「はっ……しかし、これはアルマクスのため。そして、今後の『死霊族(アンデッド)』のためなのです」


 爛々と輝く『紅眼』に、赤い紋様が入った黒い翼。そして、アルマやレテインと比べ物にならないほどに鋭い牙。

 『ミロード・エクスプロード』……アルマの祖父、レテインの父にして、『紅眼吸血鬼(ヴァンパイア・ロード)』なる者。


「……相変わらずお前は、『神精族(デウスロード)』に殺された妻の事を……」

「ええ、まあ……私は、『神精族(デウスロード)』を絶対に許せない。この世界の頂点に立って、『神精族(デウスロード)』を殺す……本当は、私が戦いたいのですが……」


 自身を恨むように唇を噛み、拳を震わせる。


「……私は、『紅眼吸血鬼(ヴァンパイア・ロード)』に選ばれませんでした……しかも、私の使える魔法は『幻魔法』……戦闘に向かない弱小魔法です」

「……だから、アルマを戦わせる、と?」

「はっ……それしか、方法がないのです。父上は老いてしまい、私は戦闘に向かない……ならば、アルマクスに全てを任せるしかないのです」

「それは、お前の望みだろう?……アルマの気持ちは、どうなる」

「……………」


 ミロードの言葉に、レテインは黙り込む。

 ……レテインも、わかっているのだ。

 自身の目的のために、実の娘を使うなど……父親として、失格だと。


「……だが、私は……私には、お前が必要なのだ、アルマクス」


 すがるようにアルマを見つめ、言葉を投げ掛ける。


 ―――うつむくアルマから、返事はない。

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