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不良の俺、異世界で召喚獣になる  作者: アイビス
3章 ボクの居場所
30/72

2話

「キョーガっ」

「あァ……んっだよアルマァ?はよ寝ろや成長しねェぞォ?」

「……何が成長しないのかは、あえて聞きませんよぉ」


 深夜。リリアナ宅。

 いつも通り、枕を持ったアルマが、キョーガの部屋にやって来た。


「……んでェ、何しに来たんだァ?言っとくがァ、俺ァまだ寝ないぞォ?」

「あれ、珍しいですぅ。何かしてるんですかぁ?」


 言いながら、アルマがキョーガに近づく。

 そのキョーガの手には……幼い子どもが読むような本があった。


「えっ、と……それ、なんですぅ?」

「……言葉の勉強してんだァ、邪魔すんなァ」

「え?……キョーガ、文字がわからないんですぅ?」


 アルマの問い掛けには返事せず、ただ無言で本を読む。

 そして―――唐突に、パタンと本を閉じた。


「……終わりだァ」

「諦めるんですぅ?まあでも、文字を覚えるなんて何日掛かるか―――」

(ちげ)(ちげ)ェ……覚えたってんだよォ」

「えっ……え?覚えたって……えっと……いつから勉強してるんですぅ?」

「あー……10分前だなァ」


 『10分で文字を覚えた。理解した』と言うキョーガ。

 もちろん、アルマは信じていない。

 というか、キョーガが文字を知らなかった事に驚いている。


「うっしィ……次だなァ」

「……?……それは、何の本ですぅ?」

「知らん。リリアナに借りたァ」


 雑に返事しながら、キョーガが本に目を通す。

 その様子を黙って見ていたが……ふと、何かに気づいたように声を上げた。


「それ……『神精族(デウスロード)』の本……ですぅ?」

「『神精族(デウスロード)』ォ……?んっだそりゃァ?」

「えっとぉ……普通の召喚獣なんて相手にならないほどの実力を持つ、神と呼ばれる種族ですぅ」

「……神ねェ……」


 どこか嬉しそうなキョーガに、嫌な予感を感じる。


「あのっ……キョーガ?その、『神精族(デウスロード)』に喧嘩を売るのはやめた方が良いかとぉ……」

「わかってるわかってるゥ……アルマァ、その『神精族(デウスロード)』ってのについてェ、詳しく教えろやァ」

「見かけたら喧嘩売る気ですねぇ……」


 大きくため息を吐き、ベッドに座る。

 キョーガも本を閉じ、アルマの隣に座った。


「えっと……先ほど言った通り、『神精族(デウスロード)』は神と呼ばれる種族ですぅ。とにかくデタラメに強くて、『サモンワールド』を治めている種族、と言っても過言ではないですぅ」

(つえ)ェっつってもよォ……アルマは勝てねェのかァ?」

「相手によりますよぉ……倒せるとすれば、そうですねぇ……『月神(ツクヨミ)』や『狩猟神(アルテミス)』ぐらいでしょうかぁ……でも、ボクも本気を出さないと勝てませんけどねぇ……」


 指折り数えながら、それでも神に勝てると言うアルマ。

 心強いアルマに笑みを向け―――ふと思い出したように、慌てて続けた。


「あ、あっ、でもでも、『神精族(デウスロード)』を倒したら、他の『神精族(デウスロード)』が復讐に来ますから、手を出さないのが一番ですよぉ」

「あァん?報復に来んのかァ?」

「う~ん……どうやって説明しましょうか……」


 悩むように腕を組み……ゆっくり、1つずつ説明を始める。


「まず、『神精族(デウスロード)』を倒す事を『神殺し』と言うんですよぉ」

「『神殺し』ねェ……」

「『神精族(デウスロード)』はプライドがとても高いので、『神殺し』を恐れてるんですぅ……だから、もしも『神殺し』が起きたら……その負けた『神精族(デウスロード)』もろとも、『神殺し』を()した召喚獣を滅殺するんですよぉ」


 恐れるように話すアルマ……と、今の話の中で、疑問に感じる箇所があった。


「報復する事がわかってるって事ァ……誰か『神殺し』をした事あるんかァ?」

「はいぃ……『神殺し』は、これまでに3回あってますよぉ……1回目は、数百年前に『盾女神(アテナ)』が殺された時。そして、その『盾女神(アテナ)』を殺した者を、『太陽神(ラー)』が殺そうとして、返り討ちにされた時……これで2回なんですよぉ」

「……つまりィ、同じやつが2回も『神殺し』をしたって事かァ」

「その通りですぅ。その召喚獣は、『サモンワールド』じゃない世界……この世界で殺されましたけどぉ」

「へェ……その2回も『神殺し』をした召喚獣ってのァ、何者なんだァ?」


 何気ないキョーガの問い掛けに……悩むように沈黙した後、決心したように答えた。


「……『死霊族(アンデッド)』、『反逆霊鬼(リベリオン)』の『オルヴェルグ』ですぅ」

「『反逆霊鬼(リベリオン)』だとォ……?」

「はいぃ……そのオルヴェルグという『反逆霊鬼(リベリオン)』は、伝説の『死霊術士』が使役していた召喚獣なんですよぉ―――あ、そうですぅ」


 再び思い出したように声を上げ、キョーガの(ひたい)に指を当てた。

 その部分は―――『紅角』が生える部分だ。


「前にキョーガ、魔法が使いたいと言ってましたよね?」

「あァ、んな事言ったなァ……なんだ、使えんのかァ?」

「はい……あ、正確には魔法ではないんですけどぉ……知りたいですぅ?」

勿体振(もったいぶ)んなァはよ話せェ」

「うぅ……キョーガ、せっかちさんですぅ……」


 早く言えと顎をしゃくるキョーガに、残念そうに口を尖らせるアルマ。


「……角の生えた鬼……キョーガや『悪鬼羅刹(ワストデモン)』、それと『鬼夜叉(デモニア)』などの事ですぅ。これらの鬼は、『焼却角砲(ホーン・ファイア)』という『種族能力』が使えるんですよぉ」

「……『焼却角砲(ホーン・ファイア)』ってのも気になるがァ……その『種族能力』ってのァなんだァ?」

「えっとぉ……サリスが『三頭犬の狩猟(ヘル・ハウンド)』という魔法を使うのは知ってますよね?」

「あァ、あの分身する魔法だろォ?あれ便利だよなァ」

「あの魔法は、正確には『種族能力』なんですよぉ……『地獄番犬(ケルベロス)』のみが使える魔法だから、『種族能力』に分類されるんですぅ」


 珍しく、ポカンとした表情を見せるキョーガ。

 つまり……まったく理解できていない、という事だ。


「え、えっと……『金欲竜(ファフニール)』の『破壊の咆哮(デストロイ・クライ)』がありますよね?」

「……あァ」

「あれも『竜族(ドラゴニア)』なら誰でも使える『種族能力』なんですよぉ……多少、出力に差が出ますけどぉ」


 ……無言。

 腕を組み、眉を寄せるキョーガは―――1つの答えに行き着いた。


「……つまりィ、特定の召喚獣のみが使える魔法、もしくは能力がァ『種族能力』って事かァ?」

「はいそうですぅ!で!キョーガたち『角を持つ鬼』は、共通して『焼却角砲(ホーン・ファイア)』という『種族能力』が使えるんですぅ!」


 言っている事が伝わって嬉しいのか、親指を立てて肯定する。


「……でェ、その『焼却角砲(ホーン・ファイア)』ってのはどんなのなんだァ?」

「えっとぉ……ボクは『角を持つ鬼』じゃないから詳しくはわからないですけどぉ……『角の先端に魔力を凝縮して、高熱の球にして発射する』……的な感じだったと思いますぅ」

「詳しいんだなァ……アルマってェ、意外に頭いいんかァ?」

「……昔、色々な召喚獣と手合わせをする機会がたくさんありまして……」


 そう言って、キョーガから視線を逸らす。

 その顔は―――前に見た、スゴく悲しい顔だ。


「ったくよォ……んな顔すんじゃねェ」

「ぁ……え?顔……ですぅ?」


 自覚が無いのか、自分の顔に手を当て首を傾げる。


「……なァおいアルマァ」

「はい?」

「おめェ……過去に何があったァ?」


 直球の質問に、アルマの表情が強張(こわば)る。

 そんなアルマに手を伸ばし……その小さな頭を、優しく撫でた。


「……話したくねェんならァ、話さなくていいんだァ……ただァ、ちっと心配でなァ」

「心配……ですぅ?ボクの事が?」

「……ちっとだけなァ」


 ゴロンとベッドに寝転がり、枕元の装置に魔力を流す。

 よくわからないが、この装置に魔力を流すと、部屋の照明が消える仕組みなのだ。


「えへへ……ボクは大丈夫ですぅ。それに、何かあっても、キョーガが守ってくれますよね?」

「…………………………あァ」

「……えへ、へへへ……えへへへ……」

「んっだよ気色(わり)ィなァ……寝るんだから早く布団入れやァ、(さみ)ィだろォ」


 キョーガは気づいていないが……アルマはしっかり気づいた。

 アルマが部屋に来て、一緒に寝ようとすると文句を言っていたキョーガが……自分から、一緒に寝るよう誘っているのだ。


「……えへへ……失礼しますぅ」

「あァ……」


 キョーガの背中に抱きつき、力を込める。

 ―――離さないと、離れないと、そう態度で表すように。

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