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不良の俺、異世界で召喚獣になる  作者: アイビス
3章 ボクの居場所
29/72

1話

「……あは……♪……なに、この状況……♪」


 扉を開ける茶髪の少女が、室内の光景を見て苦笑を浮かべた。

 それも無理はない。

 中の光景は……少し。いや、かなり異常だ。


「あァ……?どォしたんだよサリスゥ?」

「いや~……♪アルちゃんはともかく、なんでマリーちゃんも一緒にいるのっ♪」


 ベッドに座る黒髪の男。

 その首元に青髪の幼女が抱きついており、男の左腕を金髪の幼女が遠慮がちに握っている。


「なんかよくわかんねェがァ、コイツァ魔力をエネルギーとして活動するんだとよォ……だから俺が魔力を供給してやってんだァ」

「あは~♪……こうやって見たら、2児の父親にしか見えないね~♪」

「あ、ふぅ……キョーガがお父さんって……想像できないですよぉ」

「【同感】 アルマと同意見」


 言いながら、青髪の幼女と金髪の幼女が男を見上げる。

 その幼い視線を受ける男が、舌打ちしながら口を開いた。


「勝手に想像すんじゃねェ……俺が父親なんざァ、想像したら気持ち(わり)ィだろォがァ」

「あはっ♪確かに、その通りだね~♪」

「……てめェに言われるのはァ、なんかスッゲェムカつくなァ?」

「……それじゃ、今日もやろっか♪」


 空いている右手に掴み掛かり、茶髪の少女と男が力比べを始める。


 ―――男の名を、百鬼(なきり) 凶牙(きょうが)

 『死霊族(アンデッド)』にして、最上級召喚獣の『反逆霊鬼(リベリオン)』である。


 青髪幼女の名を、アルマ。

 同じく『死霊族(アンデッド)』で、これまた同じく最上級召喚獣の『吸血鬼(ヴァンパイア)』だ。


 茶髪少女の名を、サリス。

 地獄を守る最上級召喚獣の『地獄番犬(ケルベロス)』で、先の2名と同じく『死霊族(アンデッド)』だ。


 金髪幼女の名を、マリー・ゴールド。

 人工的に造られた種族『機巧族(エクスマキナ)』で、その小さな体の中には、数えられないほどの兵器が内蔵されている。


 そして……この4匹の召喚獣を従える召喚士は―――


「―――皆さん、おはようございますっ!」

「……あァ……おはよォリリアナァ」

「おはようございます、ご主人様っ!」

「おはよ~リリちゃん♪」

「【挨拶】 おはよう、リリアナ」


 夕焼けのようにキレイなオレンジ色の髪。美しく整った顔。無駄な脂肪のない、細めの体。

 リリアナ・ベルガノート……ついこの間まで、学院の仲間から『無能』と呼ばれていた少女だ。


「んでェ?リリアナが俺の部屋に来るたァ珍しいなァ。何かあったんかァ?」

「いえ、マリーちゃんが私の部屋にいなかったので……ここかな、と思いまして」

「……だってよォ。おら、魔力の供給は終わっただろォ?リリアナんとこ行けやァ」

「【拒否】 当機はマスターと一緒にいる」

「……あァ?」


 珍しくキョーガの言葉に反発し、リリアナの視線から隠れるように、マリーが身を隠す。


「おいおい、急にどうしたんだァ?」

「えっ、ま、マリーちゃん……わ、私、怖くないですよー?」

「……【説明】 リリアナは当機を抱き枕にする。鬱陶しい」

「う、鬱陶しいですか?!」


 心底ショックを受けたようなリリアナが、フラフラとマリーに近づく。


「【警告】 それ以上近づけば……これからは、一緒に寝ない」

「そ、そんな……」


 リリアナがピタリと動きを止め、羨ましげにキョーガを見つめる。

 見られるキョーガは、『いや、そんな目を向けられても……』と困った表情だ。


「ったくよォ……これじゃァ俺が子ども好きみてェじゃねェかァ」

「あは~♪……幼女2人を連れてるキョーちゃん、お父さんって言うより不審者だね~♪」

「しばき回すぞてめェ」

「怖~いっ♪」


 握力比べをしていた左手を抜き取り、思ってもないだろうに怖がるような仕草を見せる。


「てめェはいつまでくっついてんだよォ」

「え……ダメ、ですぅ……?」

「暑っ苦しいしィんだよボケがァ……くっつかれんのは寝てる時だけで充分だってのォ」

「……じゃあ今から二度寝しますよぉ……ね?」

「ね?じゃねェ」


 くっつくアルマを引き剥がし、マリーの手を振り払う。

 ジト目で見上げるアルマと、無機質なマリーの視線を受け、心底鬱陶しそうに舌打ちをした。


「てめェ、一応最年長だろォがよォ……だったらァ、相応の態度をしとけよなァ」

「さ、最年長の態度、ですぅ……?」


 悩むような仕草を見せ……アルマが、キョーガに向かって両腕を広げる。

 何事か?と首を傾げるキョーガに、アルマが妖艶に微笑みながら、囁くように言った。


「……おいで、キョーガ。お姉さんが優しく抱き締めて……あ・げ・る―――痛いッ?!」


 身をくねらせながら誘うアルマを、キョーガのチョップが襲った。


「え、えぇ?!でも今、最年長相応の態度って言ったですよぉ?!」

「アホかてめェはァ!誰が色っぽく誘えっつったァ?!」

「痛っ!痛いですよぉ!止めてくださいぃ!」


 涙目で抗議するアルマに、キョーガが連続でチョップを放つ。


「【理解】 マスターは年上より年下が好みだと把握」

「あァ?何言ってんだァ?」

「【説明】 マスターは、精神が幼いアルマに甘い。しかし、年相応の態度のアルマ……年上のアルマには厳しい。つまり、マスターは小さい子が好き―――」


 何か言い掛けるマリーが吹っ飛んだ。


「……コラポンコツゥ……だァれがロリコンだってェ?」


 ―――デコピン。

 怒りにより額から『紅角』が生えたキョーガのデコピンが、マリーを吹き飛ばしていた。


「……【謝罪】 すまない、マスター……しかし、幼い子どもが好きなのであれば、当機を好きにして構わない」


 気合いの入った動作を見せるマリーの姿に、キョーガは深いため息を吐いた。


「……あ、そうでした」

「あァ?……どうかしたかァ?」

「いえ、卒業式が4日後なので、両親に手紙でも書こうかと思いまして」

「……あァ……卒業式ってのがあったなァ……すっかり忘れてたなァ」


 そう、卒業式だ。

 そもそも、学生であるリリアナが、何故平日なのに家にいるのか。

 リリアナが言うには―――座学は学年トップ。授業を受ける態度もトップ。先生からの評価もトップ。一応、卒業できる評価は貰っているから、あとは卒業式に出るだけ……らしい。


「……そォいやァ……なァリリアナァ」

「はい?どうしました?」

「学院にゃァ最上級召喚獣と契約してるやつってェ、あのデントって野郎以外にいるのかァ?」

「はい。『竜族(ドラゴニア)』の『金欲竜(ファフニール)』と契約しているデントさんと……『獣人族(ワービースト)』の『氷結銀狼(フェンニル)』と契約している『ラッセル』さん……()()()()なら、この2人が最上級召喚獣と契約しています」

「……あのアバンってやつが使ってたァ、『巨人族(ギガント)』の『サイクロプス』はァ上級召喚獣だったなァ」

「上級召喚獣と契約している人は……えっと……アバンさんの他に、4人ほどいますよ」


 ……つまり、上級召喚獣と契約しているのは、たったの5人。そして、最上級召喚獣と契約しているのは、それより少ない2人。

 しかも……その2人も、契約数は1匹ずつ。

 という事は―――


「……んじゃァ、最上級召喚獣と契約してる数が一番多いのァ、リリアナって事かァ」

「え?……あ、言われてみれば、確かにそうですね」

「自覚無かったのかよォ……」

「あは~♪……あたしだったら、ぜ~ったいに自慢しに行くけどね~♪」


 壁に寄り掛かるサリスが、ニコニコと笑う。


 ―――確かに、サリスの言いたい事もわかる。

 リリアナは、学院の仲間から『無能』と呼ばれていた。

 そんな弱者が、いきなり最上級召喚獣3匹と契約して、強者になれば―――普通、自慢したくなるだろう。今までバカにしてきたやつらを、見返したくなるだろう。


「そ、そんな……自慢なんて、私が……」


 ―――まあ、リリアナならしないと思うが。


「はっ、相っ変わらず(あめ)ェなァ……だがァ、それで良い……いやァ、『それが良い』だなァ」


 楽し気に笑い、キョーガがベッドから立ち上がった。


「さァてとォ……朝飯でも作っかァ」

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