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不良の俺、異世界で召喚獣になる  作者: アイビス
2章 『機巧族』の暴走
24/72

11話

「それでは……俺はこれで失礼する。『プロキシニア』まで送ってくれて、ありがとう」

「はい、デントさんもお気をつけて」

「ああ、卒業式で会おう」


 馬車から降りるデントが、軽く手を振りながらリリアナたちの元を離れる。

 それを見届け、キョーガは再び馬車を引っ張り始めた。


 ―――『ギアトニクス』を『機巧族(エクスマキナ)』の手から救い、すぐに『プロキシニア』へと戻ってきた。

 収容されていた住民の中には……研究員と王族はいなかった。

 おそらく、殺されたのだろう。

 『ギアトニクス』が国として復活するかどうかはわからないが……それはもう、キョーガたちには関係のない話だ。


「サリスさん、怪我が治って良かったですね」

「あは~♪まさか捕らわれてる住民の中に、治癒魔法が使える『人類族(ウィズダム)』がいたとは驚きだよ~♪」


 ニコニコと笑うサリス……その左腕は、すっかり元通りとなっている。


「……にしたってよォ、本当に帰ってきて良かったんかァ?」

「何がです?」

「おめェはあの国を救ったんだァ……なのにィ、なんの見返りも求めねェなんてよォ」

「別に、見返りが欲しかったわけじゃないですし……それに、あれだけ感謝されれば、私は満足ですよ!」


 キッパリと言いきるリリアナに、キョーガは深くため息を吐いた。

 ―――どこまで甘々なんだ、こいつは。

 1国を危機から救っておいて、なんの見返りも求めないなんて……まあ、リリアナらしいと言えば、リリアナらしいが。


「……そういやァ……あいつ、どォしたかなァ」

「誰がです?」

「……んや、なんもねェ」


 キョーガの呟きを聞いたリリアナが、車両から問いかけるが……それとなく誤魔化し、キョーガは馬車を加速させる。

 あいつ、というのは『指示者(コマンダー)』の事だ。

 (とど)めを刺さず、1機だけ残して帰って来たのは……キョーガが『指示者(コマンダー)』の事を、自分にそっくりだと思ってしまったからだ。

 残酷非道、最強無敵のキョーガにも、相手の事を考える心はある。


 ―――あの『指示者(コマンダー)』は、リリアナと出会えなかった俺なのかも知れない。

 ついそんな事を考えてしまい……出した答えは『あいつも、自分を必要としてくれるやつに出会えば変わる事ができる』だ。

 俺がリリアナと出会って変われたんだ。あいつだって、変われるはず―――と、キョーガらしからぬ考えで。


「んァ……着いたぜェ」

「ありがとうございます、キョーガさん」

「……なんだか、たった1日で大冒険した気分ですよぉ……」


 車両から降りてくるリリアナとアルマが、疲れた様子で家に入る。

 その辺に馬車を置き、キョーガも中に入ろうと―――


「…………?……なんだァ……?」

「……あはっ……♪キョーちゃんも感じるよね……♪」


 まだ馬車の中に残っていたサリスが、遠くを見るキョーガの隣に並ぶ。

 その視線は……キョーガと同じく、遠くを見ている。


「……この感じってェ……」

「あは……♪うん、あたしもそう思うよ~♪」


 何やら、ここを目指して接近してくる気配……それも、生物ではない。

 限りなく生物に近いが……どこか道具のような……


「―――【発見】 『反逆霊鬼(リベリオン)』と『地獄番犬(ケルベロス)』の姿を確認……ここが住居だと把握」


 ふわりとキョーガたちの目の前に着地する、可愛い少女―――否、少女の姿をした機械だ。


「……あは~……♪……なに、今度はこの国を攻め落とす気かな~♪」

「【否定】 当機はすでに負けた身……戦う気はない」

「だったらてめェ、何しに来たんだよォ」


 無表情のまま歩み寄る『指示者(コマンダー)』……キョーガの前で立ち止まり、惚れ惚れするほど美しいお辞儀を見せた。


「【懇願】 当機を()()()()の部下にしてほしい」

「………………いや、何言ってんだおめェ。んな事言われたって―――おい待てェ、今何つったァ」

「【懇請】 当機に居場所はない。それに、『ギアトニクス』にいては、目の(かたき)にされる事、間違いなし」

「んな事聞きてェんじゃねェよォ……いや、というか聞きてェ事しかねェんだがァ」


 心底面倒くさそうに頭を掻き……大きくため息を吐いた。


「……サリスゥ、ちっとコイツと話をしてくるゥ……リリアナとアルマに言っといてくれェ」

「ん~……1人で大丈夫かな~?あたしも付いて行こっか♪」

「俺を舐めてんのかてめェはァ?」


―――――――――――――――――――――――――


「んでェ?何しに来たんだよォ?」

「【説明】 先ほど話した通り。当機をマスターの部下にしてほしい」

「そこからわかんねェんだよォ……てか何だよマスターってェ……」


 リリアナの家の近くにある公園。

 そこに置いてある椅子に、キョーガと『指示者(コマンダー)』が座っている。


「【説明】 当機は、当機より弱い者に従いたくない。よって、当機より強い者……マスターになら、従っても良いと考えている」

「……そもそもォ、なんで俺に従おうとするゥ?」

「【説明】 当機はマスターに興味がある。当機と同じく、人工的に手が加えられたというマスターに」

「んな事言われたってなァ……」

「【提案】 もちろん、ただでとは言わない……当機をマスターの部下にしてくれるのであれば、この体を自由に使って構わない……当機も、頑張ってご奉仕する」


 ふんすっ、と機械らしからぬ気合いの入った動作を見せる。


「……俺ァ別に構わねェがァ……リリアナがどう言うかだなァ」

「【質問】 リリアナとは誰か」

「俺の召喚士だァ……あいつァ正義感が(つえ)ェからなァ、おめェが『機巧族(エクスマキナ)』だって知ればァ、もしかしたら拒否るかもなァ」

「……【理解】 『人類族(ウィズダム)』は当機の事を良く思っていない」


 無表情のまま頷く『指示者(コマンダー)』。

 やはり機械だなと思いながら、キョーガが気になっていた事を聞く。


「なァ、ずっと気になってたんだがァ……おめェは何のために作られたんだァ?」

「【説明】 当機は戦いの為に作られた」

「戦い……だとォ?」

「【質問】 マスターは魔王を知っているか?」

「あァ……って事ァ、おめェは対魔王用に作られたって事かァ?」

「【肯定】 魔王は生きている。そのため、再びこの世界に現れる可能性が高い……当機は捨て駒として作られた」


 ―――なるほど。合理的と言えば合理的だ。

 魔王が再来した時、『機巧族(エクスマキナ)』のように、生死の恐怖が無い者がいれば、なんの躊躇(ためら)いも無く戦えるだろうから。


「【説明続行】 しかし、いくら道具と言えど、自身より弱い者に従いたくはない……それを肯定してくれたのは、他ならぬマスターだ」

「……まァ、そうだなァ」

「【状況】 当機には行く宛がない。さらに、頼れる者もいない……仲間である『機巧族(エクスマキナ)』は、マスターたちによって破壊された」


 長い金髪を弄りながら、『指示者(コマンダー)』がどこか寂しそうに続ける。


「【懇願】 当機は、当機が造られた理由がほしい。誰のために造られたのか、何のために造られたのか」


 ―――誰のために造られたのか。何のために造られたのか。

 『俺ァリリアナの召喚獣だァ。おめェのために戦ってェ、おめェの決めた事にゃァ文句言わねェ』……キョーガは最近になって、自分の存在を認められるようになった。

 この少女も、自分と同じなのだろう。

 勝手に作られて、改造されて……何故、自分は生きているのか、わからないのだろう。

 だがそれは、機械の域を超えている。

 自身に疑問を持ち、考え、行動するなんて……それはまるで―――


「【懇請】 マスターのために造られて、マスターの力になるために造られた……そんな理由がほしい」


 そう言ってキョーガを見上げる『指示者(コマンダー)』の顔は―――人間にしか見えなかった。


―――――――――――――――――――――――――


「えっと……キョーガさん、その方は?」


 不思議そうに『指示者(コマンダー)』を見るリリアナ……その隣では、アルマが『なんでコイツがここに?!』と、口をパクパクさせている。

 どこから話したものかと、キョーガが困ったように頬を掻き……ふと、思い付いたように口を開いた。


「……こいつァ『機巧族(エクスマキナ)』の親玉だァ」

「『機巧族(エクスマキナ)』の親玉……って事は、この子が最初に暴走した『機巧族(エクスマキナ)』なんですか?」

「あァ……また暴走しねェようにィ、俺が監視する事にしたァ」

「えっと……他の『機巧族(エクスマキナ)』はいないんですか?この子だけしか残っていないんですか?」

「【肯定】 他の『機巧族(エクスマキナ)』は、マスターたちによって破壊された」


 ジッと、『指示者(コマンダー)』を見つめるリリアナ。

 その視線を受ける『指示者(コマンダー)』が、気圧(けお)されたように後退(あとずさ)る。


「あー……リリアナァ、おめェの考えもわかるゥ。だがァ、そいつにも理由があって―――」

「……可愛いですね」

「「えっ」」


 少しずつ後退する『指示者(コマンダー)』の肩をガッシリ掴み、リリアナが『指示者(コマンダー)』の顔を正面から覗き込む。


「……スゴく可愛いですっ!」

「ぎっ、【疑問】 当機が怖くないのか?」

「怖い……ですか?怖くはないですよ、キョーガさんが連れて来たんですから!」


 ぎゅ~っと『指示者(コマンダー)』を抱き締めるリリアナが、頬擦りを始める。


 その様子を見て、キョーガが安心したように笑い、アルマとサリスが不安そうにリリアナを見つめていた。

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