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不良の俺、異世界で召喚獣になる  作者: アイビス
2章 『機巧族』の暴走
23/72

10話

「あァ……スッゲェ調子良いなァ……」


 (ひたい)から生えた紅角を触りながら、キョーガがピョンピョンとその場で跳ねる。

 その背中には、黒いローブを着たアルマが、ぐったりとしたまま吸血をしていた。


「【命令】 『殲滅組2班』と『殲滅組3班』が来るまで、破壊されない程度に戦え」

「「【駆除】【掃討】【破壊】」」


 キョーガから距離を取る3機の『機巧族(エクスマキナ)』が、それぞれに備え付けられた銃を構える。


「『裁きの光線(ジャッジメント・レイ)』」

「『神風の突貫(ウィンド・ゲイル)』」

「『魔光の熱線(イグナイツ・レーザー)』」


 大きな銃を構える『機巧族(エクスマキナ)』の銃口に光が。

 右腕が吹き飛んだ『機巧族(エクスマキナ)』の左腕の銃口に風が。

 『指示者(コマンダー)』の左腕に備え付けられた狙撃銃に青白い炎が。

 3機それぞれの遠距離武器に力が収束し―――キョーガたち目掛けて放たれる。


 対するキョーガは……1歩も動かなかった。


 ―――回避は間に合わない。確実に直撃だ。

 白い光が、不可視の風が、青い熱線が……棒立ちのキョーガに襲い掛かる。

 『指示者(コマンダー)』の口に、勝利を確信した笑みが浮かんだ。


「―――へェ。機械も笑うんだなァ?」

「―――ッ?!」


 声を掛けられると同時、『バギンッ!』と鈍い音が響く。

 『指示者(コマンダー)』の振り向いた先には……攻撃を食らったはずのキョーガが、何食わぬ顔で笑っていた。

 その手には、大きな銃を持った『機巧族(エクスマキナ)』が、頭と体を引きちぎられた状態でぶら下がっている。


 ―――【エラー】

 何故、こいつはここにいる?

 【エラー】【エラー】

 先ほどの攻撃を食らっていないのか?避けたのか?いつの間に?回避は不可能だったはずだ。直撃したはずだ。

 【エラー】【エラー】【エラー】

 そもそも、何故、こいつは飛んでいる?

 【エラー】【エラー】【エラー】【エラー】

 『反逆霊鬼(リベリオン)』は飛べないはず……なのに、何故、飛んでいる当機たちと同じ高さにいる?

 【エラー】【エラー】―――【理解】

 『反逆霊鬼(リベリオン)』の背中に、黒い翼が生えている。あれで飛んでいるのか。

 だが何故、『反逆霊鬼(リベリオン)』に翼が―――?


「【駆除】【掃討】【破―――」

「うるせェ、寝てろォ」


 もう1機の『機巧族(エクスマキナ)』が、銃口に風を収束し始めるが―――それより、キョーガが拳を放つ方が速い。

 キョーガの拳を食らった『機巧族(エクスマキナ)』―――その頭部が弾け飛び、頭部を失った体が、力無く地面へと落下する。


「おめェもォ―――落ちなッ!」

「あっ―――ぐぅ?!」


 『指示者(コマンダー)』の頭部に鋭い衝撃が走り―――その威力に、()(すべ)なく落下。

 轟音と共に地面に叩き付けられ―――起き上がると、目の前には凶悪に笑う男の姿。


「……うぅ……キョーガ、重たかったですよぉ……」


 キョーガの背中から、アルマが疲れた顔をひょっこりと覗かせる。

 その姿を見た『指示者(コマンダー)』は理解した。


 ―――あの黒い翼は、『吸血鬼(ヴァンパイア)』の翼だ。背負われていた『吸血鬼(ヴァンパイア)』が『反逆霊鬼(リベリオン)』を持ち上げて飛んでいたのだろう。

 しかし、先ほどまで力を失っていたはずの『吸血鬼(ヴァンパイア)』が、何故、回復をしている―――【理解】 あの『反逆霊鬼(リベリオン)』が血液を供給しているのか。


「さてとォ……どうするんだ親玉ァ?降伏かァ?」


 凶悪に笑う『反逆霊鬼(リベリオン)』を前に、『指示者(コマンダー)』が思考を加速させる。


 ―――『殲滅組2班』と『殲滅組3班』から、返事が来ない。

 つまり―――『地獄番犬(ケルベロス)』に殺られた。

 状況は最悪。残っているのは当機のみ。

 ―――『反逆霊鬼(リベリオン)』と『吸血鬼(ヴァンパイア)』を相手にして、当機が勝てる確率、ほぼ0%……逃げられる確率、およそ2%……【理解】 完敗した。


「【敗北】 ……当機の負けだ。完敗だ」

「さすが機械だァ、物分かりが早くて助かるぜェ」

「【完敗】 早く当機を破壊するがいい」

「……は?何言ってんだてめェ?」

「………………は?」

「いやァ、俺ァ住民を探しに来たんだァ。てめェを壊すつもりなんかサラッサラねェよォ」


 『何言ってんだコイツ?』みたいな視線を向けるキョーガに、『指示者(コマンダー)』の脳内を再び【エラー】が支配する。


「【理解不能】 当機を破壊するために戦ったのではないのか?」

「んなわけねェだろォ、俺ァ住民を探しに来たんだァ……ってかァ、てめェらが手ェ出して来たから反撃してんだよォ。何もしないんだったらこっちだって何もしねェっつーのォ……おらァ、住民がどこにいるか言えやァ」

「……【解答】 町の西部にある教会の地下に捕獲してある」

「西部……地下かァ。行くぞアルマァ」

「はい、ですぅ」


―――――――――――――――――――――――――


「ここかァ?」

「教会……ですね。どうします、キョーガさん?」

「どうするって言われてもなァ……」


 町の西部―――そこに堂々と立つ、美しい建物。

 キョーガたち6人……正確には、5人と1匹は、教会の前に立っていた。


 ―――『指示者(コマンダー)』の情報を聞き、リリアナの所へ戻ったキョーガは……驚愕した。

 デントと『金欲竜(ファフニール)』がいた事にも驚いたが……アルマとサリスが、リリアナの元から離れていた事に一番驚いた。


「……まァ、てめェも大変だったんだろォからァ、あんま文句は言わねェけどよォ」

「あは~♪さっきまでプンプン怒ってたクセに、よくそんな事が言えたね~♪」


 ニコニコと笑うサリス……その左腕には、ローブが巻き付けてある。


 ―――サリスから聞いた話だと、『殲滅組』と呼ばれる『機巧族(エクスマキナ)』6機に襲われたらしい。

 突然の不意打ちに、サリスは左腕を焼かれるも……6機全てを破壊し、リリアナの所へ戻っていたとの事。


「地下にいるなら、中に入って地下室を探した方が良くないですぅ?」

「そうだなァ」

『主よ。我は邪魔になりそうだ……『サモンワールド』に帰るぞ』

「ああ。お疲れファニア」


 『金欲竜(ファフニール)』の体が、淡く輝き始める―――と、その巨体が消えた。

 予想外の出来事に、顔面血塗れのキョーガが驚きに目を見開く。

 そのキョーガの(ひたい)には……『紅角』が無かった。

 どうやら、任意で出したり引っ込めたりできるらしい。


「……行きましょう、キョーガさん」

「あァ……」


 ゆっくりと扉が開かれ……教会の中に入る。


「……ってかよォ、なんでてめェはァここにいるんだァ?」

「ん?ダメなのか?」

「ダメっつーかァ……不思議っつーかァ……」


 当然のように一緒に行動するデントを見て、キョーガがイマイチ納得できない表情を見せる。


「……ん……こっちだね~♪」

「サリスさん、わかるんですか?」

「あは~♪臭いがするんだよ~♪……大量の『人類族(ウィズダム)』の臭いが、ねっ♪」


 すんすんと臭いを嗅ぎながら、サリスが教会内の長椅子に近づく。

 そして、ちらっとキョーガの方を見て、ちょいちょいと手招きした。


「この下だね~♪キョーちゃん、ちょっと持ち上げて~♪」

「チッ……てめェでも持ち上げられっだろォがァ」


 舌打ちしながら長椅子を持ち上げ―――その下に、隠し階段が現れる。


「……俺から行くゥ……おめェらァ後から付いてきなァ」

「キョーガさん……気を付けてくださいね」


 薄暗い通路を進み―――異様な存在感を放つ牢屋に辿り着いた。

 その中には……老若男女、多くの『人類族(ウィズダム)』が収容されている。


「……え……『機巧族(エクスマキナ)』じゃない……?」

「誰だ?新しく捕まった『人類族(ウィズダム)』か?」


 ざわざわと騒がしくなる牢屋……と、リリアナが牢屋に近づいた。

 何かあってはいけない、とキョーガもその隣を歩く。

 そして―――牢屋に向かって、リリアナが力強く言い放った。


「大丈夫ですっ、『機巧族(エクスマキナ)』はこの人たちが倒しました!すぐにそこから出します!―――キョーガさん!」

「あァ?俺の仕事かよォ」

「私には無理ですっ」

「……ま、そォだろォなァ」


 キョーガが鉄格子(てつごうし)を掴み―――歪な音を立てながら、鉄格子がグニャリと曲がる。

 その光景を見ていた住民は……急な出来事に、頭の理解が追い付いていない様子だ。


「……なァに黙ってんだよォ……てめェらァ助かったんだァ。『召喚士 リリアナ』とォ、その召喚獣によってなァ……しっかり喜べェ」


 決して、優しくはない言葉。

 命令的に『喜べ』と言われた住民たちは……ようやく助かった実感が湧いてきたのか、小さな子どもたちが泣き始めた。

 その泣き声を切っ掛けに、大人たちも歓声を上げ始める。


「……チッ……うるせェなァ」

「ありがとう!お兄ちゃん!」

「……はァ?」

「助けてくれて、ありがとう!」


 ―――小さな男の子の、感謝の言葉。

 それを受けたキョーガは……苦笑しながら、男の子の頭をリリアナに向けた。


「……感謝するんならァ、あいつにするんだなァ」

「え?」

「俺ァただの召喚獣……あいつが行くって言ったから付いてきただけだァ……だから、感謝はあいつにしなァ」


 キョーガの周りに集まっていた子どもたちが、一斉にリリアナの元へ駆けていく。


 慣れない感謝の言葉に、リリアナが慌てる様子は……なかなか面白かった。

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