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不良の俺、異世界で召喚獣になる  作者: アイビス
2章 『機巧族』の暴走
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5話

「着いたァ……なんだ、別に普通だなァ?」


 馬車を停め、キョーガが上を見上げる。

 国を囲うようにして建てられている壁……『機械主義国家 ギアトニクス』だ。


「でも、この中で『機巧族(エクスマキナ)』が暴れてるんですよね?」

「あの研究員の話だと、そのはずですよぉ」

「あはっ♪中はど~なってるんだろ~ね♪」


 車両の中から、ローブを着た3人が降りてくる。


「……でもォ、門が閉まってんなァ……どうするゥ?」

「どうするって言われましても……どうしましょう?」

「ぶっ壊していいんなら簡単だがァ……壊していいかァ?」

「普通はダメでしょうけど……非常事態です。やっちゃってくださいキョーガさんっ!」

「任せとけェ」


 石で作られた門……それに向かって、キョーガが腕を振り上げた。


「おッ―――らァッ!」


 まるで壁が爆発したかのような衝撃。

 辺りに壁の破片が飛び散り―――『ギアトニクス』の町並みが(あき)らかになる。

 一軒家はほとんど無く……代わりに、マンションやビルが建ち並んでいる。

 それに、あちこちに電柱のような物が立っており……『プロキシニア』よりも文明が進んでいるというのも納得の町並みだ。


「はー……なるほどなァ、こうなってんのかァ」


 キョロキョロと町を見回すキョーガが―――違和感を感じ、歩みを止めた。


 ―――変だ……人の気配が全くしない。

 そもそも、町を歩いている人がいない。

 この国に、何が起こっている?


 ……そういえば、さっきの『機巧族(エクスマキナ)』……俺たちを捕獲するとか言ってたな。

 捕獲……って事は、この国の国民はどこかにまとめられている、という事か?


「……リリアナァ、ちっと別行動するぞォ」

「え?」

「アルマァ、サリスゥ……リリアナの事、任せたァ」

「どうしたんですキョーガ?何か思い付いたなら、ボクにも教えてくださいよぉ」


 凶悪に笑うキョーガ……フラフラと歩き始め、その姿が見えなくなってしまう。


「どうしたんですかね、キョーガさん……」

「ですですぅ……」

「………………あ……あはっ♪そういう事~♪」


 難しい顔をしていたサリスが、何かを思い付いたように笑みを浮かべた。


「キョーちゃんは1人で行動するんだねっ♪……それじゃアルちゃん、リリちゃんの事任せるね~♪」

「ちょ、ちょっとサリス、何か思い付いたなら教えてくださいよぉ」

「ん~……♪この国の国民を探しに行く、って感じかな~♪それじゃ、ここから別行動ね~♪」


 ヒラヒラと手を振り、サリスがキョーガとは別方向に消えていく。


「……国民を……探す?」

「ボクにはさっぱりですよぉ……ご主人様は、何かわかりますぅ?」

「国民…………国民……?……そういえば、『ギアトニクス』に入ってから一度も国民を見てませんね」

「……言われてみれば、確かにですよぉ……でも、それと別行動と、何が関係するんですぅ?」


 取り残されたリリアナとアルマが、必死で頭を回転させる。

 やがて、リリアナが思い付いたように声を上げた。


「あ、わかりました!あのお2人は、この国の国民を探しに行ったんです!」

「……どういう事ですぅ?」

「先ほど襲ってきた『機巧族(エクスマキナ)』が言ってました、私たちを捕獲するって……つまり、この国にいた人々は、『機巧族(エクスマキナ)』の手によって、どこかに収容されているんですよ!」

「……なるほどですぅ……って事は、キョーガとサリスは単独で国民を探すつもりという事ですぅ?」


 アルマの問い掛けに、リリアナが力強く頷く。


「……でも、ご主人様を守るのは、ボクじゃ力不足ですよぉ?太陽が出てますから、ボクの能力は色々と制限されますし……」

「……つまり?」

「『機巧族(エクスマキナ)』がボクたちを襲わない事を祈りましょう……どこか隠れて、キョーガたちが帰ってくるのを待ちましょぉ……」


 気怠そうにため息を吐き、アルマが建物の陰へ隠れるように進む。

 興味深そうに『ギアトニクス』を眺めてたリリアナも、慌ててその後を追った。


「しかし……キョーガさんにサリスさん、大丈夫ですかね?」

「……大丈夫だと思いますよぉ。あの2人は、スゴくスゴいですですぅ」

「……ですね!」

「―――【感知】 近くに生体反応を確認。総員、見つけ次第すぐに捕獲する事」

「「「「「「【了解】」」」」」」


 ―――すぐ近くから、機械的な音声が聞こえた。

 思わず声を上げそうになるリリアナの口を押さえ、アルマが素早く辺りを見回す。


 ―――まさか、こんなに早く見つかるなんて。

 どうするべきか……ここは無理をしてでも相手を撃退するべきか?

 いや……相手の正確な数がわかっていない今、不用意に手を出すのは、自分たちの隠れ場所を教えてしまうのと同じ。

 となると……ヘタに動けな―――


「【発見】 『人類族(ウィズダム)』の姿を確認。すぐに捕獲を―――」

「『血結晶技巧(ブラッディ・アーツ)』ッ!『紅槍(スピア)』ッ!」


 機械的な報告を(おこな)う『機巧族(エクスマキナ)』に向け、紅色の槍が放たれる。

 風すらも置き去りにする速さ―――投げられた槍が、『機巧族(エクスマキナ)』の胸部を貫いた。


「……遅かったですぅ……!」

「ど、どうしましょうアルマさん?!」

「【発見】 『人類族(ウィズダム)』1人と……先ほどの報告にあった『吸血鬼(ヴァンパイア)』と遭遇。攻撃を開始する」

「「「「「『戦闘体(バトルフォーム)』、展開」」」」」


 合計6機の『機巧族(エクスマキナ)』が、アルマたちを取り囲む。


 ―――さて、どうする?

 逃げるか?いや、『機巧族(こいつら)』が簡単に逃がしてくれるとは思えない。

 ならば、戦うか?だが、今はまだ太陽が出ている……ボクの力は、夜時の5分の1程度しか出せない。

 ……一応、撃退する方法は、()()()()()()

 だが……せっかく貯めてきた『血力(けつりょく)』を、今ここで使うのか?


「【報告】 『戦闘組4班』から『指示者(コマンダー)』へ。先ほどの報告にあった『吸血鬼(ヴァンパイア)』と遭遇。至急、増援を求む」


 リーダーらしき機体から聞こえた声に、アルマの顔が絶望に染まる。


 ―――増援、だって?

 そんな、これ以上敵を増やされたら、ボクじゃ対処できない……!

 …………………………もう、使うしかないのか?

 あの()()()()()力を……毎日少しずつ貯めてきた『血力』を……今、ここで?

 ……迷ってる暇なんか……ない。

 使うしか……ない。


「……『血力解―――」

『―――『破壊の咆哮(デストロイ・クライ)』』


 ―――それは、まるで聖なる光。

 極太のレーザーがアルマの近くに放たれ―――そこにいた『機巧族(エクスマキナ)』3機を跡形も無く焼き尽くし、爆風でアルマたちを吹き飛ばす。 


「……【理解】 敵側の増援を確認。おそらく『竜族(ドラゴニア)』。さらに、今の威力の光線……『三大竜族(キング・ドラゴニア)』の1匹と仮定……情報処理―――」


 空を飛ぶ大きな影……間違いない、あれは―――


「―――【断定】 『三大竜族(キング・ドラゴニア)』の一角、『金欲竜(ファフニール)』と確定」


 と、空を飛んでいた『金欲竜(ファフニール)』が急降下。

 散開する『機巧族(エクスマキナ)』には目もくれないで、リリアナとアルマの近くに降り立った。


「……よう、昨日ぶりだな、リリアナ」

「で、デントさん?!」


 竜の背から降りてきたのは……昨日会った、デントだ。

 予想外の人物の出現に、リリアナが驚きに目を見開いている。


「な、なんで『ギアトニクス』に?デントさんは、何も知らないはずじゃ……?」

「昨日の白衣が言ってたろ、『『ギアトニクス』を救ってくれ』って……だから来てみたんだが、なかなかスゴい事になっているな……ファニア!」

『御意』


 散開した『機巧族(エクスマキナ)』―――その1匹に向け、『金欲竜(ファフニール)』が飛び掛かった。

 そして、兵器とも言える剛爪を構え、近くにいた『機巧族(エクスマキナ)』に向かって振るが―――難なく避けられる。

 『金欲竜(ファフニール)』の一撃は空を斬った―――はずだった。


『沈め―――『追撃の風爪(エア・クロウ)』』


 後ろに大きく飛び、『金欲竜(ファフニール)』の剛爪を避けたはずの『機巧族(エクスマキナ)』―――その体が、爪に引き裂かれたようにバラバラとなった。

 いや、『機巧族(エクスマキナ)』だけでない。

 その背後にあったビルやマンションにも、『機巧族(エクスマキナ)』と同じく、爪に引き裂かれたような爪跡が残っている。


「斬撃を飛ばす魔法、『追撃の風爪(エア・クロウ)』……本当に、呆れるほど強いですねぇ……」

『……妙な気配だ……貴様、まさか『吸血鬼(ヴァンパイア)』か?』

「そうですよぉ。そこまで名の知れていない、弱々しい『吸血鬼(ヴァンパイア)』ですぅ」


 そんな事を言うアルマが、フードを深く被る。

 まるで、『顔を見られたくない』という感じだ。

 その事に気づいた、リリアナが傾げる―――と、気づけば『機巧族(エクスマキナ)』の数が倍以上に増えている。

 先ほど言っていた、増援だろう。


『ふん……『吸血鬼(ヴァンパイア)』、我が主を任せる』

「はいぃ……その代わり、『機巧族(エクスマキナ)』は任せるですですぅ」


―――――――――――――――――――――――――


「ん~♪……なっるほっどね~♪」


 ニコニコと、不穏な町を歩くには相応(ふさわ)しくない笑みを浮かべながら、サリスが足下に転がる残骸に目を向ける。

 ―――『機巧族(エクスマキナ)』だ。しかも、バラバラに引き裂かれた状態の。

 驚くべきは、その数だ。

 1機や2機ではない……残骸(スクラップ)となった『機巧族(エクスマキナ)』、頭の数を見る限り、およそ10機以上。


「……ま、このくらいなら、あたしでも大丈夫だね~♪」


 獰猛に光る瞳が、遠くに浮かぶ『機巧族(エクスマキナ)』を捉える。


「よ~し♪国民を探すのはキョーちゃんに任せて、あたしはいっぱい暴れちゃお~♪―――『三頭犬の狩猟(ヘル・ハウンド)』♪」


 サリスの足下に魔法陣が現れ―――そこから、2人のサリスが現れる。


「それじゃ……楽しい楽しい狩りの時間だよっ♪」

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