表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不良の俺、異世界で召喚獣になる  作者: アイビス
1章 不良の俺、召喚獣になる
10/72

番外編

 ―――『吸血鬼(ヴァンパイア)』。

 夜の空を飛び回り、生者の血を吸う種族。

 血を吸えば吸うほど力が増し、血を限界まで吸った状態だと、全ての最上位召喚獣の中で、5本指に入る力を発揮する。

 また、『魔法の才』を持つ者が多く、近距離も遠距離も戦える召喚獣。


「……この子は……?!」

「血の色の『紅眼』……間違いない。『紅眼吸血鬼(ヴァンパイアロード)』だ」


 その『吸血鬼(ヴァンパイア)』の中に、『紅い眼』をした者が産まれる事がある。


 ―――『紅眼吸血鬼(ヴァンパイアロード)』……最強と呼ばれる『吸血鬼(ヴァンパイア)』だ。

 最強と呼ばれる理由は、大きく分けて3つある。


 1つは、普通の『吸血鬼(ヴァンパイア)』の3倍吸血を(おこな)える事。

 血を吸えば吸うほど強くなる『吸血鬼(ヴァンパイア)』にとって、血が多く吸える=力なのだ。


 2つは、長寿な事。

 普通の『吸血鬼(ヴァンパイア)』は人間と同じ程度の寿命しか無いが……『紅眼吸血鬼(ヴァンパイアロード)』は200年以上生きると言われている。


 3つは―――特殊な『魔法の才』を持つ事。

 炎を出すとか、雷を発生させるなどヤワなものではない……今ここに産まれた『紅眼吸血鬼(ヴァンパイアロード)』で例えるならば―――魔法陣から『赤黒い水晶』を発生するという魔法だ。


「……XXX……お前は期待されている……わかるな?」

「ぼっ、ボクがです……?」

「そうだ……お前は『紅眼吸血鬼(ヴァンパイアロード)』に選ばれた。その力があれば……『吸血鬼(ヴァンパイア)』の王になれる」

「王……ですか?」


 幼い『紅眼吸血鬼(ヴァンパイアロード)』は、父親の言っている事がわからなかった。

 だが―――父親は勘違いをしていた。

 それは……この『紅眼吸血鬼(ヴァンパイアロード)』は優しすぎる、という事だった。




「………………XXX……何をしている?早く(とど)めを刺せ」

「お父さん……で、でも……もう勝負は付きましたよぉ……?これ以上攻撃しても―――っ?!」


 喋っていた幼い『紅眼吸血鬼(ヴァンパイアロード)』の頬を、父親が叩いた。


「優しさなど、『紅眼吸血鬼(ヴァンパイアロード)』には必要ない……必要なのは容赦の無さと、残忍性だけだ……わかったな、XXX?」

「………………はい、ですぅ……」




 ―――少女は、優しすぎた。

 その性格を直そうとした父は、少女を牢獄に閉じ込め、性格を変えようとした。


「……………」


 ―――何故?

 何が悪いの?

 ボクが悪かったの?

 ボクが何をしたの?

 お父さんは、なんでボクを閉じ込めるの?

 お父さんは、なんでボクを鍛えるの?

 ボクが『紅眼吸血鬼(ヴァンパイアロード)』として生まれたのが悪かったの?

 他の『吸血鬼(ヴァンパイア)』より血を吸うのが悪かったの?

 年を取っても幼い事が悪かったの?

 優しい事が罪なの?

 優しいって何なの?

 悪い事なの?

 ボクがもっと残酷な性格だったら……ボクがもっと他人に容赦無く攻撃してればよかったの?


 ―――ボクは、こんな力なんか望んでない。

 もっと普通に生まれたかった。

 もっと笑って過ごしたかった。

 夜の空を飛び回りたかった。

 友だちを作りたかった。

 普通の『吸血鬼(ヴァンパイア)』みたいに過ごしたかった。




 そんなある日、少女の足下に魔法陣が現れた。

 暗い牢獄の中、異様に輝く魔法陣が、少女には希望のように見えた。

 ―――その召喚された先で、まさか召喚士から帰りの魔法陣を破壊され、さらには契約も結んでもらえないとは思っていなかったが。


―――――――――――――――――――――――――


「キョーガっ!」

「チッ……朝っぱらからうるせェロリ吸血鬼だなァ……吸血だろォ?ちゃっちゃと終わらせよォぜェ」

「わーい!」


 キョーガに飛び付くアルマが、嬉々として吸血を始める。


 ―――夜の空を、飛び回れなくてもいい。

 『吸血鬼(ヴァンパイア)』の友だちがいなくてもいい。

 『紅眼吸血鬼(ヴァンパイアロード)』として、特別扱いされなくていい。


「あふぅ……美味しいですぅ……」

「あんまり吸い過ぎんなよォ?もォ貧血にゃァなりたくねェからなァ」

「わかってまふよぉ……んぁ、美味ひぃ……」

「本当にわかってんのかァ?」


 ため息を吐くキョーガ……と、部屋の扉が開けられた。

 そこから現れたのは、橙髪の女の子だ。


「おはようございます!キョーガさん、アルマさん!」

「あァ、おはよォリリアナァ」

「おはようございますご主人様っ!」


 幼い『紅眼吸血鬼(ヴァンパイアロード)』は心から思う。

 ―――この2人さえいれば、あとは何も望まない、と。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ