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不良の俺、異世界で召喚獣になる  作者: アイビス
1章 不良の俺、召喚獣になる
1/72

1話

「……こんなもんかァ……(よえ)ェなてめェら」

「ぶっ……ぐ……!」

「腕が……腕、がぁぁぁ……!」

「こい、つ……まさか『鬼神』……?!」


 深夜、真っ暗な路地裏。

 そこに、1人の男が立っていた。


「おォ、俺の事知ってんのかァ……ならなんで喧嘩吹っ掛けてきてんだよォ。勝てねェってわかってんだろォ?」


 男の足下―――そこには、呻き声を上げる男が5人ほど転がっていた。

 腕が曲がっている者もいれば、口から血を吐く者もいる。さらにはぐったりして動かない者もいた。


「はァ……てめェらが仕掛けてきたのに、わけねェなァ」


 拳を血に濡らし、退屈そうなため息を吐く。


「………………俺、なんのために生きてんだかなァ……」


 寂しそうに呟く男―――と、突然辺りが輝き始める。


「チッ……おい、なんかしたかァ?」


 グルンと振り向き、ダルそうに男が問い掛ける。

 地面に倒れる男たちは、俺たちじゃないと手を振る。

 そうしている間にも、輝きは増して―――


―――――――――――――――――――――――――


「……あァ……?」


 ゴウゴウと吹き抜ける風。

 見知らぬ大地……そこに、男は立っていた。


「チッ……スマホは―――」

「……できちゃいました……」


 と、男の背後から綺麗な声が聞こえた。

 眼を細め、警戒心と共に振り向く。

 ―――そこには、橙髪の美少女が、男に手を差し出していた。

 怪訝に思いながらも、男は少女の手を握り、握手を交わした。


「んでェ……てめェはァ?……ここはどこだァ?」

「あ、えっと……急に呼び出してすみません!私、召喚士の『リリアナ・ベルガノート』と言います!……それで……えっと……あなたが伝説の『反逆霊鬼(リベリオン)』ですか?」

「……はァ?」


 当然、男は困惑する。

 さっきまで深夜の路地裏にいたはずなのに、次の瞬間には見知らぬ大地に立っており、さらにはコスプレ少女が奇怪な言葉を言ったのだから。


「いや……そりゃ人違いだろォ。俺ァ『百鬼(なきり) 凶牙(きょうが)』だァ。そのリベなんちゃらってのじゃねェよォ」

「……でも……私は確かに『反逆霊鬼(リベリオン)』を……」


 首を傾げ、ブツブツと何かを呟き始めるリリアナ。

 それを見た凶牙の考えは1つだ。

 ―――関わったらヤバイ。

 そう考えると、次の行動は早かった。

 すぐにリリアナに背中を向け、平和な草原を歩き出す。


「あ、ちょっと待ってください!」

「……………」

「待って!止まって!もう、『命令 止まれ』!」


 リリアナが命令口調になった―――瞬間。

 凶牙の体が、金縛りにあったように動かなくなった。


「なっ……あァ……?!」

「あ……す、すみません!すぐに解きますから!『命令解除』!」


 ふっと、凶牙の体から不可視の力が消え去る。

 ―――次の瞬間、目に見えない早さで距離を詰め、リリアナを片手で持ち上げていた。


「あ、ふっ……?!」

「おいコラてめェ、今俺に何しやがったァ?返答によっちゃァ……喉握り潰して殺すぞ」


 リリアナを片手で持ち上げたまま、威圧的に問い掛ける。


「あふっ、あふぅ……!」


 『ギブ!ギブ!』といわんばかりに、リリアナが凶牙の手を連続して叩く。

 舌打ちしながら手を放し、咳き込むリリアナを冷たい視線で見下ろした。


「俺の問いに答えろォ……今俺に何をしたァ?」

「はぁ……はぁ……え、えっと―――」


 リリアナ(いわ)く、こういう事らしい。

 ―――ここは『アナザー』という世界。

 この世界には『騎士』と『魔術士』と『召喚士』が存在しており、リリアナは『召喚士』らしいのだ。

 ……だが、リリアナは『無能』と呼ばれるほど『召喚士』の才能がなかった。

 下級の召喚獣も召喚できない無能……ヤケになったリリアナが、最上級の『反逆霊鬼(リベリオン)』の召喚を(おこな)ったら―――


「あなたが現れたんです」

「…………………………はァ?」


 何1つ理解できない凶牙は、本日何度目になるかわからないため息を吐いた。

 先ほどの金縛りは、リリアナと召喚獣としての契約を結んだからとの事。

 もちろん、凶牙は契約なんて結んだ覚えはない。


「それはさっきの握手です!あれで契約が完了しました!」

「そんなので契約した事になんのかよォ……」


 これからどうするか、凶牙は静かに考える。

 ―――凶牙には両親はいない。

 さらには、この『最強体質』のせいで友人だっていなかった。

 それに……凶牙の『最強体質』は、使い方は誤れば人を殺しかねない。

 ()まる(ところ)―――あの世界に、凶牙の居場所はないのだ。


「……わっけわかんねェけどォ……お前に付いて行くしかないだろォなァ……」

「えっと……それで、あなたの事は、なんと呼べば良いでしょうか?」

「キョーガでいい……」

「キョーガさんですね!あ、私の事は、リリアナと呼んでください!」


 そう言ってリリアナは、心底嬉しそうな笑みを見せた。

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