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第三話 前世への未練

「あ~おて~?ぐれいしゃ?」


通訳「あの~起きて?グレイさん?」

そんな言葉を投げ掛けながらグレイの頬をぺちぺちと叩いた。

あ、叩いたって言ってもそんな強くないよ?赤ちゃんの腕力には限度があるしな。

どれだけ言葉を理解していてもやはり話すことは難しいようだ。

傍から見ると意味のない喃語(なんご)を発しているようにしか見えないだろう。

だめだ、起きる気配がない…

呼吸はしているので死んでいるわけではない、多分軽い気絶だろう。

後輩くんはよく過労で軽い気絶をしていたからな、危ないか危なくないかはわかるんだ。


俺は…ほんとに死んだんだよな。

現実味のない感覚と、これまで俺のものではない小さな体。

後輩くん、どうしてるかな。

あいつの惚気、まだ聞いてないってのに…

あいつの面倒見られるのは俺くらいだぜ?

仕事だって、辛いときもあったけど案外好きだった。

親になんて、ここ何年も会ってない、死ぬくらいならちゃんと親孝行、しとくべきだったな…

前世を思い出していくにつれて、俺の目から涙が流れる。

ラノベの主人公たちはなんであんなにあっさりできんだよ。

俺はもっと生きたかった。

27歳だった俺はこれから先、結婚とか子供とか、幸せな未来だってあったかもしれない。

神に願ったところで何か変えてくれるわけもない、神が世界を作っているのだとしたら、なぜ俺を死なせたんだよ…それも何か意味があるってのか?

ぼろぼろと溢れ出る涙。

小さな手では綺麗に拭うことすらできない。


「うっ…うぅ…」


俺はこぼれる涙を止めようするが、よけい酷くなった。

もう、声を我慢することも出来ない。


「よしよし」


声とともに、グレイの手は俺の頭に触れ、優しく撫で始める。

ゆっくりと顔を上げると、少し悲しそうな優しい笑みをしたグレイがいた。


「うっ…うわぁあああん」


我慢していた最後の糸がぷつんと切れたように俺は声を上げながら大号泣し始める。

そんな俺をグレイは優しく抱きしめ、俺が泣き止むまで背中をさすり続けてくれた。

泣いた後には、貯めていた気持ちが涙とともに一気に流れていき、今までの気持ちがだいぶ軽くなった気がした。

こんなに泣いたのはいつぶりだろう、辛いときも「もういい年だから」と自分に言い聞かせて我慢していた。

グレイはそんないままでの俺の我慢を綺麗さっぱりなくしてしまったのだ。

ほんとにすごい人だと思った。

再び俺の頭を撫で始めたグレイはゆっくりと口を開いた。


「少し、私の話を聞いてもらおうかな」


そう言ったグレイの手は、とても温かく、とても冷たかった。

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