思っていたのと違うようですが、温泉行きます
「いいな…俺も温泉行きたい…。」
思わずアサを見た。それはマキア(クール美人)と一緒にお風呂に入りたいという意味か!?
立派な男性体のくせになにを…と、思ったが違うようだ。
「無理でしょ。アサの行ける範囲じゃないもの。」
「温泉いいなぁ。ここ、つまらないんだよ。」
「え、もしかしてアサは移動できないのですか?」
そういえばそうだ。
果物を食べるというなら、わざわざ届けてもらわなくとも自分で森に採集しに行ってもいいし、ダルに伝言を頼んでいたのも自分で村なり町なりに行けばいい。
だって、空間魔法があるんだから。移動も収納もお手の物のはずだ。
それができないということは、異世界人が入れる(入っていい)魔族側の地域が限られているということなのか…それにしては、マキアはアサがいけない範囲の温泉に誘ってくれたが。
「そうなんだ。俺の契約が、”戦争中、上官の指示なく交戦地および交戦予想地域から出ない”っていうのだから…まぁ、ちょっとなら出られるけど頭が痛くなるから、基本はこの辺りから出ないんだよ。孫悟空のあの頭の輪みたいなイメージの痛みなんだけど、長時間この地域から出るのは無理だね!
ちなみに契約違反しようとすると痛くなる個所は、俺は頭だったけど、他の知り合いは胸が痛いって言ってたから人によって違うかもしれないな。」
なるほど。動けないのはアサの理由ということか。
そうなると自分の左手に刻まれた魔法陣が気になってくる。これは、どんな契約になっているのだろう。
「そうなんですね。私は自分の契約がわからないのですが、アサの鑑定で見れましたか?」
「レイの契約?視たよ。”この世界に居ること”だってさ。死ぬまで契約違反にならないから安心だな!」
「そうでしたか。教えていただき、ありがとうございます。」
よかった。つまり自由に行動して問題ないというだな。
正直、”この世界に居ること”に同意した記憶はないが、無敵っぽいスキルあるし美人に温泉にも誘われているし…今聞かれたら同意するしかないだろう。
「じゃあ、レイはこのまま魔族側に遊びに行くことにしたのか?」
はい!…と、答えたいのだがいいのだろうか。
戦争中とかそういう話しで、自分には無敵っぽいスキルがあるわけなんだが。
「人族のことは気にしなくていい。俺たちが警戒しているし、レイが今回の召喚された異世界人だから、多分あと半年はおとなしくしているだろうしな。」
「そうそう。攻撃型の異世界人がくるまで侵攻して来ないとよ。俺たちを戦争に使うのやめろよって感じだよな。」
「なるほど。では、魔族側を案内していただけると嬉しいです。」
もちろん、マキアの方を向いて言う。アサは動けないし、ダルでもいいけど、やっぱり温泉の約束をしたからな!
「よろこんで。温泉と、果物も気になっていたみたいだから、道中探しましょう。」
「ちょうど、マキアと俺が入れ替わるところだったんだ。案内してもらうといいよ。近くの里にサイトがいるから会ってみるのもいいかもな。」
「サイトですか。」
「斎藤じゃないよ。俺も始め斎藤だと思って日本人か聞いたけど、全然違う魔法の世界からの異世界人だったよ。最狂の超物理攻撃特化だけど、会って話したら面白いと思うよ。魔族側についている異世界人は、俺とサイトとレイだけだから。」
「そうですか。楽しみです。」
最強?いや、あのアサのにやり具合としては最恐か?魔法の世界からきて超物理攻撃特化ってどうしてそうなったのか気になる。会ってのお楽しみにしておこうと思う。
「レイ、私と一緒に行きましょうか。」
「他に質問あれば説明するけど…」
「別にいいわ。私が説明するし。問題ないでしょ?」
アサの声を遮ってマキアが答えた。同じ元日本人の感覚として聞きたいことが…今は思い浮かばないか。
何か聞きたいことがあれば、ここで登録した転移でまた来ればいいな。
「はい。問題ないです。」
「でしょう?」
マキアがにっこり笑う。やっぱり美人はいい。笑うとかわいい。
「わかったよ!レイ、空間魔法の転移個所ここに一つ登録しといて。何かあったらでもいいし、とにかく…また遊びに来いよ!」
「わかりました。」
「アサ、送れるところまで転移してくれるわね?」
「わかってるよ。」
みんなが立ち上がったので、それについて立つとマキアに手を握られた。アサも近づいてきてマキアと反対の手を握られた。
「じゃ、またな。」
「はい。また。」
これでダルとお別れらしい。にっこり微笑みダルに別れをいう。
そういえば、警戒任務中だったか。入り口を見ると、さっきいたはずのマントたちはいなくなっていた。
※
一瞬で森の中の景色になった。アサが転移したのだろう。
「ここは魔族側に入って少しのところだよ。レイ、ほんとにまた来いよ?あとマキア。次来るときはそれを忘れるなよ?」
アサの視線を追うと、マキアと繋いでいる手の反対には桃を持っていた。いつの間に…。
「わかっているから早く帰りなさい。」
「またな、レイ。」
「また。」
名残惜し気に繋いでいた手を放してから、最後に小さく「マキアとの温泉いいな」とつぶやいて、アサの姿が消えた。
帰ったのだと思うが、思わずニヤリ笑いをしてしまったのを見られただろうか。やっぱり美人と温泉に行くとなったら羨ましいだろう。性別を選べるとか最強だな!
「レイ?これ、あげるわ。さっき食べようとしていたでしょ。」
ふと見るといつの間にか繋いでいた手が離れていて、半分になった桃が差し出された。
受け取って見てみるが、桃って真ん中に種があったと思うが見当たらず、全面果肉で食べやすそうだ。
「そのまま食べるのよ。」
マキアが残りの半分をお手本のように食べて見せた。皮ごと食べられるようだ。触ってみると表面がサラサラしていて桃特有の細かい毛も無い。
思い切って皮ごと食べてみる。
「アサとレイの前の世界と同じ味なんでしょう?アサも私も、桃が好きなの。」
「美味しいですね。私も好きです。先ほどの青いいちごも好きですが。」
「そうなの。アサは青イチゴが食べずらそうにしているけど、そこは違うのね。」
なるほど。アサが桃を好きで、自分も先ほど食べようとしていたから、同郷で好物も同じかもしれないと思って転移前に桃を持ってきてくれたようだ。
マキアってアサと話している時に、ちょっとツンな感じがしたが、ツンデレなのだろうか。
それとも、ただ自分と一緒に早く出かけたいと思ってくれていただけなのか。そうなら嬉しいけど。
そういえば、桃と青イチゴか。翻訳がかかっているのかもしれないが、言語の壁が薄くて助かる。
「今からサイトのところに行く?それとも、先に温泉にする?」
わざわざ聞かれるというこは、場所が離れているのかもしれない。
そうでなくても、気持ちはすでに決まっている。
「温泉に行きたいです。」
「そうよね。サイトは後でいいわ。行きましょうか。」
「はい。」
何度かうなづいてから歩き始めたマキアに並んで歩き始める。どうやら、正解だったようだ。
マキアとの温泉楽しみだな。今度アサに会う時は自慢してやろうと思う。




