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聞いていた話と違うようですが、運をもらって転生して良かったです

 主が起きたらしい。

 契約変更を求めて主を待ちだしてから…というか、転生してからとほぼ誤差のような日数だな。

 ともかく、あれから千年という事は無く、百年という事も無く、おおよそ60年くらいの後だった。


 あの後、開拓大地の方の開拓を勧めたりとかいろいろあったけど、とりあえずこちら側の種族も異世界人も、知り合いは皆健全だ。自分を含めて、外見年齢も初めて会った時から変わりない。


「マキア、レイ、行くよー?」

「はい。大丈夫です。」

「主に会えるなんて、楽しみだわ。」

「そうですね。」


 メイの転移で館の前に着くと、いつもなら念話で聞いた館に住む4人の中の誰かが(特にルルとリリが)飛び出してくるのだが、今日は違った。


「みんな待ってるぞ!」

「サリアーノ!どうしたのですか?」

「なんか、主から離れたくないらしい。さっき俺がここに来て、主が起きてたのに気付いたんだ。」

「なるほど。」


 いや、どういうことか分からん。

 館に住み込む4人が主の起床に気付かないで、先にサリアーノが気付くなんてことはあるのか?

 とりあえず、いつもの応接室に向かって飛ぶサリアーノに付いて行く。

 知ったかぶりをしてみたが、思念を読んで分かってないことに気付いているはずのサリアーノは、説明してくれない。仕方ないので、後で誰かに聞こうと思う。


「レイ、久しぶりー。」

「やっと契約変更だね。」

「メイこっち来るの。」

「サリアーノもなの!」


 いつものように座っていたのは、4人ではなく5人。

 いつもの4人の真ん中、ロストとリリの間に二人にくっつかれるように主は居た。

 おおよそ60年前の記憶なのでうろ覚えだが、スキルをくれた白い少年と同じ顔だと思う。髪の色は青緑だけど。

 今までも、あの白い少年と主が同一人物だとは思っていたが、実際に見ると確かに同一人物のようだ。

 ルルとリリに呼ばれた虹種族の2人は、主の膝に乗った。それを主が、目を細めて撫でている。

 主も、虹種族はお気に入りらしいな。


「久しぶりです。主ですよね。よろしくお願いします。」


 ラストに合わせて久しぶりと言ったが、主に対しては、久しぶりでいいのか、青緑のバージョンは初めてだから初めましての方がいいのか…迷ったが、無難によろしくお願いしますにした。

 この60年程でコミュニケーション能力は上がった気がする。そうでもないだろなんて、突っ込みは求めていない。自分は褒められて伸びるタイプなので、褒めてくれることを推奨する。

 …サリアーノもメイも主に撫でられることに嬉しそうで、特に反応してくれなかった。いつもだったら、何らかのリアクションをくれるんだけどな…。


「あはは。久しぶりでいいよ。レイだよね?この子達からも教えてもらったし、転生させた時のことも覚えているよ。立ってないで、座って。」

「はい。ありがとうございます。」

「会えて嬉しいわ。」

「うん、ぼくも。成長したみたいだね。」

「干渉力は最大まで上げたわ。レイにも手伝ってもらったのよ。」

「そうか。良かったね。」


 マキアと手を繋いで、主の対面に座る。

 自分のことも、マキアの事も、覚えているらしい。全員のことを覚えているのか?すごい!


「流石に、全員のことは覚えていないよ。でも、ここに住む種族は特別だからね。全部覚えてるよ。人は最初の方だけだし、異世界人もそこそこ転生させたから印象に残っている子だけしか覚えていないかな。」

「そうでしたか。」


 覚えられていた自分って、印象に残っていたという事か。最後だからかな?他には、うーんと、あんまり何を話したが覚えていない。そういえば、最後に運があれば勘で行けるみたいなことを言ったのに、超直感のスキルをもらったんだったか。

 たぶん、主の先ほどまでの返答を見れば、虹種族の思念読取や闇種族の思念操作と同じように、思ったことが分かるのだろう。

 思念の読める相手と便利に会話をしているから、今更思念を読まれることに問題はない。かなり初めから、抵抗が無かったかもしれないけど。

 ともかく、主が自分の言葉の真意が分かるのに、あえて超直感のスキルをくれた事に驚いた。言葉の綾とか、勘違いかと思っていた。


「そうだね。レイが印象に残っているのは、最後だからっていうのもあるよ。でも一番は、スキルをかなり持って行ったでしょう?」

「え?」

「ぼくは、レイの考えていることを読みながら、何のスキルをあげようか考えていたんだ。とりあえず、運が欲しいというから、幸運をあげたよね。」

「はい。」


 運が欲しいと言うのは、間違いなく言った。幸運のスキルもある。

 そして他のスキルは超直感と、完全体パーフェクトボディとかいう便利だけどちょっと混乱をもたらすスキル群であるスキルがある。スキルの数としては多い。

 でもこれは、異世界人版の半雌半雄だからじゃないのか?


「そうなんだよ。レイはいろいろ考えていたけど、結局幸運しかいらないみたいだから幸運を重ねようかなって思った。それで幸運を上げている時に勘とか言うから、一つを直感にしようか迷ったんだ。

 その内に幸運スキルが、一応設定したけどお蔵入りしていた性別の完全体パーフェクトボディを取って、考えていたスキルのほとんどを持って行った。ぼくがあっけにとられていたら、直感まで持って行ったよね。すごく驚いたんだよ。」

「そんなことってあるのですか。」

「本当だよ。ぼくも驚いた。ぼくが最後に迷ったのも、悪かったと思うよ。でも、召喚陣に手を加えられていて、あそこのぼくの空間での設定時間が削られいたことも原因だと思うんだ。」

「そうですか…。」


 妙な改変をしたトーコには、もう一度文句を言いたいと思う。


「あんまりにもスキルを持って行ったから、まともな生き物にならないかと思ったけど、時間制限と干渉力とかで調整できたみたいだね。普通に収まったようで良かったよ。」

「え?スキルが多くなると危険という事ですか。」

「そうだよ。だって元になるベースは火や風や土や水の種族と同じで、外の土地でも活動できるように外殻を強化したくらいだからね。力が多くなりすぎると変質するか爆発するよ。」

「そうですか…。」


 マジか!?そんな危険だったんだ?

 幸運スキル、やらかしてる…。いや、幸運というくらいだから、その方が都合がいいからそうしたのだろう。性別を変える時に、何のスキルが有ったかとか前回いつ使ったかとか混乱もしたけど(今もたまにするけど)、便利に使っているのは間違いない。

 幸運スキル、想像以上の仕事をしていたようだ。


「そうだね。普通の幸運スキルより、ちょっと強いよ。幸運って面白いスキルだね。レイの幸運がその形だから、レイが面白いという事かもしれないけど。」

「そうですか…。」


 面白いと言われても、あんまり嬉しくない。でも、こんな変則的なスキルが自分の幸運だったというと、自分が変わっているという事を、否定するのは難しい。ちょと、モヤモヤする。


「あははっ!この話はここまでにしよう。とりあえず、契約を変更しようか。起きてすぐに変更してあげられなくてごめんね?」

「レイ、ごめんねー?」

「それどころじゃなくてさ。」

「忘れていたの。」

「主とオハナシしていたの!」

「変えてもらえるだけで、ありがたいので気にしないでください。」


 なるほど。理解した。

 主が起きて、主と館の4人で再開のイチャイチャに忙しくて、サリアーノが来るまで自分の契約のことは忘れ去られていたという事だな。つながった。


「そうさせてもらうね。さっそくだけど、契約は変えられるけど、満了には変えられないんだ。だから、達成可能な事を考えてくれるかな?」

「すぐに、満了になるものがいいの!」

「早く終わった方がいいの!」


 それはそうだ。すぐに満了になった方がいい。

 例えば…今の契約に、今日とか1時間とか時間を付けてもらえれば、それでもいいだろう。

 でも、そんなのは面白くない。

 そうすると、家に帰ることとか?時間を入れないと、これも家から出られなくなるか?帰ることだから、帰った時点で満了になるだろう。帰り続けるとか意味が分からないからな。

 そう考えると、もし自分の契約がこの世界に転生することだったら、現れた時点で満了だったのだろう。改変の件について、もう一度トーコに本気で文句を言おう。

 ともかく、家に帰るでも面白くない。もっと何か…。

 視線を落とすと、繋いだ手が目に入った。そのまま横に目線を上げれば、マキアが優しい表情で見守ってくれていた。…そうだ、これだ。


「決めました。この世界で幸せに成ること。なんて、どうですか?」

「それは…いいけど、大丈夫?」

「大丈夫です。」


 念のため。幸せになれば、満了になるよな?直感は、正。問題ない。

 繋いだ手に力を込めた。


「大丈夫なら変えるけど…うん。これで、変わった。」

「ありがとうございます。」


 契約が変わったらしい。体に特に変化はない。

 この契約的に、幸せな状態か幸せになるための努力中じゃないと、噂の激痛が来るかと思ったがそれもない。

 あとは、この解釈として今以上に幸せにならないと満了にはならない可能性も有るが、それはお手軽な自分のことだから簡単だ。


 繋いだ手を引いて、マキアを抱きしめる。これだよこれ。柔らかくて暖かくて、幸せ。

 そう、あとは可愛い妖精がくっついて来たら、もっと幸せになれるかもーなんて。

 笑った声がした。頭の上に慣れた重みが乗った。肩に何がくっついた衝撃があった。

 自分も笑う。自分好みの大好きな人がいる。自分の思っただけのことにも反応してくれる優しい妖精達がいる。そんな自分の好きな彼女たちが、手の届くところにいて、いつでも触れ合える。

 この世界で、こんな幸せを手に入れた自分は、最高に幸せに違いない!


「あはははははっ!すごいね!もう、満了になっているよ!」

「もう。主の前で恥ずかしいでしょ。」

「失礼しました。いつもの事ですので。」


 口元を緩めて顔を赤らめるマキアと、頬を重ねる。

 肩口から覗き込んでにぱりと笑ったメイを、捕まえてマキアとの間に入れた。

 幸せだし、契約という縛りも無くなったようだ。

 これからは、もっと好きにこの世界で生きられる。まぁ、今以上なんて難しいけど。

 

 さて、せっかく主が起きたから聞きたかったことを聞こうと思う。

 うーんと…昔のこと過ぎて、記憶が怪しい。何を聞こうと思っていたのか。

 時間もあるし、これからゆっくり話しながら聞いて行けばいいか。


 とりあえず運をもらって転生しましたが、この世界に転生して良かったです。

 

完結です。

読んでくださり、ありがとうございました。


評価をくださった方、ブックマークしてくださった方、最後まで読んでくださった方々を日々確認しつつ、完結まで頑張ることが出来ました。本当にありがとうございます。

ここで完結ですが、番外編を気まぐれに更新するかもしれません。

今後とも、よろしくお願いします。

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