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思っていたのと違うようですが、このままいこうと思います

 ラストと手を繋ぐと、資料が保管されている場所までの道筋が頭に流れ込んできた。

 記憶操作で消すこともできれば、与えることもできるということか。ちょっと怖い能力だな。

 両生体でいられる残り時間が分からないが、そう長くないだろう。与えられた記憶通りに目視転移を繰り返し、政務棟の地下にあった一室の鍵がかかった扉を叩き壊して侵入した。

 その時に、城を囲う魔法が解けたのが分かった。無性体に戻っている。30分たったようだ。到着が間に合ってよかった。


 その部屋の中は、地下であるのに明るかった。天井の真ん中あたりに火の玉が浮かび、部屋の中を照らしている。石の床に記号のような文字にも見える模様の彫り込まれた円状の大きな魔法陣。これが召喚陣ということだろう。ファンタジーあるあるな召喚の間と言ったイメージだ。

 本当ならここに召喚されるハズだったのかと、ひそかにテンションを上げながら見ていたが、魔法陣部分が一瞬光り、その後の床面は模様のない平らになっていた。ラストが魔法で消したのだと思うが、少し残念に思ってしまったのは許してほしいと思う。


「奥があの子の研究室みたいだよ。」

「あの子というと、茶髪の?」

「うん。なかなか思い切った改変をしたみたいだよー。」


 そのまま中に進んでいくラストに付いて行くと、壁に戸が有り、その部屋も先ほどと同じように火の玉が浮かんで照らしていた。

 本棚が置かれ、その中には石板が並んでいた。棚の横には木箱が置かれて、巻物のように巻かれた紙が何本も差し込まれている。

 一つだけある机の上にも小さな火の玉が浮かんでいて、ペンのようなものが転がり、魔法陣のようなものが彫り込まれた石板がいくつか置かれていた。椅子は引かれた状態で放置されていて、途中で退席したままになっているようだった。


「分けるのも面倒だし、全部処分でいいよねー。」


 ラストの声と共にそれらが燃え上がり分解され、天井の火の玉を残して焦げ跡と土に変わっていた。

 これがすべての資料なのだろうか。もっとたくさんあると想像していたんだが。


「これで終わりですか?」

「そうだねー。あとは、あの子をどうするかなんだよね。」

「記憶をそのままではダメですか?」

「うーん。どうだろう?思い切った改変が危険だから使わないで欲しいけど、使わないで覚えておくだけなら問題ない気もするし。どう思う?」


 正面から覗き込んで来たらラストの紫の目は、よく見ると左目が青い気がした。光の加減か、それとも…。

 質問に答えないといけないんだった。ええと、あの茶髪の女性の記憶をどうするかということだよな。

 個人的にはどっちでもいいけど、サイトはその記憶が欲しいようだった。そのサイトは以前に、主に興味を持って家探しした前科があると。

 そういえば、召喚陣の作成者の主に興味があるようなことを言っていた。

 主を調べようとするなら、情報を求めて館に侵入されるより、召喚陣の研究を勝手にやってもらった方がいいような気もする。

 でも、使えないものを研究しようにも、実証ができないから意味がないんじゃないか?館に侵入されなくても、研究の成果をこっそり使おうとするかもしれない。


「わかりません。サイトが何を思って、知りたいと言っているのかも分かりませんし、ラストが召喚陣の何を危険と言っているのか分かりません。

 ですがラスト達が迷うと言うのであれば、サイト達とラスト達で相談してお互いの意向に沿う形を探すのもいいと思います。上手くいけばその相談の通りで進めればいいし、もし相談が上手くいかなければ記憶を消せばいいだけです。

 もしそれが面倒であるなら、そのまま記憶を消せばいいと思います。」

「なるほどねー。相談してみるけど、ぼくらが異世界人の記憶を奪うことに抵抗は無い?」

「ありません。勝手に奪われるのは嫌ですが、今回の件は戦後処理の延長だと思っています。

 サイトにしても、ラストが消すと言うなら仕方が無いと思っているから、見逃してほしいという頼む姿勢だったと解釈をしています。」

「そうなんだ。」

「はい。そろそろ、戻りますか。」

「そうだねー。」


 無性体から男性体に変えた。

 両生体と違い、ジョンの部屋に直接戻れない。転移に慣れてしまうと、歩いての移動が面倒なんだよな。セルディの部屋の登録を消したら、ジョンの部屋に転移できる?出来る気がする。

 セルディの部屋の登録を消し、ジョンの部屋に転移した。





 部屋に視線を走らせるが、先ほどと変わりなかった。

 気絶した異世界人たちは、まだ目覚め無いようだ。


「資料の破棄、終わったよー。」

「ありがとうございました!こちらも異世界人の洗脳の解除は済んでいます。ラストはもう戻りますよね?」

「そうだね。その子の処遇を相談したいから、サイトとその子は館まで来てほしいかな。」

「了解した。俺がトーコを運ぼう。レイ、転移を頼むな。」

「はい。」


 トーコというのが、あの女性だな。なんで名前…アサが鑑定したのか。


「ラストもレイヤードもサイトも、今日はありがとうございました!

 私達はしばらくここに残って、気絶している彼らが起きたら説得しますので、ここでお別れです。」

「分かりましたけど、アサはどうしますか?」

「この気絶している3人をユーナとアミナとセルディだけに任せるのも悪いし、俺もユーナの家に寄りたいと思ってるから、残るよ。」

「そうですか。では、後はよろしくお願いします。」


 アサがユーナの家に用事か。何の用だろう。監禁している彼女が居るのに、ユーナ達に手を出すことは無いよな?

 とりあえずアサが残るようだし、ジョン達が今後どうなるのかとかは、今度聞けばいいか。


「ラストもレイヤードもまた会いましょうね!」

「はい。また会いましょう。」

「ぼくはこっちに来ることは無いと思うから、館まで来ればいいよ。」

「ぜひ、伺いますね!」

「わたしも行っていいのかな?」

「俺もいいか?」

「いいよ。アサかレイに言えばいいんじゃないかな?」


 飛び火した。転移が出来るから便利だよってことだろう。

 今日は散々転移雑用したからな。アサが居なかったら、もっと大変だったと思う。便利だけど、他からも便利に使われるのは、面倒だ。

 でも今後こちら側に来ることは、どれくらいあるだろう。こちら側には、もう用が無い気がする。


「こちら側に来ることはほとんど無いと思いますが、その時はユーナの所に寄りますので用があったらその時にお願いします。」

「よろしくね。今の男性体でレイヤードの性別は全部だよね?なかなかカワイイよ。」

「ありがとうございます。」

「性別?変えられるのか?」

「はい。」

「そうか。よろしく頼む。」

「はい。」


 男性体も含めてカワイイとまとめられるのは心外だ。恰好いいと可愛いは、性別ごとで分けてもらいたい。そしてセルディのスルーっぷりは高評価しようと思う。

 さて、帰ろう。でも、館に転移地点は無い。

 あと奥の方だと家になるが、家の中になるんだよな。ラストはいいとして、サイトをマキア達がくつろいでいるかもしれない空間に突然連れ込むのは嫌だな。

 先に連絡するなら、サリアーノか。


『今いいですか?』

『どうした?』

『無事に、戦争は終わりました。今から帰ろうと思いますが、館の地点登録をしていなくて、アサの空間か家の中になります。手伝ってもらえませんか?』

『分かった。何人いる?』

『私を含めて4人です。』

『それなら、アサの空間でいい。俺が運ぼう。』

『ええと…ありがとう、サリアーノ。』

『おう!』


 嬉しそうだった。頼られると嬉しいのだろうか?

 サリアーノが手伝って助かる。


「アサの空間まで転移します。その後は、館までサリアーノに転移してもらいます。」


 ラストとサイトの手をとる。

 サイトが気絶した異世界人…トーコの腕を掴んでいる。運ぶと言ったから抱き上げるのかと思ったが、そんな素振りは無かった。まぁいいか。

 アサの空間に転移する。





 白い部屋。

 アサの空間に転移すると、サリアーノが居た。

 こちらに飛んで来て、頭に乗った。


「このまま転移するぞ!」





 館の前だった。転移、便利だ。


「じゃあ、ぼくは中で相談してくるから待ててね?レイは、サイト達を見張ってて!」

「はい。」


 ラストは館に走り戻っていったが、見張っててとは…サイトの信用が無い。

 サイトの表情に変化はない。相変わらず口元が弧を描いている。警戒されていることに、思う所はないのだろうか。


「サリアーノ、手伝ってくれてありがとうございます。」

「気にするな!戦争が終わったんだろう?頑張ったな!」


 前髪の辺りが混ぜられている感覚がある。撫でてくれているらしい。少し嬉しい。


「ほとんど、転移で運んでいただけですよ。」

「それが十分助けられたぞ。おかげで、30分以内に終わったしな!」

「私との賭けは、私の勝ちでいいのですよね?」

「もちろんだ。」


 やっぱりサイトはアサと戦いたかったらしい。あとは、このトーコという異世界人が狙われているのか。可哀想に。

 サイトはすでにトーコの腕を放していて、トーコは地面にうつ伏せで倒れている。

 可哀想になったので、彼女に近付いて上半身を抱き起こす。顔に付いた土を払ってみた。どことなく日本人風にも見える顔だちだ。


「この方の名前やスキルは、アサに聞いていますか?」

「うむ。トーコ・ルーン・ドーシアだ。スキルは、魔法特化・魔力感知・演算だな。どうしてこんなスキルにしたのか、分からんな。」

「え?ルーンですか?」


 確かサイトの名前にもミドルネームがあったと思う。

 日本人風な顔立ちと、日本人に近い響きの名前、ミドルネームってもしかして?


「うむ。ルーンは、以前の国で上位魔法研究職に付くものが持つ名だ。かつての同僚ということだな。」

「知り合いですか!?」

「そうだぞ。」


 知り合いだったー!?

 自分とアサという同郷の者がいることからサイトの同郷かとは思ったが、まさか知り合いだと思わなかった。偶然にもほどがある。

 っていうか、知り合いなのにこんな雑な扱いしたのか!?もうちょっと丁寧に扱ってあげればいいじゃないか!

 そう文句を言おうとすると、危機察知した。


 抱えたトーコを見ると、目が合った。その手には、火。それをこっちに投げて…なんで攻撃されてるんだ!?

 とっさにトーコを支える手と反対の手で火を纏わせて、投げられた火球を上空に払い飛ばした。

 触った瞬間にその火の中に風を閉じ込めている構成だと伝わってきた。

 上空で爆ぜた火球からの熱風が吹き付けてきた。

 よくこの近距離からの攻撃を、見てから対応出来たな。自画自賛する。男性体の物理特化で反射神経と動体視力と運動能力が上がっているのが良かった気がする。


 そういえば、攻撃を打ち消すのには対属性の方が効率がいいと言っていたか?今回は中に風が入っていたから、水で火を打ち消すと風があふれる仕組みだったようだ。実践指導の時は同属性でそらされたから、それを反射で真似たのも良かったのかもしれない。

 どうして火の中に風が入っているのに気付けたのだろう。同属性で、あの火球に干渉したからか?そんな気がする。

 あと、魔法特化に対して干渉力6の男性体の自分が、イメージ通りに攻撃をそらせたのも分からない。上位に対してはイメージや魔力を増やして対応しなくてはいけないはずだ。想像したより魔力は消費した気もするが、さっきはとっさでそんなイメージは出来なかった。同属性で干渉すると、無意識でも魔力の調整がしやすくなるのか?そんな気がする。

 今更ながら、魔法って奥深いな。


「あなたは…?」

「私はレイヤードです。敵ではないので攻撃しないでください。ゆっくりでいいので、立てますか。」


 危機察知しないが、相変わらずトーコの視線を感じる。穴が開きそうだ。

 背を支えながら立たせると、トーコはやっと周りを見回した。そしてサイトを見て固まる。


「元気な寝起きだったな。」

「サイト…若い!え!?サイト!?」

「ハハハハ!若いのはトーコも一緒だろう!」


 笑い出したサイトにトーコは殴り掛かるが、暴れるような動きではとてもダメージを与えられないだろう。サイトはあっさりトーコの両腕を捕まえて動きを封じている。


「どうして!…せっかく、異世界に来たのに!すでに貴様がが居ると聞いた私の気持ちが分かるか!しかも、物理特化だって!?なんて憎らしい男だ!」

「うむ。さっぱり、分からん。それより、召喚陣の改変の件で聞きたいのだが…」

「ああん!?また、私の研究にケチを付けようってか?憎らしい男だ!」

「そうではなく、召喚陣については全く調べていなかったからな。トーコの見解を聞きたいと思っていた。」

「サイトの未検証分野だって!?…ふふん。心して聞くといい!あの召喚陣はね…。」

「ちょっと待ってください!」


 どうして、トーコを助け起こした自分があんな攻撃を受けて、気絶させた挙句に地面に転がして放置したサイトは攻撃らしい攻撃もされずに、欲しい知識を得ようしているのだろう。

 ラストに見張るように言われたので、その知識をサイトに与える訳にはいかない。嫌がらせじゃない。純然たる任務だ。

 …幸運、仕事してる? 

 

「お待たせー!その子、起きたんだね。とりあえず中に入ってよ。」


 どう興味をそらすか考えていたから、ラストが戻ってきた。すぐに戻ってきてくれて良かった。

 多少は幸運が仕事をしていたらしい。

 ラストの白いマントはそのままで、ルルに返していないようだ。

 相談すると言っていたから4人でだと思ったが、ルルは除いて大丈夫なのだろうか。それ以上にサイト達が警戒されている可能性もあるか。


「うむ。お邪魔する。」

「羽…さっきの?」

「とても親切ですので、安心してください。」

「見張っててくれて、ありがと!後はこっちでやるから帰ってもいいけど、伝えたいことがあるから、後日でいいからまた来て欲しいんだ。どうする?」

「今日は帰るので、また来ますね。」

「またね!」

「はい。失礼します。」


 召喚の陣の件にかかわると、記憶を操作される可能性があるんだよな。最終的に記憶が無くなるかもしれないことに時間を使うのは、面倒だ。帰っていいなら帰らせてもらおう。

 知り合いらしいし、研究結果を知りたいサイトが頑張ればいいと思う。

 巻き込まれないよう、すぐに家に転移した。

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