異世界人に会ってみたいですが、本当に異世界でした
くっついてまったりしてるだけで、あっという間に夜になり朝になり、時間は過ぎて行った。
とても動きたくない気分だが、寿命も無くて仕事ももらえなさそうなここで生活していく上で自分のプライドを保つには、戦争を終わらせることに一役買ったくらいの名誉が必要だろう。
マキアに危険な目にあって欲しくないとか、一緒に居たいとか言いながら、自分の保身のために動くなんて小さい奴だ。
直感は何も訴えてこないから、きっと今日の作戦は成功する。そんな気がする。
戦争を終わらせるとか言いながら、危機感が何も無い。潜入調査するとかいいながら、一日で終わる。無一文でありながら、寝食の提供者に困らない。夢の中の出来事のようだ。あるいは、物語の中のような。
「さて、そろそろ行って来ます。」
目につく場所に置いた時計は、6時20分。両生体の使用回数も戻っている。
「気を付けてね。」
「待ってるー!」
「はい。きっと、すぐに戻って来ます。」
「焦らなくていいわ。アサもサイトも居なくなるし、転移の人数も多いと負担でしょ?不測の事態が起きないように、森の見張りは増やしてあるから。」
そうだったんだ。何事も無ければいいけど、こちら側でも警戒してくれていると少し安心だ。
「そうでしたか。何も無いように頑張ってきます。サイトは自力で来るとして、ラストは大丈夫でしょうか?昨日はサリアーノが連れてくるとか言ってましたけど、呼ぼうにも念話が切れてしまってるんです。」
「6時30分で伝えてあるから、大丈夫だと思うわ。」
「サリー、ドジだなぁ。あはは!頼ってあげて!」
頼ってあげて?つまり、迎えに行かなくて良いということだな。
「わかりました。そのままアサの所に行きます。」
「行ってらっしゃい。」
「行って来ます。」
「頑張ってー!」
二人の見送りに微笑で答えて転移した。
※
「お、来たじゃないか!」
すでに、サイトとアサが待っていた。
「お待たせしましたか?」
「ハハハハ!早く来すぎてしまってな!」
「ほんとだよ。」
「ええと…二人で話していたのですか?」
「うむ!ちょっとした賭けをしていたんだ。」
「賭けですか。」
「そうだよ。今回の作戦で、レイが両生体になってから30分以内に戦争が終わったことになったら、今後半月に一度以上サイトと戦えってさ。30分でそこまでは無理だと思うけど。」
なるほど。継続的にアサとバトルするための賭けということか。
アサは30分では無理で、サイトは30分以内に賭けたのか。
自分の両生体がストップウォッチ代わりにされているのが微妙な気分だが、両生体になったらギリギリまで使い切るつもりだったし、確かにちょうどいいのかもしれない。
「うむ!アサがそう思っているから、賭けになるんだ!ところで、レイも賭けないか?」
「賭博は遠慮します。」
「30分以内に終われば、今後は継続的な戦闘行為を誘わないと言っても?」
サイトからバトルを誘われない?バトルを誘ってこないサイトなんて…ただの物知りで最強のいい人だ!
超直感に問う。
両生体が切れる前に戦争が終わったことになる?微妙な気がする。
確率操作すれば、確実に終わるか?直感は、正。
これは、勝てる!
「乗りました。」
「ハハハハ!そうこなくてはな!」
「はぁ!?レイが30分以内に賭けるってことか!?幸運と、超直感の確率操作があるんだぞ!卑怯だ!賭けは無しだ!」
「残念だが、アサとの賭けはすでに成立しているからな!ハハハハ!レイ、頼むぞ!」
「こちらこそ、約束は忘れないでください。」
「うむ。もちろんだ!」
サイトはこうなるのを読んでいたのか?まぁいいや。自分のことが一番大事なので、アサには貧乏くじを引いてもらおう。
30分以内に戦争が終わることになるよう、確率を上げた。
「お前!マジで、サイテーだな!」
「何を言う。賭けに乗ったのはアサだろう?俺はただ、レイも誘っただけだぞ。」
「それなら、レイにも30分以上に賭けさせるのが普通だろ!」
「そんな普通があるとは知らなかったな。アサが先にそう誘えばよかったんじゃないか?」
「ムカつく!」
仲の良さそうな言い合いだ。
サイトは元々アサと戦いたいようだったし、自分のバトルセンスの無さには残念そうだった。なかなかの策士だな。
もしかして、自分との賭けにも何か罠があったのか?考え過ぎか。…そんなこと、ないよな?直感は、微妙な感じだ。
微妙な感じだと、どう微妙なのかが分からない。罠というほどでもないけど、思っていたのと違うようなそんな感じか?よく分からないが、早まったかもしれない。
「待たせたー?」
ラストの声に振り返ると、サリアーノが眼前に飛んで来て驚いた。
「頑張れよー!」
「はい!サリアーノも、協力してくれてありがとうございます。」
「あっちまで行けないから、大したことは出来ないけどな。」
「そんなことありません。こうして来てくれるだけで、心強いです。」
「そうか。」
あ、顔が赤くなった。可愛い。
思わず両手で捕まえて、撫で回すが、サリアーノが暴れて逃げられてしまった。残念。
「何するんだ!…何かあったら、言えよ。気を付けてな!」
また念話が繋がってる感覚がする。本当に紳士だな。
「行くのー?」
「はい。行きます。」
無性体だと転移地点が無いので、昨日ユーナ達に見せた女性体に変える。
手を伸ばして、ラストとサイトとアサが触ったのを確認。
最後に、サリアーノに笑いかける。
「行って来ます!」
※
セルディの部屋だ。
「久しぶりだな、セルディ。」
「二人とも、久しぶり。この前は、悪かった。」
「洗脳されてたし、気にしなくていいよ。」
「ハハハハ!本気で攻撃してきても良かったんだがな!」
「そうか。その二人は?」
相変わらずのスルーぶりだ。サイトに思わず突っ込みたくならないのだろうか。
「昨日は姿を見せずに失礼しました。レイヤードです。」
「闇種族のラストだよー。」
「セルディ・ローグだ。よろしく頼む。」
セルディの視線につられて、ラストを見る。
白いマントを付けているのに、白い羽が出ている。このマント、どうなってるんだ?
ともかく、羽は少し光っているが、この前見たサリアーノほどの流出は止まっているようだ。念のため、短期決戦で行きたい。サイトとの賭けもあるし。
サクサク行こう。
「ユーナを連れてきます。」
※
「待ってました!」
「お待たせしました。セルディの部屋に転移します。」
「お願いします!」
転移地点で待ってくれていたユーナの手を取って、セルディの部屋に戻った。
※
これで此処にアミナ以外がそろった。
「手順は大丈夫ですか?ジョンの所に行くのは、ラストとユーナとセルディと私でいいですか?」
「俺も行くよ。鑑定した方がいいだろ?」
「そうだな。ユーナが洗脳を解除できるなら、このまま全員で行ってもいいか。」
「念のため、俺とサイトは見えないように隠蔽しておくよ。」
隠蔽されて見えないサイトとか、最強すぎる。瞬殺できると思う。
「では、全員でジョンの部屋に転移します。触ってください。」
両生体になり、両腕を伸ばした。
全員の手が乗っていることを確認して、転移した。
ここから30分スタートだ。
※
転移したと同時に、思った通りに瞬殺だった。
範囲治癒なのか部屋全体が光り、ジョンを探せば、崩れ落ちる所を目撃した。
「手ごたえが無いな。ユーナ、洗脳の方は大丈夫か?」
「え?はい。アミナの洗脳は解除しましたし、他に新たに洗脳された方はいません。」
「意識を落としたから、しばらく目覚めないと思うが見張りは要るか?」
「拘束と言ったので、紐とか持ってきましたけど、使いますか?」
「うむ。貸してくれ。」
ユーナが取り出した紐が動き出し、気絶しているジョンを転がして後ろ手に拘束していく。
たぶんサイトが縛っているんだと思うが見えなくなっているから、紐が勝手に動いているみたいだ。面白い。
「一瞬だったね。みんな来てくれてありがとう。わたしが、見張りをしておこうか?」
「鑑定したけど、契約は”戦争中、自身の危険を感じない範囲で国に協力する”で、スキルは魔法特化と思念操作特化だ。範囲洗脳もできるみたいだけど、自身の危険を感じる状況なら危害を加えないように説得できるかもしれない。」
なるほど。言葉で説得しようとしても危険を感じないと裏切れない状況ということか。力ずくで止めるというのが、大正解なわけだ。
「なるほどー。起きたら、アミナを怖がるようにしておけばいいねー。任せて!」
「起きても抵抗しないように、わたし一人で見張れるってことだね。頑張るよ!」
ラストがジョンの思念操作をしているようだ。
似たスキルでジョンに特化と付いているけど、抵抗されないのだろうか?自信満々の様子なので、たぶん大丈夫だと思うが…命属性特化×2が重要なのか?
「あとは、ラストとユーナと聖堂に移動すればいいですか?」
「異世界人は各個撃破した方が良いだろう?あとの3人の居場所は分かるか?」
「この時間なら2人は部屋に居るはずだ。この階と、下の階だ。もう一人は、政務棟のはずだが場所は分からない。」
「うむ。ではここの異世界人の所に突撃しよう!気絶させてここにまとめてから、政務棟か聖堂で最後の一人を確保する。洗脳の解除はジョンにやらせるか、そのまま聖堂での思念記憶操作が終わってからユーナにやってもらえばいい。
役割は、見張りにアミナで道案内にセルディと確保後の移動でアサ、攻撃で俺だな!
レイは、空間魔法でラストの誘導の効かない相手を発見したら、アミナに連絡してくれ。特に政務棟から動かない者がいるかどうかは必ず頼む。」
つまり、自分はラストとユーナを聖堂に運んだら、そのまま聖堂から空間魔法で城を包囲すればいいんだな。そして探査で移動しない人がいないか確認して、連絡に一度戻ってくると。
このまま行ったら出入りできないか。隠蔽で見えなくなっていた方が、楽そうだ。
「わかりました。アサ、私にも隠蔽をかけてください。」
「出入りするなら、見えない方がいいか。…これで大丈夫だ。」
「ありがとうございます。」
見えなくなったようなので、ラストとユーナの腕に自分から触れる。
「転移して、いいですか?」
「大丈夫です。」
「うんー。」
ラストが緩いしゃべり方のままなんだが…まぁ大丈夫か。
聖堂に転移した。
※
聖堂の端の方の転移地点に出た。なぜか、昨日よりも祈る人が多い。
ユーナが範囲治癒で床を光らせながらステージに歩いていく。ラストがそれに付いて行くのを見送り、昨日のように、透明な壁で城全体を囲った。
昨日はサイトだけのため気にならなかったのか、空間に入っている生き物の感覚が伝わってきた。伝わるといっても、個人や細かい位置の特定はできない。この付近に人が集中している事とか、ラストの誘導でここに向かってその大勢が移動し始めた事が伝わってきた。
手のひらを蟻が這い回っているような感覚は、気持ち悪い…。壁の方向に向かう動きは見当たらないので、そこは少し安心する。
探査を使わなくても、この感覚でだいたいの位置と動きが分かりそうだ。気持ち悪いのを我慢して意識を集中させる。
兵舎棟で幾人かこちらに向かわない動きが分かるが、これはサイト達かどうなのか確認できないがたぶんそうだろう。そうだよな?直感は、正。問題なさそうだ。
政務棟でこちらに向かってない動きは見当たらない。この聖堂に向かう流れの中のどこかに異世界人が紛れているのだろう。
人の流れを確認したので、報告に戻ろうと思う。
伝わる感覚を掴むために、目を閉じて集中していたようだ。
見てみると、聖堂の中には人がかなり増えていた。先ほどの感覚で増えていくのを、初めに体育館風と思っていたこともあって、全校集会風かなと想像していた。
実際に見ると違いに驚いた。
段になったステージにラストが立ち、その足元にユーナが膝をついて祈りを捧げている。ラストとユーナを中心に、強弱のつけられた優しい光が広がっていく。目を閉じて一言も話していない二人に、集まった人間達がユーナと同じ姿勢で膝をついていく。
重厚な聖堂で後光射す天使と聖女の下に、一言もなく同じ動きで集まっていく様子は宗教画の中のでようでいて、操られているようでもあった。
いや、操られているのか。うっかり、自分も祈りに混ざってしまう所だった。
天使と聖女効果、スゴイな!押し付けがましいほどの、神聖な雰囲気だ!
心の中で絶賛しながら、アミナの所に転移した。




