表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/50

先に休憩しましたが、実践することになるようです

 お茶を用意してくれたセルディは、困惑した様子は見せなかった。

 無表情のまま淡々とお茶を4つ並べて、空いた席に座った。

 自分の前に置かれているコップ。え、見えてる?


「セルディ見えてるんだ!?」

「何がだ?」

「お茶4つ置きましたよね?私の隣に座っているんですが…。」

「何の話だ?4つと言われたから、4つ用意したんだが。」

「ユーナの隣に置いたのはなんで?」

「4人掛けのテーブルだから。そこならユーナでもアミナでも取れるだろう。」


 ちょっと脱力した。隠蔽をかけてもらったんだ。見えて無くて良かった。

 でも機械的に4つ並べるって、作り物感が増すな。いや、天然っぽい感じもするか。


「今私の隣に、レイヤードという異世界人が居ます。先日の召喚で魔族側に落ちたようで、戦争を止める作戦にも参加してくれています。」

「そうなのか。」

「今見えなくなってるのは、リョータが隠蔽したって。」

「そうか。」

「えっと…本当に居るんですよ?」

「聞いている。居るんだろ。」


 全然驚いた様子はない。

 でも、探すように目線が自分の辺り彷徨っているのが面白い。

 出してくれたコップを持ち上げてお茶を飲む。紅茶っぽい味だ。

 持ち上げたコップに視線に集中してるのが分かる。

 コップを持ち上げた瞬間、観察していたから気付いたが、セルディの目が一瞬丸く見開かれた。感情表現が薄いだけで、驚いていないわけじゃないのが分かった。

 人間味を感じて、少し親近感が沸いた。


「コップが浮いてるように見えるよ。不思議だね。」

「そうだな。」

「本当ですね。あまり長居もできないので、作戦の説明をしていきますよ。

 まず今日ですが、セルディにはアミナに防御魔法を掛けてもらい、アミナがジョンの元に潜入します。

 およそ25時間後に此処にサイト達が転移するので、セルディも一緒にジョンの部屋に行って、ジョンを取り押さえてください。治癒スキルがあると洗脳に抵抗できるので、アミナ達の協力をお願いします。

 その後、ジョンの見張りが必要ならその人数残ってもらい、レイが人間が逃げないように城の包囲し、サイト達が洗脳されている異世界人を無力化しつつ、私が洗脳解除します。

 私と魔族側の協力者のラストが聖堂から広域治癒と広域思念操作で城の人間を聖堂に集めたら、そこでラストが戦争を止めさせる思念操作と召喚方法の記憶を消去をしてくれます。

 レイの城の包囲は30分ほどしか持たないので、ここで時間がかかった場合、集まった人が途中で抜け出さないように見張りが必要です。

 最後に、政務棟の召喚の資料を破棄をするという流れです。」

「ジョンを押さえた後は、臨機応変ということか。」


 ユーナが説明しているが、内容は先ほどと同じだ。

 セルディを見ていたが、やはり表情の変化が見えない。

 これほど感情が表情に乗らないと、何を考えているか全然分からない。

 もしかすると今一生懸命説明するユーナを見て、聖女萌えー。とかって思ってるかもしれない。あの顔の下でそんなことを考えているとしたら、面白すぎる。


「そうですね。明日また来ますので、部屋に居てくださいね?」

「分かった。あとは、防御魔法をアミナにかければいいな?」

「よろしく頼むよ!」

「……かけた。これでいいか?」

「ありがとう!」

「ありがとうございます!」


 防御魔法をかけた時にアミナが一瞬光った。治癒魔法みたいだな。

 光ったアミナは眩しくなかったのだろうか。

 このままお開きの流れになっているが、もう一つ聞いておこう。


「すみませんが一つ質問です。サイトたちが魔族側に動いた後に召喚された異世界人は、先ほどの攻めてきたと言った2名とジョンだけですか?」

「いや…あと一人いる。君が召喚された位置がおかしかったのは、たぶんあいつが召喚陣の改変をしたのだと思う。政務棟の方に住み込んで召喚陣の研究をしているらしい。実際に会ったのは一度切りだから詳しくは知らないが。」

「そうでしたか。情報をありがとうございます。」

「大したことじゃない。…本当に居るんだな。」

「何も見えないのに声だけするのは不思議だね。」

「リョータの隠蔽で自分ではかけ直せないので、今日はこのままで失礼します。明日は、普通に来ますのでよろしくお願いします。」

「楽しみにしている。」

「では、そろそろ行きますか?」

「そうだね。また明日。」

「また明日。」


 後で戦闘担当のサイト達にも伝えておこう。

 先に攻めてきて撃退した2人は問題ないだろうけど、後もう一人か。問題ないといいけど。

 主の作った召喚の方法を改変するとか…魔法に詳しい異世界のヒトだろうか?そういえば、サイトが魔法の研究をしていたらしいけど、知り合いなんていう可能性は都合良すぎるか。

 席を立ったユーナの腕に再度掴まり、セルディの部屋を後にした。

 無表情なセルディも、戦う時には不機嫌になったり、戦争が終わったら喜んだりするのだろうか。

 いつか、感情の乗った表情を見てみたい。


 退出の前に、ここを地点登録する。

 あとは、ジョンの部屋と聖堂だ。





 ジョンの部屋はセルディの部屋の一つ上の階だった。


「洗脳されても、明日は外出させないように頑張るよ。」

「気を付けてね、アミナ!」

「もちろんだよ、ユーナ!」


 アミナとユーナが小声で励ましあってから、ノックをした。

 現れたのは、濃い紫の髪の美形だった。

 これが、ジョンか。


「おかえり、アミナ。ユーナも一緒なんて珍しいな。」

「ただいま。ユーナはセルディに会ってたんだよ。今から聖堂によって帰るんだって。」

「セルディに?アミナも付いて行ったのか?」

「そうだよ。」

「そうか。聖堂での祈りを欠かさないなんて、聖女だね。」

「聖女だなんて。私に出来るのは祈ることだけですから。」

「ユーナはすごいんだよ。」

「そうだね。頑張って祈って、ユーナ。」

「ありがとうございます。じゃあ、またねアミナ。」

「ユーナも気を付けて帰ってね。」


 アミナがジョンを部屋に押し込んで部屋の中に入る。 

 両生体に変わって、アミナのあけてくれた部屋の空いたスペースに入り込んで地点登録をして、すぐに出る。

 明日まで頑張ってくれ、アミナ。

 それにしても、ジョンの顔は彫りの深い造作でエキゾチックな感じだった。

 今まで会ったヒト達とも雰囲気の違う顔立ちで、アミナのタイプがこの顔なら、確かに他に出会うのは大変そうだった。

 異国風ということは、転生前からこの顔だったのだろうか。

 そうすると転生前からモテていそうだが、転生前にモテていた人間が、洗脳系のスキルを望むだろうか?思っていたイメージと少し違うが、洗脳系スキルを欲しがる人間性は不明だ。

 しかし自分の運があれば勘でいけるという意味で言った所、スキルは超直感という幸運より直感要素が強くなってしまった事実がある。

 洗脳系スキルを得たのが言葉の綾とかなら、まともな性格という可能性もあるか。

 アミナを洗脳して彼女にするくらいだし、ジョンからアミナに好意があれば、戦争終了後は進展があるかもしれないな。





「聖堂に行きます。聖堂で祈ってから帰るので、転移地点の登録をしたらレイヤードはそのまま戻っていいですよ。」

「わかりました。ユーナも気を付けて。」


 小声で話した後に辿り着いた聖堂は、体育館のように見えていた部分だった。

 体育館といってもプレハブ感は無くて、石やレンガが使われていて、重厚な雰囲気だ。一部の壁や柱には、館の壁や家具に彫られていたものと似た蔦っぽい模様が彫り込まれている。中は広く前方にステージがあり、その上には見覚えのある時計が掲げられていた。

 その位置に手のひらサイズの時計って…かなり前の方で見るか相当目が良くないと、時間は見えないと思う。想像通り、違和感のある見栄えだ。

 ただ、それ以外に象徴物は見当たらない。

 十字架だとか神の像とかいうイメージが当てはまらないのは、異世界なのでそういう物だとする。

 それにしてもこんなに広い聖堂なのだから、時計をシンボルとするとしても大きく絵で描くとか、もう少しアピールしてもいいと思う。こんな小さな時計一つが頑張って聖堂を象徴しているとなると…ちょっと面白い。いや、失礼。時計の花の頑張りに痛み入る。

 しかしこの時計の主張の程を見れば、アイドル聖女の主張には勝てなかったのは納得だ。

 

 数人がまばらに祈る聖堂の中を、ユーナは静かに聖堂の正面真ん中辺りまで進み、膝をついて周りと同じ祈りの姿勢をとる。

 その途端に、足元が淡く光りだして、ユーナの少女めいた美貌を照らし出す。

 範囲治癒だろうが、聖堂の雰囲気と合っていてすごく綺麗な光景だ。

 思わず見惚れてしまった。

 周りを見ると、他にもユーナに見惚れている人が居た。

 流石聖女様だ。明日も頑張って欲しい。

 聖堂の端の方で地点登録して、転移で戻った。





 アサの白い部屋。

 転移した途端に、アサの視線がこちらに向いた。隠蔽をかけたアサには見えているのだろうか。

 あと、サイトの視線もこっちに向いている。何が原因かは謎だ。

 マキアがぼんやりと席に座っているので、後ろから抱きしめてみた。


「ひゃっ…!なに!?レイなの!?」

「そうです。」

「もう、びっくりしたじゃない!見えない状態で触られると…変な感じね。」


 マキアのお腹に回した腕を撫でられる。

 振り返って顔を確認しようとしているのだろうが、見えないようで視線が彷徨っている。

 ちょっと不安そうな顔が可愛い。可愛いけど、このまま悪戯できるようなメンタルの強さは持ち合わせていないので、隠蔽のスキル無効を念じた。


「驚かせてしまって、すみません。これで見えますか?」

「見えるわ。おかえり。」

「はい。ただいま戻りました。」


 立ち上がったマキアが、体を反転させて抱き付いてくる。

 ん?マキアより、少し背が高い気がする。身長は、無性体<女性体<両生体<男性体のサイズのようだ。

 あと、胸元の当り具合も違う。マキアと離れた後に見てみると、女性体よりも育っている。このサイズは、無性体≦男性体(胸筋)<女性体<両生体<マキアになるようだ。

 …アサの視線を痛いくらいに感じる。何か用だろうか。マキアはあげないけど。


「どうかしましたか。」

「どうかって…見えない状態で触るとか、何やってんだ!?っていうか、どんな関係なんだよ!?」

「いつもの事なので、そんなこと言われましても困ります。関係といっても見ての通りですし、同棲することになったというのは、伝えましたよね?」

「い、いつも!?同棲って………この前会ったばっかなのに、スゲェな…。」


 何か勘違いしているようだが、問題ないだろう。

 アサがマキアを諦めてくれればいいのだけれど。


「そんなことより、検証をしようか!時間が無いだろう!」

「そうですね。お願いします。」

「まずは、この空いた空間を囲えるか?」

「はい。」


 サイトの指示する机の無いスペースに、この部屋のような空間をイメージして白い囲いを想像した。

 目前の思った通りの位置に、大きな白い箱状の壁が発現した。

 手を伸ばして触って見ると、一瞬押し戻される感じがしたが、押し込むと手が中に入ってしまった。

 不思議な感覚だ。

 直感が危機察知したのと似たピリッとする感覚がして、その位置見ると、サイトが同じように空間に触っていた。


「触られている感覚が分かるか?中に入るぞ。」

「はい。」


 サイトの手から空間の中に入っていくと、その間壁に攻撃を受けているという感覚があった。

 そして、サイトが中に入り込んでしまうと、空間の中に何かが入っているのがわかる。

 あ、また壁に触られている。

 不透明な白い壁の向こうなのに、壁に触られているのが分かった。

 自分の身体でもないのに、感覚が繋がってる感じが少し気持ち悪い。明日はこれをもっと広い範囲でやるとか…やる気無くなってくる。


「声が通らないか?レイも、中に入ってくれ。」

「声ですか?何か言ってましたか?」

「うむ。囲ってあると、声が届かないようだな。中に入ったものが逃げないようにするんだろう?声が聞こえないのは不安だからな。レイも中に入ってくれ。」

「わかりました。」


 白い壁から首だけ出したサイトに従い、中に入る。2人だと狭く感じる。


「攻撃をするから、隔離で防ぐようにしてくれ。」


 サイトが壁を殴る。

 壁の不快感を感じた位置を隔離と念じる。

 殴ったサイトの手は、壁を通り抜けること無く跳ね返った。

 同じ位置をノックするようにコンコンと叩かれる。隔離のおかげで、通り抜ける様子はない。

 隔離でバリアとか言ってたと思うが、丈夫そうだ。

 そう思った時、バリンと音が聞こえた気がした。隔離が破られたのが分かった。

 直感がヤバいよと告げるままに、破れた位置を再度隔離する。そして、また隔離が破られる。


「うむ。この隔離が破られる感覚は分かったか?」

「はい。」

「少し気になった。このまま隔離しないでもらってもいいか?」

「わかりました。」


 サイトが手を軽く上げて、振り下ろす。直感がヤバいと思うと言っているが、サイトに言われたので無視して何もしない。

 そして、サイトの手が壁に当たった瞬間、囲いが消えた。


「え!?何をしたのですか!?」

「うむ。隔離が無ければ、強い攻撃で囲う魔法が解けるようだな。気を付けろ。だが、超直感の危機察知はこの空間にも働いたようだな?」

「え?はい、そうです。」

「そうか。なかなか面白いじゃないか!弱い攻撃なら当たった感覚で隔離をする。そして、魔法が解けるような強い攻撃なら危機察知が働くとは…攻略しがいがあるな!」


 え?強い攻撃?軽い動作で叩いたように見えたのに?あと、なんで危機察知されたのが分かるんだ?

 …最強サイトなのでその辺は置いておくとしても、壁のように見えるのに一部が破られると全面が破られるようだ。超直感の危機察知が働くようだから、囲ったらすぐに隔離できるように集中しようと思う。

 それもいいとして、攻略しがいがあるだと?この流れには覚えがあった。


「うむ。では、次は俺が中に入って空間を破ろうとするから、防ぐようにしてくれ。」

「検証は済みましたよね?もういいのでは無いですか?」

「む?明日の練習だろう?様子を見ながらやっていくが、これなら盛大に暴れても平気そうだな。もう一回囲ってくれ!」

「レイ、今のは白い壁だったけど、透明にできるはずだ。突然白い壁が出現したら街側からも人間が来て、隔離が大変になると思う。あと、声も届くように設定できるはずだから、もう一回やって見たら?」

「…わかりました。」


 サイトが盛大に暴れるとか、不安過ぎるんだけど!?

 さらにアサからの追い打ち。断れない。

 サイトが暴れるのと同じ空間に居るのは怖いので自分を外にして、サイトだけを囲う透明で声の通る壁を想像した。

 手を伸ばすと、透明な壁に当たる。上手く透明な囲いになったようだ。


「声は聞こえているか?」

「はい。そちらも聞こえますか?」

「うむ。問題ないな。」


 頷いて攻撃を始めるサイトに、超直感の感覚に従って囲いを破られないように隔離をしていく。

 壁を守っているわけだが、囲ってある壁の感覚がなんとなくあるので、自分が攻撃を受けているような気がして来てイライラする。

 でも隔離とか言う名前のちょっと強そうな障壁を、一撃ずつで楽しそうに割っていくサイトを見ていると、直接戦うより壁越しの方がましな気がした。隔離って名前負けの弱い魔法という事はないよな?直感が否定しているので、サイトが強いという証明がまた一つ増えてしまった。

 壁越しで良かった。空間魔法も超直感も、素晴らしいスキルだ。

 ただサイトに勝つとなると、ラストが強かっただけかもしれないが記憶操作をされていたし、ジョンの洗脳も避けようとしていた所から、魔法で精神に作用する感じには弱いのかもしれない。

 精神操作とか、どうやるんだろう。上手くイメージ出来る気がしない。

 せっかく壁越しだし、このまま押しつぶしたら勝てるだろうか。

 前後で押しつぶすように隔離の障壁を狭めてみたが、前後一撃ずつで割られてしまう。

 上下も合わせて四方から狭めて見ても、4撃で割られてしまう。


「ハハハハ!面白そうなことをしているじゃないか!」


 やばい、サイトを調子づかせてしまったようだ。

 慌てて全面を隔離してみた。空間が小さいからか一度で隔離できたが、その分一撃で割られてしまう。

 多重障壁の方が有効ということか?

 激しくなる攻撃に、何枚も隔離の障壁を張るが、防戦一方だ。

 明日は出さないようにするだけだから、練習としてはそれで問題ないんだけど、何とか一矢報いることができないだろうか。

 隔離が思った以上に魔力を使うので、このままだと魔力切れになりそうだ。それよりも、時間が…。


「ストップ!ストップ、サイト!」


 超直感の警報に従って、慌ててサイトに止めるよう伝えた。

 ぎりぎりセーフだ。

 サイトの攻撃は、多重の隔離も囲いも全て打ち消したところで止まっていた。

 時間が来たようで、無性体に戻っていた。このままの勢いで攻撃されたら危ないところだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ