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実戦的指導をされていましたが、先に休憩します

 ユーナ指導のラストの完成が楽しみだが、よく考えると会場となる聖堂まで付いていけるか微妙か。

 転移や空間魔法の維持もどれくらい負担がかかるか分からないし、ジョンを拘束した後の取り押さえも何人まで絞れるか分からない。ここは幸運が頑張ってくれるのを祈る。


「やっぱり、明日は俺も行って手伝うよ。そのジョンとかいうのも契約見れば取り押さえるもの楽になるかもしれないし。」

「アサは人間側に行って大丈夫ですか?」

「俺の契約は、交戦地も含んでいるから…交戦状態になっていれば行っても平気。どのタイミングから交戦状態かは微妙だけど、今日先にセルディを開放してアミナがジョンの所に先行潜入するって言うなら、そのタイミングから始まってるってことになるんじゃないか?」

「そうですか。なら、空間魔法で囲うのも任せられますね。」


 さっそく幸運が頑張ったようだ。

 アサがジョンを鑑定するということで、昨日超直感を駆使してジョンの攻略を考えたのが若干無意味になった気もするが、安全第一。戦力は多い方が良いよな。

 空間魔法で囲うとかやったことないし、慣れている人に任せたい。


「悪いんだけど、いろいろあって俺の今使える空間魔法の容量は少ないし、隔離も使えないんだ。だから城を囲って閉じ込めるとなると、レイの両生体でしかできないよ。」

「そうなのですか?」

「あと使えるMPも制限がかかってるんだ。ここの空間の維持もすると、使えるのは干渉力6くらいのMPだと思ってくれていい。転移だと、ここから人間側に俺を含めて片道4、5人が運べるくらいだな。

 ちなみにこっちに来た時に城の転移地点登録は消したから、一番近いのが昨日レイを運んだ裏路地だよ。だから行きも、今日地点登録するレイに転移してもらうことになるけど。」


 そう簡単にいかないようだ。もともと一人で雑用するつもりだったし、戦力が増えたと思えばありがたいのは変わらない。

 ただ、囲うとか隔離とか一回もやったことがない。両生体になったことが無いからだ。

 今の転移地点は4カ所だし、あと2カ所を登録するのと練習するために今日は両生体を使うべきだろう。

 城で2カ所登録して戻ってきたら、囲うのと隔離の感覚の検証。30分しかない時間だ。サイトと戦う時間はないだろう。ちょうどいい。

 それにしても、いろいろあって魔力と隔離と空間容量が使えなくなったって封印みたいだな。

 …その容量を何かに使ってるってこともありえるか?もしかして、アサの彼女関連?でも隔離って、彼女が嫌がってるのを抑え込んでるってことじゃないか…?

 恐る恐る直感に聞く。アサって、彼女を隔離してる?

 微妙な感じもするが、ほぼ合ってる気がする。ということは、そういう事なのだろう。

 アサ、怖い!ヤンデレ怖い!

 自分の中の危険人物順位が、サイトよりアサが大幅に上回ったのは仕方ないだろう。

 

「気にしないでください。それよりも両生体を使うということは、30分しか城の包囲ができないということです。大丈夫ですか。」

「聖堂に集めるみたいだし、集まったらそこで見張ればいいだろ?」

「そうですか。あと、地点登録を増やすのと囲うのと隔離を使う練習で今日両生体を使いたいので、それから24時間は作戦が難しくなります。」

「うむ。ではレイがアミナと別れてから、25時間後を作戦決行としようか。戻ってきたら空間魔法の練習相手になろう。」

「いいえ。時間も少ないですし、感覚を掴みたいだけなので遠慮します。」

「だが隔離を破られた時の感覚とか、囲われた空間に人が出入りする感覚をつかむには相手がいるだろう?」

「そうだな。隔離は基本破られないけど、サイトなら俺のバリアも破ってたもんな。その感覚を試すのにちょうどいい相手だと思う。」

「そうですか…。では、お願いします。」


 まさかの。時間が無いからサイト要らないが通用しなかった。

 しかも、空間魔法の持ち主からのお墨付きって…断れるわけが無かった。

 そしてまた、ずっと味方側のはずのアサのバリアをサイトが破るとかいう謎状況…もういいや。きっと二人は模擬戦でもしていたのだろう。そういう事にしておく。


「リョータが協力してくれるなんて心強いです。」

「だいぶ弱体化してるけどな。役に立てれば嬉しいよ。」

「そうですね、はやく戦争を終わらせましょう。レイヤードも、リョータから性別の話聞きました。時間制限があるんですよね。短期決戦で頑張りましょう!」

「はい。ラストは、大丈夫そうですか?」

「大丈夫です!打ち合わせはバッチリですよ?すぐに戻らないと、明日に差し支えますよね。戻りますか?」


 ラストを見ると、首を捻りながらブツブツと呟いている。

 明日のセリフだろうが、本当にバッチリなのだろうか。大丈夫だと思いたい。

 プロのアイドル聖女の手腕を信じることにする。


「俺がラストを連れて帰ろうか?明日もここまで連れてくればいいんだろ?連絡すれば連れてくるぞ!」

「サリアーノ…お願いしていいのでしょうか。」

「当たり前だ!」


 作戦に協力してくれるということだろう。

 でも、怒ってるんだよな?嫌われたのは、悲しい…。

 

『ちゃんと、俺を、呼べよ!』


 念話が送られてきて、サリアーノを見るが、目をそらされる。


「サリー!あはははは!」

「終わったんだろ?メイも一緒に戻るぞ。」

「あははは!」


 なぜか爆笑するメイ。見るとアミナの懐に入っている。

 もしかして連れて帰る気だったのか?メイはあげないぞ!


「もう帰るんだ?」

「うん!サリーが言うからー。」

「またね。」

「またねー!」


 アミナと手を叩きあったメイがこちらに飛んで来た。

 目の前に止まったメイに頭を撫でられる。


「サリーは拗ねてるだけだよ?頑張れー!待ってる!」

「はい。待っててください。」

「もういいな?先に戻るぞー?」


 微笑みあった後メイがサリアーノに近づき、他から追加案件が無かったことで、羽付きの三人は転移で戻って行った。

 あ、果物を渡せば良かった。後で時間があれば寄ろうかな。

 …サリアーノが拗ねてるってどういう事だろう。

 念話、また繋げたままになってる。王子様カラー美少年妖精…もとい、王子様な妖精のさりげない優しさに感動する。仲直りしたい。


「私達も行きますか?」

「そうですね。地点登録したらすぐに戻るので、聖堂に連れて行ってもらう約束が伸びてしまいました。」

「そんな約束もしましたね。城の聖堂も似ていますよ。監視があると大変なので一人で帰るようにしますけど、城の聖堂なら行くついでになりますよ。明日の予定もありますし、城の聖堂まで一緒に行って地点登録もしますか?」

「せっかくなので、お願いします。」

「いいですよ。」


 聖堂といえば、手のひらサイズの時計が飾られている場所か。楽しみだ。

 

「マキア、行って来ます。出来るだけ早く戻ってくるので、ここでサイト一緒に待っていてください。」

「分かってるわ。気を付けてね。」


 一度抱きしめてから、握ったままだった手を放して立ち上がる。

 

「では行きます。手を貸してください。」


 ユーナとアミナの手を握る。

 あとはアサの隠蔽か。今は女性体だからスキル無効は無い。

 性別を替えられるのは便利だけど、スキルが変わるから若干混乱する。


「隠蔽をかけるよ。」

「はい。お願いします。……見えなくなっていますか?」


 あまり変化した気がしないが、契約陣が見えなくなった時も違和感は無かった。

 ユーナとアミナと握った手にも違和感はない。


「見えなくなりました。」

「見えないのに、握った手の感触があるのが不思議だね。」

「大丈夫そうだな。じゃあ、いってらっしゃい。」

「はい。行って来ます。サイトも待っていてくださいね。」

「ハハハハ!もちろんだ!」


 そうだろう。両生体で戻ってくるというのに、サイトが先に帰るはずがない。

 それでも、マキアをアサと二人きりにしないためには、今はありがたい。

 一呼吸して、転移した。





 ユーナとアミナの家だ。


「このまま城に行きますね。レイヤードは見えないので手を…そうですね、腕に掴まっていてもらってもいいですか?」

「そうだね。どこにいるか分からなくなりそうだ。」

「わかりました。ユーナの腕に掴まっています。」


 一度握った手を放して、ユーナの腕につかる。

 ユーナを真ん中にするようにアミナが反対に移動して歩き始めた。

 ユーナとアミナが話すのはいいとして、姿が見えなくなっている自分がしゃべるのは怪しいか。

 黙々と付いて行くことにした。

 見えなくなっているとはいえ、アイドル聖女と腕を組んで歩いているなんて、凄くないか?いや、ファンにばれたら面倒か。昨日も怪しい奴扱いだったし。





 歩いて10分くらい所に城はあった。

 城って言うから塔とかがあるような西洋の城をイメージしていたが、全然違った。

 砦というのか、もっと実用的な…そう、学校の校舎みたいな?そんな感じだ。

 2校舎あって、真ん中には体育館のような建物もある。

 敷地を示すように囲われた塀も門も、学校っぽい。

 ただ門の左右には2人立っている。皮の防具で槍を持ち、昨日の聖女親衛隊と似た出で立ちだ。城に居るなら、たぶん兵だと思うけど。


「アミナだよ。昨日出たから、帰ってきた。」

「そうか。そっちは?」

「ユーナです。セルディに治癒の件で聞きたいことがあって、アミナに付いて来ました。」

「異世界人か。長居する予定は?」

「ありません。セルディと話したら、せっかくなので聖堂にも寄るつもりですけど、そのくらいです。」

「セルディの所には、わたしも付いて行くよ。」

「わかった。あまりウロウロしないように。」

「はい。気を付けます。」


 ユーナの聖女スマイルで乗り切ったようだ。

 学校…じゃない城に潜入したが、ウロウロするなって…聖女様に治癒されたくない人がいるって言ってるみたいだな。この警備大丈夫か?

 二人について校庭…グラウンド…言い直しても同じだな。ともかくそっちに近い方の建物に入った。


「ここは兵舎棟で、泊まれるようになってるんだ。ジョンもセルディもこっちに居るから、他の異世界人も基本はこっちに居ると思う。」

「反対側が政務棟です。召喚に関することはあちらの棟にあると聞いています。」


 二人が小声で教えてくれた。

 辿り着いた部屋。ノックで出てきたのは、イケメンだった。

 深みのある緑の髪が、鮮やかな緑の髪だったユーラスを彷彿させる。とはいっても、ユーラスのような中性的な感じより男らしさが強い見た目だけど。

 これはジョンじゃないよな?ジョンはもっとイケメンなのだろうか。期待が高まる。


「セルディ、話があるんだけど、入っていい?」

「アミナとユーナか?珍しいな。どうぞ。」

「お邪魔します。久しぶりですね、セルディ。さっそく治癒します。」

「なっ!………なんだ?」


 中に入り、扉が閉じたと同時にユーナが治癒をした。

 

「洗脳がかかっていましたよ。ジョンが異世界人に洗脳をかけているようです。城の人間の治癒はもしかしてセルディが行っていましたか?」

「ユーナは街の人の治癒で忙しいから、代わりにするように言われたから治癒はしていた。だが、洗脳?異世界人にか?」

「そうだよ。心当たりない?」

「そういえば、魔族側に攻めに行ったが、他の異世界人は魔族に会ったこともないのに攻撃的だったな。」

「え?あんた、魔族側に攻めに行ったんだ!?」

「そうだ。交戦となると、参戦はしないといけないからな。後衛ということで行ったが…そういえば、その時リョータにも洗脳されてると言われたか。洗脳の解除が出来ないとか探すとか言っていたが、撤退を優先したな。もう少し待っても良かったのに、任務の遂行の意志が強かったのは洗脳のせいだったのか。」

「リョータと戦ったんですか?大丈夫でしたか?」

「いいや、サイトだ。前衛の二人と戦って勝っていた。相変わらずだったな。

 俺は後衛だから元々戦う気は無いし、前衛が動けなくなった時点で撤退準備だ。そういえば、いくら俺は戦わないとはいえ前衛がサイトに攻撃するのを見て、特に感情が動かなかったな。洗脳のせいかもしれない。」


 起伏のないしゃべり方。個性的だな。

 洗脳されて攻めてきた異世界人の内の一人がこのセルディだったのか。

 洗脳が解けているのに、魔族側に攻めに行った話をこんなに淡々とされると拍子抜けする。

 表情もほとんど動かないし、イケメンだし、作り物みたいだ。

 そして、本当に洗脳されていたのか分からないような微妙な感じ。アミナもそうだったが、治癒持ちだと洗脳されても微妙な洗脳のかかり方になるんだよな。こうして聞いていると、洗脳って怖いものなのか分からなくなる。


「そうだったんですね。今日サイトとリョータに会いましたけど、元気そうでしたよ。明日この城で戦争を止めるための作戦を決行します。セルディも協力してくれますか?」

「二人に会ったのか。元気そうなら良かった。戦争が終わるということは、契約も終わるということだろう。俺も協力させてもらう。洗脳を解いてくれてありがとう。」

「いいえ!セルディを助けられて良かったです!こちらこそ、協力感謝します!作戦の説明をしますね。」

「とりあえず、座ってくれ。茶を出す。」

「え?いいですよ!急に来たのは私達ですし…。」


 ユーナの遠慮を無視して、部屋の一角にある大きな急須のようにも見える土瓶を準備し始めた。

 ここで一服することになるようだ。

 部屋を見回す。

 セルディがきれい好きなのか、部屋は片付いていて、物自体も少なかった。生活感が薄く見えた。


「セルディー、お茶は4つお願いね!」

「ん?ああ、分かった。」


 隠蔽のかかった自分は見えてないハズなのに、一瞬不思議そうな声を出しただけで、了承した。

 4人掛けのテーブルだ。ユーナの隣の席に座りアミナは自分の正面に座ったが、自分が見えないセルディは、後でその席順にも困惑すると思う。

 薄い感情表現を見逃さないようにしたい。

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