警戒していないそうですが、センスがいいようです
ユーナの聖女作戦で戦争を辞めさせると考えると、すでに街の人間は治癒洗脳で信者化しているので、残りは国の中枢ということだろう。
そこにはジョンという洗脳スキル持ちがいて、洗脳された他の異世界人が居るだろう。しかし、その洗脳はユーナ治癒で解除できるから、それほど難しい話ではないかもしれない。
そういえば、洗脳をかけているジョンは洗脳されていないのに、なぜ国に従っているのだろう。ジョンが仲間になってとユーナの二人がかりで洗脳すれば、国の中枢の支配も上手くいくと思うが…もし上手くいかなければ、ユーナが治癒で洗脳を解除した端からまたジョン洗脳されてしまう、いたちごっこだ。
「すみませんが、ジョンがなぜ国に従って洗脳をしているのか分かりますか?」
「ジョンが?そういえば、契約がどうとか言ってた気がする。」
「ではジョンも国の被害者ということですね!洗脳をするなんて酷いですが、彼も止めてあげたいです。」
おい聖女。洗脳するのが酷いって…治癒で街の人間を洗脳してるの誰だっけ。
でも、うるんだ瞳で人助けを望む姿は、可愛いから正義とする。
「そうですか。その契約ってどうにかする方法は知りませんか?」
「契約によっては逆らうことが出来る場合もありますが、自分で契約の確認ができません。召喚された時の記憶頼りか、リョータの鑑定スキルなら契約が確認できます。契約が分かれば、もしかすると何とかなるかもしれません。」
「そうだね。わたしも、人間の言うことは全部逆らえないと勘違いしていたけど、リョータのおかげで逆らえることが分かったよ。ジョンも勘違いしてるかもしれない。」
「レイヤードに鑑定スキルがあったり、しませんか?」
「残念ながらありません。」
「そうですか…。残念です。」
…残念がられてしまった。
アサって、鑑定スキルは大したこと無いって言ってなかったか?
二人の反応を見る限り、その鑑定スキルは大活躍していたようなんだが…。
すごいスキルと言われていたならともかく、大したことない扱いされているスキルに負けたみたいで非常に悔しい。ここは、超直感スキルと自分の勘を信じて問いかけてみる。
ジョンは契約があるから、国に従っているんだよな?直感は正。
もしアサが鑑定したら、ジョンを止める方法が分かる?直感は正。
ちなみに、ジョンが自分の契約内容を覚えているか?直感はだいたい正。
ジョンに会いに行けば、契約の話を聞ける?直感は、ほとんど否。
覚えているのに聞き出せないなら、裏切れる方法があると伝えたら自分で裏切れるか?直感は否。
つまり、自分から裏切れない契約ということ?直感は、正。
「契約の内容が分かれば対策ができそうですが、ジョンから裏切ることが難しい契約のようです。
リョータは契約的にこちらに来るのは負担になると思うので、リョータに頼るのは最終手段にしたいです。」
「レイヤードは鑑定が無いのに、契約が分かるんですか?」
「なんとなく分かるだけなので、詳しくは分かりません。もう少し情報があれば、分かるかもしれませんが。」
「すごいですね!」
「情報と言うと…治癒スキルで洗脳に抵抗できるなら、セルディも抵抗してるんじゃない?」
「そうですね!洗脳されているかもしれませんが、抵抗してるならいきなり攻撃してこないと思いますし、治癒の件で相談と言えば怪しまれずに会えると思います。会えれば私が洗脳を解くので、情報を聞き出せると思います!」
すごいと言われた。
リョータはこっちに来るのが難しいし、自分は情報しだいで正解が分かる可能性を残しているので、引き分けと言うことでいいだろう。引き分けだ。
ちなみに、そのセルディからの情報でジョンの契約が分かるか?…直感は否。
そう簡単にジョンは止められなさそうだ。
いや、裏切れないのに止めるということは、力づくで止めるということか?洗脳系スキル持ちに対抗するには、治癒などのスキルが必要だろう。治癒持ちらしいセルディを仲間にして4人で、ジョンを止められる?
直感が正解と告げた気がした。
ジョンの契約は分からないが、対策方法は分かった。
流石超直感だ。引き分けどころか、大勝利だ!
「ジョンの契約は分かりませんが、裏切れないので力づくで止めるしかないと分かりました。洗脳が怖いですが、セルディという方も治癒持ちですよね?なんとか止められるかもしれません。」
「力づくって…でも、ジョンを止めないと仕方ないですよね。」
「そういえば、セルディのスキルは防御魔法じゃなかった?洗脳される前に、防御魔法を使ってもらえば、治癒スキルの抵抗と合わせて、洗脳されないかも。洗脳されても嫌なことは断れたし、ジョンを止めるくらいなら出来ると思うよ!」
防御魔法のセルディか…防御魔法と治癒スキルで洗脳にかからない?直感は、否。
その状態でジョンを止めるのは可能?直感は正。
つまり、洗脳されてもジョンを好ましく思うくらいで、行動は制限されないってこと?直感は正。
スキル無効の自分もその状態になる?直感はだいたい正。
…行動の制限はされなくても、スキルで好意を抱かされるなんて嫌だな…。
「防御魔法を合わせても洗脳にはかかってしまいそうですが、アミナの言う通り行動の制限はされなくなるようです。」
「本当ですか?それなら、ジョン対策は大丈夫ですね。」
「行動の制限をされない洗脳なら怖くないね!わたしも、ユーナの役に立つよ!」
「無茶はしないでくださいね?今だって、洗脳が解けたばかりなんですよ?」
「わかってるけど、その洗脳中も大したこと無かったんだ。セルディの防御魔法でもっと大したこと無くなるなら、全然平気だよ。油断している内に何とかしようよ。」
「アミナ…!私、頑張るね!」
この流れはまたアレか?
マキアとメイが恋しくなるアレが来る前に、とっさに口を挟んだ。
「戦争を辞めさせるのですよね。ジョンを止めた後の作戦はありますか。」
「え?…異世界人の洗脳を解いて、城に居る人間に治癒を使うつもりでしたけど?」
「治癒の効果ってそんなにすぐに出るのですか?」
「すぐには…出ないです。」
そうだろう。洗脳効果があるといっても、治癒なのだから。
その効果が出るまでジョンを押さえておくとなると、いつまでかかる分からない。
そんなことになったら、帰るのが遅れてしまうじゃないか。
それに、潜入調査の調査項目として挙がっている異世界人召喚を防ぐ方法を考えなければ、ここで一旦戦争が終わっても、またどこかのタイミングで戦争を開始しようとする可能性もあるだろう。
「それから異世界人の召喚を防がないと、洗脳が切れたらまた戦争を始めると思います。そのことは考えていましたか?」
「洗脳した後に資料を破棄させるつもりでしたが…それだと、記憶が残ってしまいますよね。戦争が終われば、ジョンの契約が切れると思うので、ジョンのスキルで記憶操作できませんか?」
そんなことを聞かれても知らん。なぜ、聞く。
ああそうか、直感に聞いて欲しいということか。ジョンは記憶操作できる?直感は否。
「ジョンのスキルは記憶操作できないようです。」
「そうでしたか…。」
「ちなみに、召喚の知識などはまとまっているのですか?」
「そうです。召喚は神から与えられた特別な術と言われていて、国の中枢にかかわる人間だけしか方法を知りません。召喚自体も城で行われていて、資料も城からの持ち出しは禁止だそうです。」
召喚の知識はまとまっているようだ。欲しかった情報ゲットだ。
最悪、城に居るとかいう人間と城ごと無くせば、街は聖女様が掌握済みだから戦争をなくすことはできるだろう。
でも人間を殺すのは、自分の良心としても、聖女的にも、魔族的にも良くないだろう。
「そうですか。何かいい方法が思いつくといいのですが。」
「そうですね。もっと考えてみます。」
「そろそろ午後になるし、夕飯にする?」
「そうしましょうか。レイヤードも一緒に食べますよね?」
「お気持ちは嬉しいですが、気にしないでください。」
「そうですか?では、この隣の部屋が空き部屋なので使ってください。案内しますね。」
「ありがとうございます。」
ユーナに案内されて、本日泊めてもらう部屋に来た。
ユーナやアミナの手料理なんて心惹かれるが、この体では肉類の摂取をしたくないし、そんな説明をして手間をかけさせるのは悪いだろうと思い遠慮した。光属性の循環で、体の維持は十分だ。
それよりも、記憶操作と言われてサイトの記憶消したあの4人が思い浮かんだ。
魔族はこちら側に長くいられないようで虹種族は短い時間でも危なさそうだったが、影種族はアサがダルに買い物を頼んだという話を聞いた限り、多少は大丈夫そうだ。
4人の中の、たぶん闇種族だよな?あの羽が虹種族とダブって見えて、こちらに来ると危なさそうな気がするが…必要な情報はゲットしたし、一度帰って相談しようか?
もし大丈夫そうなら手伝ってもらえば…特に天使っぽいラストなんて、聖女作戦とも相性がいい気がする。相談してみようと思う。
窓から見える空が、紺色に変わっていく。寝る時間だ。
夕飯を作ってそれを食べてから寝るというユーナとアミナは、まだ食事中だろう。
人間側と魔族側で就寝時間も違うのかもしれない。
どうして違いがあるのかは分からないが、自分は魔族側の就寝時間に合わせて、一人寂しくベッドに潜り込んだ。
明日、帰ろう。
帰ったら、マキアとメイをギュウギュウ抱きしめたい。
その前に、メイに謝らないと。メイ、怒ってるかな…?
ずっと念話を繋げてくれているサリアーノにもお礼を言わないといけないな。
一日で調査項目を調べ終わったから、喜んでくれるかな?
喜んでくれるといいな。




