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決めましたが、警戒していないそうです

 アサについての意外な話を聞いたり、楽しく話していると、ノックの音が響いた。

 振り返ると戸が開かれ、部屋に金髪の女性が入ってきた。


「ユーナ、ただいま。お客さん?」

「そうです。彼女がアミナですよ。」

「わたし?アミナだよ。あなたは誰?」

「レイヤードです。聖女様に治癒をしてもらうために来ました。」


 アミナは、笑って対面のユーナの隣に座った。

 洗脳されているのか、さっぱり分からない。一緒に暮らしていたユーナが今まで気づかなかったのだから、初対面の自分が違いに気付けるわけも無いか。


「そうなんだ?治してもらったの?」

「はい。もうすっかり良くなりました。」

「ユーナの治癒はすごいんだよ。治って良かったね。」

「はい。ところで、お付き合いしている方が居ると聞きましたが、どうしてお付き合いしているか聞いてもいいですか?」

「突然だね。ジョンのこと?どうしてって、顔がいいでしょ?わたし、あの顔が好きなんだ。」

「そうですか。」


 顔が好き?アミナって洗脳されてるんだよな?直感はそうだと言っているのに、ちょっと違和感がある。

 洗脳して彼女にされているなら、あっけらかんと顔が好きなんて言うものだろうか。もっと、心酔していてもいいと思うんだが…。

 ともかく、ユーナと目を合わせて頷きあう。


「アミナ、あなたを治癒しますね。」

「いいよ!ユーナ疲れるでしょ?わたし具合悪くないし、自分で治癒できるから大丈夫!」

「アミナ…私に治癒されるのが嫌ですか?」

「そんなことないけど、ユーナは大変だから、わたしに治癒を使わせない方が良いって…ジョンが。」

「…今まで気付かなくて、ごめんね。」


 アミナが光った。ユーナが治癒を使ったようだ。

 数秒でその光が消える。アミナの洗脳は解けた?そんな気がする。

 正常に治ったようだ。


「アミナに洗脳がかかっていました。今解きましたが、おかしなところはありませんか?」

「洗脳?わたしが?誰に?」

「ジョンという相手に洗脳を掛けられたはずです。どうして、ジョンと付き合っていたのですか?」


 混乱しているアミナに、再度質問を投げかける。


「それは、顔が好きだからだけど…そういわれると、確かに変だ。胡散臭い笑い方が残念だなって思ってたのに、なんで付き合うことにしたんだろ…?」

「ユーナの治癒は嫌ですか?」

「そんなわけないよ!ユーナはふわふわして見えるけど割と計算高いから、わざわざ治癒持ちのわたしに治癒するなんて言い出すなら、何かあったに決まってる!…どうして、断ったりしたんだろ…。

 わたし、本当に洗脳されてたのかも…。」

「アミナ!今まで気付けなくてごめんね…!」

「いいよ。よくわからないけど、治してくれてありがと。流石ユーナだね。」


 二人がひしっと抱き合った。

 ここで混ざりに行くには、部外者過ぎるか。

 抱擁を交わす二人を見ていると、マキアとメイの所に帰りたくなってきた。

 このままぼんやり眺めているとお邪魔かとも思ったが、早く帰るための情報源であるアミナを逃すわけにはいかない。おとなしく、二人が落ち着くのを待つ。


「取り乱してすみません。アミナ、レイヤードが洗脳のことを教えてくれたんだよ?」

「そうなんだ?ありがとね。でも、治癒してもらいに来たんじゃなかったの?」

「それは嘘です。リョータから聞いて、こちら側で異世界人を洗脳して魔族側に送り込んでいる状況などの調査に来ました。」

「リョータ?なら、魔族側のヒト?」

「そうです。早速ですが、アミナは洗脳されている間の記憶はありますよね?どういう状況か聞いてもいいでしょうか?」

「いいけど。状況って言っても、わたしはあんまり洗脳されていた気がしないんだよ…。

 付き合う気はしなかったけど、元々ジョンの顔は好みだし。

 ユーナの聖女活動を手伝わなくていいって言われて気落ちしていた所で声をかけられて…気付いたら好きになってたから、あの時から洗脳されていたとは思うけど。」

「やっぱり、私のせいですね…。」

「そんなことないよ!ユーナはすごいんだから!わたしも、力が足らなくて協力できなくてごめん…。」


 またひしっと抱き合う二人。これ、いつまで見てればいいんだ?


「…ええと。では、アミナはジョンから嫌なことを指示されたりしませんでしたか?」

「嫌な事?そういえば、偉い人間の治癒をしろとかって言われたけど、ジョンならともかくユーナの聖女活動の邪魔になりそうだから断ってやったよ!ああ、今考えるとジョンの治癒もしてやる必要ないね。あの顔に瑕がついたら残念だけど、やっぱり洗脳されていたみたいだ。」


 …本当に洗脳されてたのか?

 こんなにジョンの顔がいいと言われると、そんなにイケメンな顔を見たくなる。

 でも洗脳状態ですら、アミナはジョンよりユーナが好きだったようだが。


「そういえば、アミナは回避スキルがあったでしょう?反応しなかった?」

「しなかったと思う。わたしにとって都合の悪いことが起こる時には、自動回避か最低でも反応するはずなんだけど。ジョンからあんまり嫌な事されなかったからかな?」


 洗脳されているのに嫌なことは断れるっていうのは、ちゃんと洗脳がかかってない気もする。

 考えられるのは、ユーナの治癒スキルで抵抗できたように、アミナの治癒スキルもジョンの洗脳系スキルに負けたものの抵抗を続けたから、中途半端な洗脳になったとか?直感は正。合っているようだ。

 つまり、ジョンの洗脳スキルはユーナ以下でアミナ以上のレベルということだな?直感は正。

 二人のスキルのレベルは分からないが、アサかサイトなら知っているだろうし、洗脳のレベルが分かれば対応が出来るかもしれない。欲しかった情報ゲットだ。


「治癒スキルで洗脳系スキルに抵抗できるようです。嫌なことをされなかったなら良かったです。

 ジョンが何か言っていたりしませんでしたか?」

「そうなんだ。ジョンが言ってたこと?今日はユーナの様子を見てくるように言われたけど。」


 …聞きたかったことと、微妙に違う。でも、ユーナの様子?もしかして聖女作戦のことについて国が警戒しているということか?

 ユーナを見ると、同じ答えにたどり着いたようだ。


「もしかして、私の聖女活動について調べているの?」

「ジョンに聞かれて、ユーナが聖女として活動することで異世界人の立場向上を目指しているって教えたけど…ジョンが国と繋がっていたなら、わたし、ユーナの邪魔しちゃった?」

「もう気にしないで。ただ、アミナからジョン経由で国は私の活動を把握していたんですね。」

「そうかもしれない。ごめん…。わたし、毎回ユーナにどうだったか聞くと、まだまだって言うからそのまま伝えたんだ。だからきっと、人間達はユーナのこと馬鹿にしてる…。」

「え?」

「いくら洗脳されていたとはいえ、ユーナの作戦を話しちゃって…しかも、ユーナを軽んじらるようなことまで伝えててごめんね…!」

「ええ?」

「ちょっと待ってください!ユーナ、説明してください!」


 ユーナの活動がまだまだだって?治癒の洗脳で、怪しい男が出ると聖女様のためにその怪しい男を捕まえようとする動きがあるくらいなのに?そんなユーナを軽んじるとか…馬鹿にするとか…えええええ?

 ストップをかけると、申し訳なさそうなアミナと、混乱したようなユーナの視線が来た。

 混乱しているのは自分も一緒だ。

 視線でユーナの説明を促す。


「あの…アミナは街の様子を見ていないの?」

「いつもジョンの所からここに直で来るよ?活動はまだまだ…進んでないんだよね?」

「…アミナは勘違いしています。たぶん、アミナの協力を断ったあの頃と変わりないと思ってるよね?」

「違うの?」

「はい。今の街の人間達は私のことを聖女だと信じています。街で何かあれば私の元に教えに走って来てくれるくらいには、その…信仰されるようになりました。」

「それは、すごいね!…でも、ユーナはいつも、まだまだ頑張らないとって…。」

「アミナには協力を断ってしまったので、状況を聞かれるたびに、もっと頑張ろうと思ってそう答えていました…。」

「じゃあ、わたしがジョンに伝えていたことって…間違ってた?」

「そうなります。」

「そうだったんだ…。なら、警戒されてないってことだね?人間達がユーナを馬鹿にしてると思うと許せないけど、警戒されていないならまだ何とかなるよね?」

「…そう、ですね!今まで国からの横槍が無いのが不思議でしたが、アミナのおかげですね!つらい思いさせてしまいましたが、私、もっと頑張ります!」

「つらくなんてないよ!ユーナの役に立てて良かった!」


 またもやひしっと抱き合う二人…。

 もう街には聖女信者がいっぱいだよ。これ以上頑張るってどうするのさ。

 そうだった。戦争を辞めさせたいんだった。

 アミナのおかげで国は警戒していないようだし、このまま頑張れば本当に戦争が終わるかも。

 聖女様を応援して戦争が終わったら、褒めてくれるかな…?早く帰りたい。


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