潜入しましたが、今日の話です
登場人物も更新しているので、本日2ページ目です。
本編に戻ってきましたが、サブタイトル見切り発車です。
後から調整すると思います。
様子を伺いながら路地裏から、人の喧騒のある方に向かって歩き出した。
人間側に潜入調査か…ちょっと、ドキドキするな。
アサは普通にしていれば大丈夫と言っていたから、コソコソしないで堂々としていようと思う。
人の行き交う大通りに出た。
周りの人は、髪や目の色彩はカラフルな異世界仕様だが、他の部分は普通に人間に見えた。
カラフルなのは魔族側と同じで大分見慣れたし、言葉も聞き取れる。良かった。
ただ、エルフっぽいのは風種族だから居ないとして、獣人っぽいのが見当たらないのが残念だった。もしかすると、獣耳と獣尻尾のある魔族が居るのかもしれない。帰ったら居るのか聞いてみたいと思う。
道には露店が並んでいるが、その周りの建物は、レンガや木材が使われたような2~4階建ての家が密集するようになっている。
あちら側で見た家の形に変形した家の木も無いし、進む限り森っぽい感じはない。
道も土が平らに押し固められていて、村とか里っぽい感じではなく、ちゃんとした街なんだな…と、少し感動した。
やっと、異世界転生あるあるな感じになった気がする。
いや、妖精とかも異世界っぽいけど森な感じとかが…森で遭難して妖精達の隠れ里に入ってしまったような、異世界転生とか異世界召喚と言われて思い浮かぶ情景とちょっと違っていた。
それが幸運だったのは確かだけど、こんな風に異国感のある街並みを見ながら歩くと楽しい。
国外に出たことが無かったし、旅行もあんまりしなかったけど、普段見ない街並みを見ながら歩くだけでも楽しいな…。
なんて、目的を一瞬(しばらくの間)忘れていた。
そうだった。人間は敵だった。
早く調査しないと。それで、早く帰ってメイに謝らないと。
(やっと)我に返って、人の流れに流されるままだった周りをの人間を伺う。
確か、ユーナ・ツリーチェリーだったな。…さくらぎ ゆうな?直訳し過ぎか。アサが日本人だったから日本人風の名前で考えてしまった。そんな偶然無いよな。アサも、同郷は初めて会ったって言ってたし。
周りの人間の顔を見るが、誰に話しかければいいか分からない。
うーん。幸運がいい仕事するかな?
適当に近くを歩いていたおじさんに話しかけてみた。
「すみません。ユーナ・ツリーチェリーって知っていますか?」
「なんだって?」
見知らぬおじさんの眉間に皺が寄った。
これは、知っている反応なのか?話しかけられて不機嫌なのか?
「外の里から、ユーナ・ツリーチェリーに会いに来ました。」
「外の里だと?」
眉間の皺が深くなる。
え?外に里無いの?村の方が良かったのか?
「知り合いに、その人に会うように言われたのですが…。」
「悪いが、怪しい兄ちゃんに紹介出来んな。帰んな。」
低い声で言われた。おじさんは行ってしまった。
…ユーナ・ツリーチェリーを知ってる反応だったよな?なんで、怪しいって言われたんだ?
自分の言動を振り返ったが、普通だったと思う…。
立ち止まっていた自分に、後ろから誰かにぶつかられた。
「こんなところで、立ち止まるんじゃねぇ。」
柄の悪そうな人だった。でも今度こそ、幸運がいい仕事をするに違いない。
「すみませんでした。実は、ユーナ・ツリーチェリーを探しているのですが、知っていますか?」
「あ?何言ってんだ?」
「知り合いに会うように言われたのですが、どんな方なのか知らなくて…。」
「怪しいな。」
「え?」
「俺から聖女様のことは言えねぇな。」
怖い顔でそう言って、そのまま立ち去ってしまった。
幸運スキルも、微妙に役立たずだな!
聖女様って、知ってるじゃん!?どうして、紹介に結びつかないんだ!?
今回のセリフも思い返すが、怪しい所はないと思うんだが…。
とぼとぼと歩き出すと、露店から何かの串焼きのいい匂いがしている。
肉売ってる…確か、あちら側では食肉文化が無いんだよな。
…この体になってから肉は摂取してない。だから自分はベジタリアン。マキアとメイと一緒だ。
気にはなったが誘惑を振り切って、隣の露店に目を向ける。
野菜が売られている。そういえば、ロリとユーラスに会った里で野菜を育てていたな。これと同じだろうか?育てているなら、食べても問題なさそうだし、種類が違うならお土産になるかもしれない。
「いらっしゃい。」
そう思って店の前に立ったが、お金が無いのに気が付いた。
周りを見ると、コインのようなもので支払っている。もちろん、持ってない。
店主が不審げにこちらを見ている…。
「すみませんが、外の里から来ていて支払えるものがありません。手持ちにあるもので交換してもらえるか見ていただけますか?」
「そうか。高価なものは分からねえが、交換できそうなら替えてやるよ。」
「ありがとうございます。」
不審げな表情が、優しくなる。物々交換してくれるようだ。
やっぱり普通に話せば怪しくないよな?さっきのはなんだったんだろう。
ともかく、今の手持ちは黄イチゴと桃と時計の花だ。
野菜を売ってるくらいだし、果物なら交換してくれるかも。
レアな果物の中でも、桃の方が珍しいと言っていたから、黄イチゴならそこまで高価ではないだろう。
空間魔法の収納に入ってるのを、そのまま出すと目立ちそうだ。
何もないローブの裾に手を入れてそこでアイテムボックスを開き、黄イチゴを3つ取り出す。
「里で少し珍しい食べ物です。これをどれかと交換できますか?」
「なんだこれは?見たことないが…俺は光属性があるから鑑定するぞ。」
「どうぞ。」
不審そうに言う店主に、黄イチゴを渡す。
別に何も言わずに鑑定していいのに。そんなに、念押すことか?
「…なんだこりゃ!見れねえぞ!…こんなものを交換できない。」
「え?」
黄イチゴを返されてしまった。鑑定するって言ったじゃん!見れないってなんだよ!?
じゃあ、もっとレアな桃なんか無理だよな…。
店主の目が怪しい人物を見るようになっている。このまま引き下がったら負けたみたいじゃないか。
黄イチゴをローブの裾にしまい、次の物を出す。
これで最後だ。いざ、勝負!
「これは…!」
「すみませんが、今交換できそうなものはこれで終わりです。これは交換できませんか?」
時計の花。採取した時ぶりに見るが、どう見ても時計だ。野菜を売ってる人に時計の目利きが出来るか不安だ。
それにしても、時間停止していたからか、取り出した瞬間に針が回ったのには驚いた。
その瞬間は店主に見えないようにしたが、電波時計みたいな機能があるのかもしれない。
やっぱり不思議植物だが、お値段は期待できそうだ。
「ほ…本物か…?」
「失礼ですね。鑑定すればいいのではないですか?」
「……そんな…!?」
時計をぐいと店主に近付けるが、震えるばかりで受け取ろうとしない。どういうことだろう。
それにしても、店主の様子がおかしいからか、周りから注目されている気がする。
「早く鑑定してください。」
「………泥棒だー!!!!」
店主に指を指された。
どういうことだ!?何も盗んでないけど!?
周りの様子も一気に殺気だった。なんで!?
慌てて逃げた。
物理特化をフルで生かして、人の間を縫うように進み、人気の無い路地裏に滑り込んだ。
…思わず逃げたけど、冤罪だよな?何が悪かったんだろう?
手に持ったままの時計をとりあえず仕舞った。
時計もレアだったのかもしれないけど、泥棒は無いんじゃないか?
…もう帰りたい。人間意味わかんない。会話できない。
幸運スキル、仕事してる?




