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朝日ない世界・3

「どうかしたか?顔色が悪くなっているぞ。」

「不利な契約結んでる…。」

「リョータか?」

「いや、フェリーチェ。戦争中、国の指示に従う契約だ。」

「なるほど。好きで前線に居たわけではなかったのか。てっきり、戦闘になると性格が変わるタイプかと思っていたぞ。」

「まさかサイト…参加している異世界人は全員好きで参加していると思っていたのか?」

「違うのか?」


 サイトが驚いた表情をしている。

 本気で不利な契約を結ぶような異世界人はいないし、なら参戦しているのは好きで参戦していると思っていたようだ…サイト自身が、魔族と親善試合をしていたから。


「サイトは好きで戦争に参戦していたのか?」

「そうだぞ。人は弱いし、こうして魔獣を狩っているが獣では手ごたえがないからな。強い魔族との戦闘と言われれば心躍るだろう?」


 当然みたいな顔で言う。

 そういえば、魔法の世界で魔法の研究をしていたのか。それなのに、超物理攻撃特化なんて攻撃的なスキルになっているのは、そういう性格だからということか。


「俺は嫌だな。この前参加したのも、鑑定で契約を覆せないことに気が付いたから逆らっても無駄だと思ったからだ。たぶん次も、俺の契約は上官の指示なく交戦地から撤退できないから、逆らったら行き場がなくなる。空間魔法で生活空間を作れるけど、あまり気乗りしないな。」

「そうなのか?契約する時に、契約内容に気を使わなかったのか?」

「俺のいた世界は魔法が無かったからこんな強制力のある契約はないし、仕事が決まっても働く部署が移動したり、仕事も辞めたりもできたから。」

「職務内容だと思ったということか。魔法が無いということは、魔力も見えないのか?」

「魔力?見えないけど。」

「なるほど。あれほど魔力のこもった魔法陣の上での約束が契約になるのが気付かないとは…そういうこともあるのか…。」


 あれほどの魔力のこもった魔法陣…?なんか、いい感じのエフェクトで光る魔法陣だと思ったけど。あれを見て、キレイだとか異世界召喚といえばコレだとか思ったけど、危ないとは思わなかったな。

 でも思い出せば、読んだ異世界物のラノベで悪魔召喚した時、あんな感じで召喚陣から悪魔が出てきて、あんな感じで壁があって、契約が上手くいったら外に出られて、上手くいかないと送還したりしてたかも。

 イメージの中の悪魔の部分に俺を入れると、そのまんま今回の俺だな。契約で使役されてる…。

 あの時に気付けば、もっとましな契約を結べたのに…。


「うーむ。それでも、異世界転生を諦める選択肢もあるのに、ここに来ることを選んだ。ただの口約束だと思ったにしろ、約束したというなら仕様がないのではないか?」

「俺が仕方ないのは分かってるけど、フェリーチェは前の世界から偉い人に従うのが当たり前だと思っていたみたいで、たぶん召喚の時もあいつら高そうな服着てたから、そのまま従ったんだと思う。なんとかならないか?」

「ならないな。従うのが当たり前だと思うなら、契約通り従えばいいだろう?」

「はあ!?戦うのがあんなにつらそうなのに、そんなこと言うのか!?」

「つらくても直るだろう?」

「そのスキルもいらないって言ってるんだぞ!?」

「そうなのか?でも、自分で選んだスキルだろう。」

「契約だって、スキル選びだって、失敗することもあるんだよ!」

「そうか。なら、フェリーチェは楽にしてやったほうがいいのか?しかし、自己再生が厄介だな。どうすれば、再生しなくなるだろうか…。」


 楽に…?再生が、厄介…?それは、殺すってことか?

 猛烈に怒りが沸き上がってきた。

 物理攻撃特化のこいつを殴っても効くわけがない。ただの魔法も、魔法に物理干渉出来るから効かないだろう。

 

「そうじゃないだろ!」

「なんっ…!?」

 

 怒りのままに、火と風を練り合わせて魔力を注ぎ込んで、投げつけた。

 種火のようなサイズの火は、両手でガードしたサイトの腕に当たった瞬間、大爆発した。

 近くからの爆風に体制を崩してしまい、バリアを張る。

 尻餅をついてしまったが、他に怪我はない。怪我…や、ヤバいかも。

 殺すつもりじゃなかったんだ。ただ、生半可な攻撃じゃかすり傷もできないと思って、ちょっと懲らしめてやろうと思っただけで…どうしよう、俺、殺すつもりじゃ…。


「ハハハハ!不意打ちはいかんな!魔法の無い世界からやってきたというのに、なかなかイイ攻撃だ!次はこちらから行くぞ!」

「え…?」


 サイトの声が聞こえて来た。無事でよかった…良かった?…次?来る?

 爆発で土煙が晴れない中を、サイトが飛んできた。張ったバリアに当たるが、拳の一つで割れてしまう。

 反射的にいくつかバリアを張り、サイトの後方に転移。姿と諸々の気配などを隠蔽する。

 念のため、魔法の気配も消しつつ、何度か後退するように転移をした。

 土煙が晴れたところで、サイトが探すように、首を回している。


「む?リョータ居るのか?…逃げた…?そんな馬鹿な。今いいところだったのに?…そうか、隙を伺っているのか。悪くない。どこからでも来るが良い!」


 サイトは嬉々とした表情で、ファイティングポーズをとり、周りを伺っている。

 怒っていないようだが、なんか誤解してる…。


「いきなり攻撃してごめん!」


 声だけ掛けて、念のため転移する。

 サイトは声のした方を向いたが、飛び込んでは行かなかった。


「うむ。許そう。…来ないのか?」

「ごめん…。フェリーチェを殺すとか言うから…つい。戦うつもりはないんだ。」

「そうか…戦わないのか…。いい反射神経で、魔法のセンスもよさそうなのに。」


 隠蔽を解いて姿を見せるが、サイトから攻撃してこない。

 ただ、すごく残念そうだ。

 近くで見ると、服が全体的に煤けていて、腕の部分は破れて火傷しているのが分かる。


「ごめん…。殴ってくれていい。ただ、俺の物理干渉力は7だから、手加減してほしい。」

「ハハハ!気にしなくていいさ。獲物を回収してもらったから、それでいい。ただ、そんなに怒ることだったか?」

「ありがとう…。でも、怒るのは当り前だろ。殺すとかいうから。」

「む?戦争を止めるのに異世界人を協力させないという話だろう?だから、交渉が効かない者は殺すのかと思ったぞ。」

「俺には、そんな過激な発想はないよ。…ちなみに、サイトは説得されてくれるのか?」

「そうだな。あちら側で受け入れてくれて、時々あちらの種族か異世界人と手合わせ出来るなら問題ないぞ。」

「あちら側か。魔族に受け入れてくれるか話したことは?」

「無いな。」

「…ちなみに、話の通じそうなのって向こうにいるか?」

「それなら、影種族のダルがいいと思うぞ。次の戦争の時にでも、俺の傍に居る黒マントを調べれば見つかるはずだ。さっきの潜伏技術で近づいて話しかけたらいいんじゃないか?」


 打てば響くように回答がくる。

 仲がよさそうだし聞けば受け入れてくれそうだけど、戦闘狂な感じが、戦争から離れる発想にならないんだろう。なんか、すごく疲れた。


「今度の時に聞いてみるよ。あと、主要というと、フェリーチェとユーナか?もし二人をどうにかできたら、5人くらい残ってると思うけど、戦争を辞めると思うか?」

「戦争を辞めるのは分からないな。ただ、今の戦争が本格化した始めの時はもっとたくさんいた異世界人もだいぶ死んだからな。前線を維持できなくなるから、次の開戦までかなり時間を稼げるとは思うが。」

「わかった。…そろそろ帰るか?火傷させたし、治療できるところまで送るよ。」

「転移か?収納もそうだし、便利だな。泊まっている場所まで行けるか?その近くにユーナのいる家がある。」

「俺の泊まっている場所でいいのか?」

「そうだぞ。俺もリョータも異世界人は基本的に同じ宿だ。」


 ごはんも出してくれるし、異世界人の寮みたいな扱いの宿だったらしい。

 宿のすぐ横の路地に転移地点を作ってある。問題ないので、転移した。





 森の中から、町中の風景になった。


「便利だな。」

「どうも。ユーナのいる所ってどこ?」

「うむ。行こうか。」


 宿の2軒ほど隣に、小さな家があった。

 サイトがノッカーを叩く。


「はーい。どうしましたかー?」

「こんにちわ。怪我を治してもらいに来たんだけど…。」


 パタパタと足音がして、ユーナが出てきた。

 サイトが火傷した腕を振って見せている。


「サイトが?それは…とりあえず、上がってください。」

「うむ。邪魔するぞ。」

「お邪魔します。」


 上がらせてもらった。家には、かわいらしい小物とかも置かれていて、女の子の家といった感じだ。

 案内された部屋も、かわいい小物が置いてあるが、ソファーとローテーブルはいいとして、ベッド?


「リョータは初めてですね。怪我とか何かあったら、ここに来てもらえれば私が治癒しますので。動けないようなら、呼んでもらえれば行きますし。」

「わかった。そうするよ。」


 にっこりほほ笑むユーナはマジ聖女。

 応接室兼、治療部屋ということか。


「うふふ。小物とかこの家も、治療した町の方にもらったんです。」

「へぇ…家も!すごいな。ユーナはみんなに好かれているんだな。」

「そうだといいんですけど。…サイトの腕ですね。治します。」


 そういうと、手で触れもしていないのにサイトの腕が光り、光が収まった時には治っていた。


「助かった。ありがとう、ユーナ。」

「いえいえ。サイトが怪我するなんて珍しい。リョータ一緒に居るのと関係がありますか?」

「あー、そう。俺がうっかりサイトに怪我させちゃったんだ。治してくれてありがとう。」

「それは…すごいですね!サイトはすごく強いのに。」

「うむ。なかなかセンスがいいぞ。」

「いや…そんなことない…。」


 そんなに褒められても、不意打ちで攻撃したから…ほんとに、ごめん…。


「ハハ!いいさ、気にするな。それより、ユーナに交渉するんじゃないのか?」


 そうだった。

 まずはユーナを鑑定する。契約は、戦争中、国に指示された者を最優先に治癒する。

 これなら戦闘には関係ない。優先して治癒するということは、治癒を一切しなければ契約には触れない…けど、聖女に治癒するなっていうのは難しいか…。


「そうなんだ。サイトに相談してて…戦争を止める方法として、異世界人が戦争に協力しない事ができないかと思って…ユーナは異世界人が戦争に参加しなくなったら、戦争は終わると思うか?」

「そうですね…確かに昔居た人たちも死んでしまって…これ以上居なくなれば、終わるかはともかく、しばらく戦闘行為はできなくなると思います。」

「それは、意味があると思うか?」

「交戦での負傷者や死者が居なくなるってことですね。それは、私も嬉しいです。でも、契約ですか?召喚されたときの約束を守らないとすごく苦しくなるようなので、難しいと思いますけど。」


 前向きな回答が来た。戦争が終わらなくても、しばらく戦闘が出来なくなるなら…意味はあるのか。でも、まだフェリーチェをどうすればいいか、わからない。


「俺のスキルは鑑定なんだ。鑑定すると契約が見える。ユーナの契約は、”戦争中、国に指示された者を最優先に治癒すること”、これに逆らわなければ大丈夫だ。優先して治癒だから、治癒自体を一切し無くなれば契約に触れないと思う…けど、それは難しいよな…。」

「そうでしたか。難しいけど、難しくないですよ。国が無理な戦闘をしてその治癒を指示してくるなら、私は治癒自体を行いませんって、脅しにはなるんじゃないですか?」

「なるほど。」

「あの、その鑑定での契約の確認を、他の人にもお願いできますか?光魔法での鑑定では、契約内容まで見えません。だから教えてもらえると、他の人もどこまで自分の意思を通せるか分かるようになると思うんです。」


 ほんとに、ユーナは優しい。マジ聖女だな。


「分かったよ。でも、サイトとユーナとフェリーチェが何とかなれば、目標は達成できそうなんだけど、フェリーチェをどうすればいいか考えているんだ。」

「フェリーチェはいい子ですよ?」

「そうなんだけど、契約が、国に従うだから…どうしようかと。」

「そんなっ…やっぱり、無理して戦っていたんですね…。」

「フェリーチェ以外が全員戦争を放棄できれば、何とかなるか?」

「どうだろうな。残ったのがユーナや治癒スキル持ちなら、治癒がありがたくて戦闘の前線に出すのを惜しむ可能性はあるが、フェリーチェだけが残ったら最悪一人で特攻を続けさせられるかもしれないぞ。」

「ダメっ…!」

「ダメだ!」


 ユーナと目が合った。頷く。


「フェリーチェを何とかできなければ諦めるよ。解決方法を考えつつ、ユーナに頼まれた通り他の異世界人を回ってみようと思う。」

「お願いします。…この家に、フェリーチェともう一人女の子が住んでいるの。」

「そうだな…フェリーチェは後日にして、その一人に会っていこうかな。」

「そろそろ帰るぞ。もう俺が居ても、意味はないだろう。」

「サイト、今日は本当にごめん。それと、相談に乗ってくれてありがとう。いろいろ考えてみるよ。」

「ハハハ!気にするなと言っただろう。聞かれたことに答えただけだし、俺も初めて知ったことがあったしな。お互い様だ。じゃあな。」

「ああ、またな。」

「サイト、怪我しないようにね!」


 笑いながらサイトは帰って行ったが…初めて知ったことって…魔力が見えなかったり、契約やスキル選びに失敗することか?

 サイトって悪い奴じゃないけど、戦闘狂な感じと、性格というのか考え方というのか…距離感が難しい。話しやすいけど仲良くなった気がしないし、俺自身も仲良くなりたいと思っているのか分からない。

 不意打ちで近距離からの本気の攻撃でも軽い火傷だったし、スキルの差なのか才能の差なのか…嫌になるな。

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